アラン・レネ監督、マルグリット・デュラス原作脚本、1959年の日仏合作映画。原題は「Hiroshima, mon amour」
「京都みなみ会館」で今週五日間だけの上映。前から見たいと思っていた映画を見ることができた。戦後の広島を舞台に、フランス人の女優と日本人の建築家が出逢う一日の物語。映画はホテルで抱き合う二人の「私はヒロシマを見たわ」「きみはヒロシマを見なかった、何も」という印象的な会話から始まる。当時の原爆資料館や平和公園、原爆ドームなどの映像もあり、印象に残った。
大口玲子さんの歌集『東北』に、この物語を元にした連作「ヒロシマ私の恋人」がある。
真夏汗して人を抱き敷き立秋の向かうに燃ゆる都市の名を呼ぶ
君を都市の名前で呼べば痩せて痩せて平凡な死を死ぬ朝の表情(かほ)
また、谷村はるかさんの歌集『ドームの骨の隙間の空に』の歌の中にも、この物語は響いているように思う。
おまえはまだたった一人を愛し得たことさえないと広島は言う
平和は愛の別名だから会う会いたいあの街にそれ以外思わない
映画の中の会話はすべてフランス語。岡田英次のフランス語は「ヒロシマ」と言っているが、エマニュエル・リヴァの方はH音のない「イロシマ」。それを聞いて次の歌を思い出した。
「イロシマハ、ナツノキゴカ」と問ふサラに冬には詠まぬ我を恥ぢたり
小川真理子『母音梯形』
2010年05月25日
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