2011年08月03日

鷲尾賢也著『編集とはどのような仕事なのか』


副題は「企画発想から人間交際まで」。

講談社現代新書やPR誌「本」の編集長を務め、「選書メチエ」の創刊や「現代思想の冒険」シリーズの刊行などに活躍した著者が、編集とは何をするのかについて記した本。自らの体験や思い出も交えながら、企画、編集会議、原稿依頼、原稿の読み、装丁、PR、人間交際など、多岐にわたる編集の仕事を詳しく説明している。

編集者の役回りが幅広いものであることは、本書における定義づけを読めば明らかだろう。「黒子、あるいは触媒」「プランナー」「雑用の管理者」「コーディネーター」「ひとの褌で相撲をとっている」「他人の力によって仕事をしている存在」「鵜飼のようなもの」「第一の読者」「開業医」「ハードディスク」「著者には読者の代弁者、読者には著者の代弁者」「市場」……。実に様々な顔を持っているのである。

印象に残った箇所をいくつか引いておこう。
インターネットは過去の情報の整理なのである。過去の知識の蓄積なのである。
「ともかく冒頭はやさしく、かつおもしろいことが起こりそうだというふうに書いてください」と、口すっぱくして注文をつける
どうしても、書いているうちに人間臭さが希薄になっていく。表現が冷たくなる。だから著者自身の研究余話や、研究史上のエピソードなどを適度に交えないと、読者は文字を追うのに疲れてしまうのである。
一般的に、動きがあること、手にとって見たくなる、あるいは誘われるような謎、意外性などをタイトルにこめたいものだ。
(書店は…)本・雑誌という、形態上はひとつでありながら(かたちはみな似ている)、じつはデパート、スーパー以上に、多くの質の異なった商品を扱っている空間なのだ。
著者の鷲尾賢也氏は、もちろん歌人の小高賢さんである。以前、お酒の席で「僕は歌人としては二流だけど、編集者としては一流なんだよ」と冗談まじりに笑って話しておられたことを思い出した。

2004年3月5日、トランスビュー、2200円。

posted by 松村正直 at 00:10| Comment(2) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私もしばらく以前に読んで、傍線だらけになった記憶があります。
なんか、励まされる本ですよね。
編集とは関係なく、大きな人になれよと言われている感じがしました。
Posted by おおまつ。 at 2011年08月06日 23:05
確かに、そうですね。
編集者や編集者志望の人でなくても、十分に読んで得るところの
多い本だと思います。
自分の仕事に対する誇りのようなものも強く感じました。

Posted by 松村正直 at 2011年08月07日 14:42
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