人をらぬ実相院道(じつさうゐんみち)のゆふつかた日本古代の菊の香ぞする
これを読んですぐに思い出すのは茂吉の歌である。
ここに来て狐を見るは楽しかり狐の香(か)こそ日本古代の香(か)
茂吉の最後の歌集『つきかげ』の一首。狐のにおいを「日本古代の香」と直感的に断定したところが面白い。河野さんの歌もその面白さを踏まえているのだろう。
実相院は京都岩倉にあるお寺。そこへ続く道のことを詠んだ歌には、他にもこんなものがある。第8歌集『家』から。
死後の生はするすると容易(たやす)い気さへする実相院道誰にも会はず