しばしばマスコミなどを賑わす差別語の問題について、個々の言葉の由来や使われ方、差別語とされるに至った経緯などをまとめた本。「路地(被差別部落)」「心身障害者」「職業」「その他」に分類された70語以上の言葉が取り上げられている。
著者の基本的な立場は「差別するのは人間であって、言葉自体が差別するわけではない」という点にある。そして、過度な糾弾や安易な自主規制によって言葉が使われなくなることは、閉塞感を生み出す結果になると言う。
部落解放運動の中で、差別用語が糾弾を受けた結果、極度に規制されていった経緯には同情の余地が残るが、その後の「言葉の名誉回復」をきちんとするべきだと思う。それがなされていないために、私は本書を書いたと言ってもよい。
こうした論旨は非常に納得のできるものであるし、路地出身である著者の思いもよくわかる気がする。
2011年5月25日、新潮選書、1200円。