副題に「現代女性歌人論」とある。二部構成となっており、1部は河野愛子論、2部では加藤淑子、横山未来子、冬道麻子、永井陽子、沢口芙美の歌について、それぞれ論じている。
著者の文章は一文一文が比較的短めで、論旨が明快であり、論理展開にも無理がない。持って回った言いまわしや難解な用語をもちいることなく、シンプルに、しかも力強く、述べるべき内容を述べている。
一口に「孤独」と言っても、その内実は一人一人違う。共通しているのは、彼女たちの孤独と向き合う姿勢に、著者が歌人としての本質を見出していることだろう。本書の一番の根底にあるのは、自分が優れていると思う歌人の歌を多くの人に知ってほしい、その魅力を広く伝えたいという著者の純粋な思いである。
これは、当り前のようでいて、実はけっこう大事なことなのではないか。
この頃の総合誌などの文章を見ると、時代状況や社会状況、世代論などに乗っかった評論が非常に多い。引用されている歌にしても、良いと思って引いているというよりは、今の時代を象徴的に表しているといった文脈で取り上げていることが多く、歌自身の評価は二の次になっている。
それに対して、この本の著者の立ち位置ははっきりしている。自分の良いと思った歌や歌人を、自分の手で取り上げて、その魅力を自分の言葉でできるだけ解き明かそうとしているのだ。これは、評論の本来あるべき姿と言っていいのではないだろうか。
本書を読むと、取り上げられている歌人たちの歌が、実に魅力的に思えてくる。読み終えてすぐに、私は歌集を2冊買ったほどである。それはもちろん歌そのものの魅力であるのだが、同時に著者の強い熱意の賜物でもあるだろう。
2011年5月16日、六花書林、2500円。
鈴木さんの文章はテンポが良くて、ぐんぐん引き込まれるように読み終えました。多くの方におすすめしたい一冊です。