学校の休み時間、運動場で遊んでいる級友たちを気にしながら、私は一人、図書室で本を読んでいた。あの時ほど、青空を残酷なものに思ったことはない。小学生の頃の話である。
青空と言うと、一般的には爽やかで気持ち良いと感じる人が多いように思うのだが、河野さんは青空が苦手であった。本人からそういう話を聞いたことがあるし、
なぜかうも青い空がいやなのか答へ得る一人花山多佳子といった歌もある。青空は不安や怖れを感じさせるものであったのだろう。
『季の栞』
青空はこの世のやうにも思はれず大きな砥石で包丁を研ぐ
『庭』
何でかう青空は青くさびしいのか山があるせゐだよと空が教へた
『葦舟』
一首目の歌を読むと、花山さんの第一歌集に載っている次の歌を思い出す。
しかたなく洗面器に水をはりている今日もむごたらしき青天なれば「むごたらしき青天」というのが、世の中にはあるのだ。
花山多佳子『樹の下の椅子』
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