副題に「列車に栓抜きがあった頃」とある。栓抜きと言っても、持ち運びできるものではない。ボックスシートの窓際からせり出したテーブルに付いていた金具のような栓抜きのことである。そういうものがあったことを、すっかり忘れていた。何とも懐かしい。
この本には、栓抜きをはじめとして、今ではあまり見かけなくなった鉄道関係の設備や風景・文化といったものが36点取り上げられている。「タブレット」「硬券切符」「駅弁の立ち売り」といった定番のものから、「赤帽」「(駅のホームの)洗面所」「鉄道林」といったユニークなものまであって、楽しい。
こうした本を読むと、鉄道というシステムが近代という歴史と非常に深く結び付いていたということがよくわかる。そういう意味では国鉄が分割民営化された1987年あたりが、一つの時代の終わりであったのだろう。
2009年6月15日、交通新聞社新書、800円。
2010年06月21日
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