2011年08月04日

河野裕子著『たったこれだけの家族』


エッセイ61篇+代表歌100首。1986年出版のエッセイ集『みどりの家の窓から』を完全収録し、さらにその他のエッセイを追加している。

8割方は読んだことのあるエッセイであったが、あらためて読み直す。
親友の河野里子さんが出てくる文章が三か所あった。
「裕子さんによく似合う。裕子さんらしい」と言って、私のはだしをよろこんでくれた友だちがいた。(…)すぐに彼女は真似をして、はだしの足の裏で草をなでるようにして歩きながら、「足の裏が楽しい」と、うれしそうに言った。三十歳にもならない若さで、その友だちが死んでしまってから、もう何年にもなる。
これ、風草(かぜくさ)という草。立ちどまって教えてくれた友だちがいた。若いうちに、彼女は死んでしまった。河野里子。私の第一歌集を出してくれた人だった。
思いあまって、同級の河野里子に『コスモス』誌を見せて相談した。「行ったらいい」と彼女は即座に言った。それで、私の心が決まった。彼女が勧めてくれなかったら、宮柊二との出逢いはさらに何年も遅れていたにちがいない。それどころか私は疾うに短歌をやめていただろうと思う。
河野さんのエッセイは歯切れがいい。間を取ったり、話が飛んだりといった呼吸が、実に生き生きとしている。

2011年7月10日、中央公論新社、1400円。

posted by 松村正直 at 00:31| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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