2011年01月13日
西牟田靖『ニッポンの穴紀行』
副題は「近代史を彩る光と影」。
「本が好き!」2009年2月号〜2010年1月号に連載された文章をまとめたもの。
北海道から沖縄まで、日本の近代を支えた数々の建造物や遺跡などの物語を追ったノンフィクションである。登場するのは、軍艦島(長崎)、狩勝隧道(北海道)、国立国会図書館(東京)、人形峠夜次南第2号坑(岡山)、巌窟ホテル(埼玉)、糸数壕(沖縄)など。
一見無関係でバラバラな場所のように思えるが、共通するのはどれも「穴」であること。鉄道が廃線になった時に、もっとも遺物として残りやすいのがトンネルであるように、「穴」はその存在価値を失った後でも、古い時代や歴史の証人であり続ける。
作者は1970年生まれ。同年齢ということもあって、以前から親近感を持っている。何ごとに対しても予見を持たずに、とにかく現地に行き、自分の目で見て自分の頭で考えるという姿勢が貫かれており、信頼できる書き手だと思う。
光文社、2010年12月25日、1500円。
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