『乱反射』に続く第二歌集。2007年から2011年までの歌、307首が収められている。
声もたぬ樹ならばもっときみのこと想うだろうか葉を繁らせて4首目や8首目など、不思議な身体感覚がうまく表現されていておもしろい。
夜の市場に夏のくだものひしめいて少年やがて青年になる
無人なるエレベーターの開くとき誰のものでもない光あり
図書館の本棚の前に来て立てばわれのうちなる誰かも立てり
美術館の彫刻の裸婦のかたわらに友は眼鏡を忘れてきたり
歩きつつ祖母の呼吸を聞いておりひるがおの咲く浜までの道
コピー機のなかのひかりが行き来するさまを見ている海を見る目で
きょうもまたぼんやりとするわれのなか平泳ぎの人過ぎてゆきたり
防砂林歩みつつ聞く南風どのように風は老いるのだろう
燃えるごみ燃えないごみと積まれいてやはり燃えないごみが寂しい
「乱反射」で角川短歌賞を受賞した時に高校生だった作者も社会人となり、仕事の歌や介護施設に入所した祖父の歌など、重い内容の歌が詠われるようになってきた。
全体としては、前歌集に比べて言葉ののびやかさに少し欠けるような気がする。それは文語を使い始めたこととも関係があるだろう。もっとも、誰だっていつまでも短歌を始めた頃のままではいられないのだ。
2011年7月25日、角川書店、1800円。
ブログ始めました。
http://blogs.dion.ne.jp/kariroku/
ブログ読ませていただきました。
かりんサマーミーティングの Ustream での生中継、すごいですね。
思わず聴き入ってしまいました。