2010年11月21日

ロラン・バルト『表徴の帝国』


宗左近訳。
日本文化を素材にして、エクリチュールや表徴をめぐる問題を随想風に記した一冊。箸、すき焼き、天ぷら、パチンコ、文楽、俳句、筆、全学連など、実にさまざまなものが取り上げられている。
パチンコは、集団的で、しかも一人ぽっちの遊びである。機械は長い列をなして並べられている。自分の絵画の前に立ったお客は、おのおの自分だけで遊び、隣りの客など見もしない。そのくせ隣りの人とは、肱と肱とをふれあっている。

東洋の女形は女性をコピーしない。女性を表徴する。(…)女形は読みとられるものとして、女性を現前させるのであって、見られるものとして現前させるのではない。つまり翻訳なのであって、変容なのではない。

こんなふうに、随所にナルホドと感じられる部分があって、非常に面白かった。

1996年11月7日、ちくま学芸文庫、1000円。
posted by 松村正直 at 23:44| Comment(2) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
全集では「記号の国」という翻訳タイトルになっていましたかね。たしかわれらの1970年に書かれたのではなかったでしたかね。影響あったでしょうね。きっと。
Posted by 荻原伸 at 2010年12月05日 15:04
その通りです。原作の L'Empire des signes は1970年の刊行です。この文庫本も元は新潮社から1974年に出版されたもののようです。1970年というのはやはり偉大ですねえ(笑)。
Posted by 松村正直 at 2010年12月07日 01:11
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