副題は「〈アイウエオ〉と〈いろは〉の発明」。五十音図といろは歌の成り立ちを軸に、漢字伝来から明治時代までの日本語の歴史をたどる本。空海、明覚、藤原定家、本居宣長、大槻文彦といった人物が取り上げられている。
新書サイズで通史を描いているので、内容的にはそれほど深くはないが、日本語の歴史の全体像を把握するには良いと思う。
八つの母音を持つ万葉時代の音韻体系は、平安時代初期に突如として消失する。どうして消失したのか……。これについては、いくつかの研究がなされているが、実は『古事記』『日本書紀』『万葉集』を編纂したのが帰化人だったからではないかと筆者は考えるのである。
上代特殊仮名遣いに関するこのような説に、特に興味をそそられた。専門家の間では、どういう議論になっているのだろうか。
全体を通じて気になったのが、日本語礼賛の口調。「日本人の語学的なセンスのレベルの高さ」「世界広しといえども、日本しかないのである」「このような仕組みの言語は、日本語以外にはないだろう」など、どれも日本人にしか通用しない論理だと思う。
2007年12月20日、新潮新書、680円。