野一色容子さん連載の「ナンジャモンジャの白い花―清原日出夫評伝」は、毎号楽しみに読んでいたものだが、七回目を迎えて完結した。清原日出夫の姿がよく見えてくる内容だったと思う。
今回この評伝の中に、先日このブログでも書いた「高安国世文庫」のことが書かれている。その部分を引用する。
のみならず、平成一五年三月には長野県立図書館の閲覧室の一角に「高安国世文庫」を開設した。高安所蔵の蔵書のうち、歌集・歌書を中心に五百数十冊の開架、九百数十冊の閉架の書籍からなる文庫である。ドイツ文学研究者で歌人であった高安の蔵書量はたいへんなものであったろう。遺族も困られたにちがいない。それを見かねて清原が思い立ち、本の選別も自身の手で行った。
清原晩年は、高安文庫で安らぐ姿が見られたという。精神的な父と仰ぐ高安の蔵書に囲まれて、歌集や歌書をつれづれに読むのは、癌を病む清原にとって精神安定剤的な効果があったのかもしれない。
この最後の三行をしみじみと読んだ。「高安国世文庫」には高安国世だけでなく、清原日出夫の思いもこめられているのである。