2011年07月28日

第1回塔短歌会賞

第1回塔短歌会賞は、梶原さい子さんの「舟虫」30首が受賞した。
潮鳴りのやまざる町に育ちたり梵字の墓の建ち並びゐて
漁撈長と機関長と禿げ上がる頭をみせて海に礼(ゐや)せり
皆誰か波に獲られてそれでもなほ離れられない 光れる海石(いくり)
腑を裂けば卵のあふるるあふれきてもうとどまらぬいのちの潮(うしほ)
対岸もほのぼの明けて家々の暮らしのかたち見えて来たりぬ
海沿いの土地の労働や暮らしの様子が、生き生きと力強く詠まれた一連である。作品の舞台は梶原さんのふるさと気仙沼市唐桑町。作品の募集は2月末締切なので、東日本大震災の前の歌である。

同じ7月号には、次のような梶原さんの月例作品も載っている。
高台よりの海美しき あの海をこの海と為し避難所はあり
ありがたいことだと言へりふるさとの浜に遺体のあがりしことを
これが「舟虫」に詠まれたのと同じ海であることを思うとき、あらためて津波の奪い去ったものの大きさに胸が痛くなる。

賞の選考は無記名で行われたので、震災のことは全く考慮に入っていないのだが、結果的に東北の海を詠んだ作品が受賞することになったことにも、何か運命的なものを感じる。

posted by 松村正直 at 20:28| Comment(0) | 短歌誌・同人誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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