2010年05月21日

木下杢太郎『新編百花譜百選』

詩人であり医者であった木下杢太郎(太田正雄)が晩年に描いた植物図譜。総計872点の『百花譜』の中から100点を選んで一冊にまとめたもの。前川誠郎編。

絵は横罫線の入った紙に色付きで描かれており、細密画のように丁寧な筆致。それぞれの植物の花や葉や枝の質感が巧みに捉えられていて、画家志望であった杢太郎の画力を感じさせる。

1枚目の「まんさく」が描かれたのが昭和18年3月10日。最後の「やまゆり」は昭和20年7月27日。余白には植物名や日付の他に簡単な日記も記されており、戦時中の杢太郎の生活がうかがわれる。

最後の一枚には「胃腸の痙攣疼痛なほ去らず(…)運勢たどたどし」という言葉がある。この年の10月、杢太郎は胃癌のために亡くなっている。

2007年1月16日、岩波文庫、1500円。
posted by 松村正直 at 17:45| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック