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トンネルを出るたび海のあらわれて「南紀」は冬の半島を行く
庭に出て走り過ぎゆく特急に手を振り続ける女の子あり
見上げればまた降り出して明日には新聞にのる雪の金閣
十八年前に死にたる叔父の骨 団地の父の寝室にある
冬に食べる海鮮丼のつめたさに首のうしろが海へとしずむ
そんな人とは思いませんでしたと言う人がわたしの何を知っているのか
まだ咲いていないけれども明るくて二月の末のミモザのつぼみ
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