この墜落機の存在は、実は以前から知られていたものである。私はかつて小池光の歌に関して調べていて、その存在を知った。
十和田湖に墜落したる零戦が引き上げられしこともかなしも 『静物』
大戦の終末ちかくふらふらとやまのみづうみに墜ちにし一機
みづうみを囲める山は青葉して機を沈めたりふるきいくさに
この歌をめぐって、私は「十和田湖に零戦は墜ちたのか―短歌におけるフィクションとそのリアリティー」という文章を書いたことがある(「塔」2004年4月号)。調べた結果としては、十和田湖に零戦が墜落した事実はないというものであった。
その文章の中で、私は
この歌に何らかの関係がありそうな事実として確認できたのは、次の三点である。まず、昭和十八年八月に陸軍の一式双発高等練習機が十和田湖に墜落したことがわかっている。この機体に関しては平成五年(一九九三年)に引き上げの計画もあったのだが、日本で三番目に深い水深(三二六・八メートル)も障害となって実現していない。(以下略)
と記している。ニュースの記事は「昭和18年9月」となっていてひと月ずれているが、同じ機体のことであろう。となると、「発見」という見出しはおかしいことになるのだが、今後の引き上げの行方などを見届けたいと思う。
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