2011年06月03日

螢田てふ駅(その2)

歌の表記が原典と異なっているのは、次の通り。
蛍田てふ駅に降りたち一分の間(かん)にみたざる虹とあひたり

・高野公彦編『現代の短歌』(1991年、講談社学術文庫)
・柳宣宏「小中英之」の項[小池光・三枝昂之・佐佐木幸綱・菱川善夫編『現代短歌ハンドブック』](1999年、雄山閣)

これは「螢」を常用漢字の「蛍」に改めているものであるが、「螢田」が固有名詞であり、現在も小田急線の駅名としては「螢田」であることを考えると、やはりマズイように思う。
螢田てふ駅に降りたち一分の間(かん)にみたざる虹にあひたり

・吉岡生夫『あっ、螢 歌と水辺の風景』(2006年、六花書林)

「虹とあひたり」が「虹にあひたり」になっている。単なる誤記だろう。
螢田てふ駅に降り立ち一分の間に満たざる虹とあひたり

・山下雅人「小中英之」の項[篠弘・馬場あき子・佐佐木幸綱監修『現代短歌大事典』](2000年、三省堂)

「降りたち」→「降り立ち」、「間(かん)」→「間」、「みたざる」→「満たざる」。一首の中で三か所も表記を間違えている。これだけいい加減なのも珍しい。
螢田(ほたるだ)てふ駅に降りたち一分(いつぷん)の間(かん)にみたざる虹とあひたり

・「虹」の項[千勝三喜男編『現代短歌分類集成』](2006年、おうふう)

「ほたるだ」「いつぷん」というルビが追加されている。振りがなについては凡例に「原則として底本に依拠したが、小項目の読み、難読語の読みを示すために、編者が追加したもの、(…)省略したものがある」と書かれているので、編者が追加したルビなのだろう。「螢田」や「一分」が難読語とも思えないし、ルビも作品の一部であることを考えると、これもいただけない。

posted by 松村正直 at 22:36| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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