2011年03月11日
大泰司紀之・本間浩昭著 『知床・北方四島―流氷が育む自然遺産』
知床半島から北方四島、さらに千島列島を含む地域の生態系を、100点以上のカラー写真をまじえて解説した一冊。ラッコ、アザラシ、エトピリカ、ヒグマ、カラフトマス、シマフクロウなど、写真を見ているだけでも楽しい。
日本と旧ソ連との間に領土問題があったために、北方四島ではあまり開発が進まず、豊かな自然が残された。考えてみると皮肉な話である。しかし、ソ連崩壊後は状況が大きく変わり、開発の波がこれらの島にも訪れようとしている。そのため、著者は知床の世界自然遺産を北方四島、さらにウルップ島まで拡張して、日ロ両国で共同して保全することを提案している。
それは、この本が出版された2008年当時の「ロシアは領土問題を棚上げした状態での四島の共同開発を期待している」という前提に基づいたものなのだが、最近の報道を見る限り、その実現の可能性は今ではだいぶ低くなってしまったようだ。
2008年5月20日、岩波新書、1000円。
この記事へのコメント
コメントを書く