最近、団地に興味を持っていて、いろいろと調べている。
高度成長期に日本の各地に建てられた団地。その団地の多くが老朽化して建て替えが問題となり、住人の高齢化も深刻になっている。また、孤独死という事態も頻発するようになった。そうした現状を踏まえて、今後の団地のあり方について考えた本である。
公団や公営の団地の歴史や変遷、そして現状などを知りたくて読んだのだが、内容的には孤独死の予防という点にかなり力点が置かれている。これは、著者自身が団地住まいであり、他人事ではないという意識が強く働いたためであろう。
都営戸山団地の住人1400人のうち七割強が65歳以上の高齢者であるという例を挙げて、著者は次のように言う。
「限界集落」の定義を戸山団地にあてはめれば、まさに「限界団地」(都市型限界集落)といえるのではないか。(…)限界集落は都会から離れた地方の山村とほぼ限定されているが、新宿区という大都会の真ん中にも限界集落は存在する。
ハッとさせられる指摘だと思う。限界集落の問題は、都市に住む人々にとっても決してよそ事ではないのである。
けれども、著者が孤独死予防策として提言する「結の創造力」「相互扶助」「コミュニケーション作り」といった内容は、はたして現代社会においてどれだけ可能なのだろうか。いくつかの成功事例も紹介されているのだが、それほど希望は見えてこないように感じた。
70歳になる私の父親も、神奈川県の団地で独り暮らしをしている。そういう意味では、私にとっても他人事ではない話なのであった。
2008年4月10日、平凡社新書、720円。