2011年09月07日
山本作兵衛著『画文集 炭鉱(ヤマ)に生きる』
副題は「地の底の人生記録」。
筑豊の炭鉱で50年以上にわたって働いた作者が、明治・大正・昭和の炭鉱の姿を描いた数百枚の絵と文章の中から一部を選んで編集したもの。今年それらの記録がユネスコの「世界記憶遺産」に登録されたことをきっかけに、1967年出版の本が新装版となって刊行された。
本書の魅力は、何よりもまずその独特な絵の筆致であろう。「入坑」「坐り掘り」「バラ スラ」「坑内馬」といった坑内の様子のほか、炭鉱町での生活や米騒動などの社会問題まで、非常に綿密にいきいきと描いている。絵には説明の文章が添えられ、さらに細かなところは部分的にクローズアップして描くといった工夫も施されている。
これらの絵は「無名の民の汗と血の足あと」とか「近代民衆絵画の金字塔」など、時代によって様々な評価を受けてきた。しかし、そうした言葉よりも、作兵衛自身があとがきで「私はヤマの姿を記録して孫たちに残しておこうと思い立ちました」と述べていることが、一番印象に残った。
2011年7月28日、講談社、1700円。
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