引用は「愛媛詩人会議詩誌」36号より。
台所
働く女はうつむいて
だんらんに背をむけて日常を洗う。
ちゃわん。はし。皿。
食べのこしのやさいといっしょに
男たちの腕もこっそり一本もぎとって
ビニール袋に入れしらんふりしている。
男たちは腕が一本足りないことに気付かず
ギロンに夢中だ。とびちるコトバ。
だから、足もいらないでしょうとつぶやいて
ついでに足も一本もいでしまう。
男たちはときどきふりむいて
女の背をのぞいてみるが
うつむいて働きつづける背に安心して
またまたギロンに夢中だ。
女が“家事”という忙しさの口実の陰で
舌だしているのにも気づかずに。
台所。なめくじや野菜の切れっぱしと共に
女がいつまでもそこに在るとは限らない。
ふしぎな微笑をもらして
女は 包丁を 研ぐ。
かわのさとこさんの詩の紹介は、ひとまずここまで。
ごくろうさまでした。
有難うございました。
「戸外診療」はなかなかに手強いですね。
この「台所」はまぁ、分かりやすいですが。
大阪で詩の朗読会などもやっていたようです。