一方で、ニュースを見ていて一番好感を持ったのは、東北大学の今村文彦教授(東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センター長)。津波の専門家である。今回の津波に関する分析や説明をわかりやすく述べ、また予測以上の津波に襲われたことに対しても率直に責任を感じて、対策を講じる必要性を語っている。
もちろん、津波に対してこれまで何の予測も対策もしていなかったわけではない。昨年放映されたNHKスペシャルの内容をまとめた『メガクエイク(巨大地震)』(主婦と生活社)という本には、次のように記されている。
仙台市の郊外。東北大学・今村文彦教授の研究チームは、海岸から4キロ近く離れた水田の地下から、あるはずのない海の砂を発見した。分析の結果、この砂は約1000年前に起きた日本最大級の津波の痕跡で、1000年ごとに繰り返し起きていることがわかった。つまり、いつ次の大津波が来てもおかしくはない。この津波を起こす地震は、本州東方のプレート境界。最大ではマグニチュード9近くのメガクエイクになる可能性もある。
三陸海岸は、過去何度も大津波に襲われている。岩手県宮古市田老地区の海岸には、津波に備えて高さ約10メートルの防波堤が築かれている。しかし、1896年の明治三陸大津波が再び起きたと仮定し、シミュレーションを行ったところ、上の写真のように、この防波堤を軽々と乗り越えてしまうという結果が出た。
今回、津波による大きな被害を防ぐことはできなかったわけで、今村教授も心を痛めているだろうと思う。しかし、普段からこうした研究を地道に続けておられた方がいることを知って、私は心強く思ったのであった。