詩人であり医者であった木下杢太郎(太田正雄)が晩年に描いた植物図譜。総計872点の『百花譜』の中から100点を選んで一冊にまとめたもの。前川誠郎編。
絵は横罫線の入った紙に色付きで描かれており、細密画のように丁寧な筆致。それぞれの植物の花や葉や枝の質感が巧みに捉えられていて、画家志望であった杢太郎の画力を感じさせる。
1枚目の「まんさく」が描かれたのが昭和18年3月10日。最後の「やまゆり」は昭和20年7月27日。余白には植物名や日付の他に簡単な日記も記されており、戦時中の杢太郎の生活がうかがわれる。
最後の一枚には「胃腸の痙攣疼痛なほ去らず(…)運勢たどたどし」という言葉がある。この年の10月、杢太郎は胃癌のために亡くなっている。
2007年1月16日、岩波文庫、1500円。
2010年05月21日
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