2010年11月06日

本歌取り

河野さんの第7歌集『体力』を読んでいたら、次のような歌があった。

人をらぬ実相院道(じつさうゐんみち)のゆふつかた日本古代の菊の香ぞする


これを読んですぐに思い出すのは茂吉の歌である。

ここに来て狐を見るは楽しかり狐の香(か)こそ日本古代の香(か)


茂吉の最後の歌集『つきかげ』の一首。狐のにおいを「日本古代の香」と直感的に断定したところが面白い。河野さんの歌もその面白さを踏まえているのだろう。

実相院は京都岩倉にあるお寺。そこへ続く道のことを詠んだ歌には、他にもこんなものがある。第8歌集『家』から。

死後の生はするすると容易(たやす)い気さへする実相院道誰にも会はず

posted by 松村正直 at 08:35| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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