2011年05月14日

紅茶(その4)

もちろん、散文と短歌とは違う。短歌作品には森岡貞香の「も」の字も出てこない。あくまで歌は歌なのであり、森岡宅訪問という事実から出発してはいるものの、作品化される過程で別の次元のものとなっている。

「微笑」という一連の初出は、「塔」2007年11月号。初出と歌集収録作とでは細かい異動がいくつかあるのだが(「黒き盆」が「黒き盃」になっているのは誤植か?)、大きな違いは連作の最初の一首が削られて、5首だった一連が4首になっていることである。それは
見上ぐればみな古びつつ石段の上に門ある東京の家

という一首であった。この歌が削られたことによって「東京の家」という情報もなくなり、作品としての自立度がより一層高まったように感じる。森岡貞香というモデルを離れて、普遍性のある作品になったということかもしれない。

最後に、森岡貞香の遺歌集『少時』から、紅茶の歌を二首。
あたらしき日を吾は持たずブランデー滴らせ紅茶かたはらに置く
紅茶の葉はふたりぶん否ひとりぶん 戀ふれば來らずといふ豫想
            森岡貞香『少時』

posted by 松村正直 at 00:13| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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