日本語関連本。
読まなければと思いつつ未読だった本をようやく読む。「国民国家と文化装置としての古典」という副題が示す通り、『万葉集』が近代国民国家成立の過程で新たな古典として「発見」された経緯やその後の推移を丹念にたどる内容。やはり必読の書である。
1890(明治23)年以降、「国民」意識を高めるための「国詩」が必要とされるようになり、そうした時代の要請の中で『万葉集』が選ばれて、日本人のナショナル・アイデンティティーを支える文化装置として働くようになっていく。その足跡を近世の国学の影響や万葉集のテキストの変遷、民謡との関わりなど、さまざまな記述を比較検討しつつ明らかにしている。
もちろん、万葉集を国民歌集へと高めていった運動の中には、子規・左千夫・節・赤彦・茂吉・文明といった根岸短歌会からアララギへの流れに連なる人々も加わっている。特に赤彦が万葉集を教育論の中へ取り込んだことの果たした役割は大きかったようだ。
2001年2月15日、新曜社、3200円。
2010年06月08日
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