2010年12月11日

山岡光治『地図の科学』


国土地理院などで長年にわたって地図作りをしてきた著者が、地図の歴史や種類、作り方や読み方などを解説した本。イラストや写真、図版なども豊富に載っていて、とてもわかりやすい。

地図を作成するための測量と言うと、すぐに新田次郎『劒岳 点の記』の世界をイメージしてしまうのだが、測量機器の進歩やGPS測量・航空レーザー測量などの登場によって、今では随分と様変わりしているようだ。それに伴って、昔ながらの職人技が必要とされる場面も次第に少なくなっているらしい。

ただ、やはりそうした最新の技術や機械を支える根っこの部分に、何十年にもわたって続けられてきた手作業の積み重ねや地図作りに対する情熱といったものが存在していることを忘れてはならないのだろう。これは、どの世界でも同じことのように思う。

地図というのは単なる印刷された紙であるが、著者のような人が見れば、一枚の紙からその土地の歴史や地形の様子、人々の営みまでもが、まざまざと立ち上がってくるのである。新聞の株価の欄が、ただの数字の羅列にしか見えない人と経済動向のなまなましい反映として見える人との違いのようなものだろう。

それは、短歌を読むことの楽しさとも、どこか似ているように思うのである。

2010年10月25日、サイエンスアイ新書、952円。


posted by 松村正直 at 00:56| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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