2011年05月03日

高野公彦著 『うたを味わう―食べ物の歌』

食べ物を詠んだ歌を取り上げて、その鑑賞や感想を記したエッセイ集。「味の味」「NHK歌壇」に連載した文章をまとめたものである。

『万葉集』から現代短歌にいたるまで、実に様々な食材が短歌に詠まれていることに驚く。ぎんなん、キャベツ、蝦蛄、湯豆腐、そば、鰹、椎の実、苺、うめぼし、たらの芽、豆ごはん、舌鮃、無花果、潤目鰯、たこ焼、春菊、タラバガニ……などなど。
生きてゐる浅蜊を蒸(む)して貝ひらくときに与ふる酒の一滴(ひとしづく)
                    /柏崎驍二
つきさしてじんわりひきだすさざえの身うちなるにがき臓も食いゆく
                    /玉井清弘『麹塵』
雪にやどる荒山なかの狩小屋に麦めしあまし熊を菜(さい)に食(く)ふ
                    /与謝野鉄幹『紫』
朽木谷、花折峠 背負はれて若狭の鯖は京都へ入りつ
                    /関口ひろみ『あしたひらかむ』
秋である。やさしさだけがほしくなりロシア紅茶にジャムを沈める
                    /小高賢『耳の伝説』
朽ち葉色のうづらの卵十(とを)茹でて木の実のやうにむけばましろし
                    /木畑紀子『女時計』

食べ物の歌の良し悪しは、何よりもその食べ物がうまそうに思えるかどうかにかかっているという気がする。うまそうに思えれば、もうそれだけで十分に歌として成り立っている。

2011年4月10日、柊書房、1800円。
posted by 松村正直 at 00:12| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。