本土や外国から沖縄を訪れた人物を軸に、沖縄の歴史や在り方を考察した4編の文章を収めている。取り上げられているのは、沖縄学の父と呼ばれる伊波普猷の恩師田島利三郎、琉球渡来伝説がある源為朝、幕末の宣教師ベッテルハイム、沖縄の音楽や芸能を紹介した田辺尚雄の4人。
特に面白かったのは第二章の「為朝はまた来る?『琉球本』の系譜」。保元の乱に敗れて伊豆大島に流された源為朝が、その後琉球に渡って子をもうけ、その子が琉球王になったという伝説である。一種の貴種流離譚であり荒唐無稽な内容なのだが、それがいつしか琉球王国の正史や明治時代の小学校読本にも載るようになっていく。その経緯を探った内容だ。
かえりみれば「伝説」にはそれなりの意味がひそんでいるというのもまた真実である。伝説の誕生は、その時代の人びとの欲望や憧れを映す鏡でもあるからだ。
という著者の言葉に非常に説得力がある。
2009年6月6日、小学館新書、740円。