その一つに「高安正夫」という名前の書かれたものがある。
高安国世の兄である。

高安国世は6人兄弟姉妹の末っ子であるが、二人の兄はともに医者になっている。長兄彰については、1980年に亡くなった際に、国世は「惜別」と題する31首の歌を詠んでいる(『湖に架かる橋』収録)。
次兄の正夫は京都大学医学部教授、国立京都病院院長などを歴任、1984年に亡くなった国世よりも長生きをした。そして、『過ぎ去りし日々』(1986年、近代文芸社)、『続過ぎ去りし日々』(1989年、同)という2冊の本を出している。
これらの本には、高安家の様子や幼少時代の国世の思い出話なども記されており、高安国世を研究する際の参考になる。