柏木達彦シリーズの3冊目。
古代ギリシャの原子論に始まってヨーロッパ近代の原子仮説をベースにした認識論、さらに認識論的転回から言語論的転回、ノミナリズムといった問題が取り上げられる。
哲学的な内容の面白さももちろんだが、それ以外の部分も楽しめる。例えば、対話相手の女子学生咲村紫苑が登場するたびに、著者はそのファッションを細かく描写する。
ドアを開けて入ってきた紫苑は、なんと、淡いピンクを基調とした花の丸文の本振袖。同系色の帯をふくら雀に結び、緋色の帯締めと萌黄の帯揚げで、鮮やかにまとめている。
グレーのタートルカットソーにオフホワイトのロングセーターを重ね着し、ヒップハガーのグレージュサンテンプリーツスカートに黒のサイド柄レギンス。足もとはアイボリーのニットブーツで、全体をモノトーン系にまとめている。
暖かそうなオフホワイトのダウンコートを脱ぐと、濃いピンクのロング丈裏毛チュニックに、インディゴのスキニー。マゼンタを基調にしたチェックのボアブーツが、軽快な雰囲気を演出している。
コートを脱いだ紫苑は、赤を基調にしたアーガイル柄ニットワンピースの下に、黒のチュールスカートをエレガントに重ね着し、黒のタイツと黒のニーハイブーツ。ハートの大きなイヤリングがきらりと光り、なんだか全身からオーラが出ている。
ファッション関係にはまったく詳しくないので、正直言うとこういう文章を読んでも「???」なのだが、こういう所へのこだわりが楽しい。
2010年3月25日、角川ソフィア文庫、781円。
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