秋に短歌の評論集を出そうとして準備を進めているのだが、なかなか良いタイトルが思い付かない。ああでもない、こうでもないと悶々と考えている。
そう言えば、第一歌集『駅へ』の時もそうであった。なかなかコレ!というタイトルが思い浮かばずに、いくつも案を出しては消しての繰り返し。とうとう日程的にもう決めなくては間に合わないという時期になってしまった。
あれは、確か旧月歌会の後だったと思う。居酒屋「くれない」の二階で飲んでいた時に、永田さんが「松村の歌集名を多数決で決めよう」と言い出したのだ。そこで、いくつかの案を挙げたところ、「駅へ」が最も人気があった。つまり、みんなに決めてもらったタイトルというわけである。
第二歌集の『やさしい鮫』の時は少し違う。もともと「短歌ヴァ−サス」に発表した「やさしい鮫とこわい鮫」という一連が気に入っていて、これをタイトルにしたいと思っていたのだ。出版社に相談したところ、ちょっと長過ぎるので「やさしい鮫」だけではどうかと言われた。
ちょうどそんな時に(ホントに偶然というのは恐ろしいものだが)、角川「短歌」の「なるほど短歌」を読むという特集で、穂村さんが僕の歌を例に挙げて「やさしい鮫」という文章を書いていたのである。これにはビックリした。そして、これが決め手になったと言っていい。
そう考えると、これまでは誰かに決めてもらったタイトルばかり。今度の評論集は自分で決めなきゃなあ。
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