作品
・「ラーメンと白鳥」7首(「文藝春秋」4月号)
・「賢治に献ずる詩歌」1首(日本現代詩歌文学館)
・「扉ふたつ」7首(「短歌往来」5月号)
・「月ヶ瀬」7首(「短歌研究」5・6月合併号)
・「冬布団」15首(「パンの耳」第7号)
連載
・啄木ごっこ(第51回)「スバル」創刊(「角川短歌」1月号)
・啄木ごっこ(第52回)朝日新聞入社と佐藤北江
(「角川短歌」2月号)
・啄木ごっこ(第53回)凌雲閣と塔下苑(「角川短歌」3月号)
・啄木ごっこ(第54回)私小説としての「ローマ字日記」
(「角川短歌」4月号)
・啄木ごっこ(第55回)「へなぶり」と演技性
(「角川短歌」5月号)
・啄木ごっこ(第56回)家族の上京と喜之床
(「角川短歌」6月号)
・啄木ごっこ(第57回)伊藤博文暗殺(「角川短歌」7月号)
・啄木ごっこ(第58回)食ふべき詩(「角川短歌」8月号)
・啄木ごっこ(第59回)社会部長渋川玄耳
(「角川短歌」9月号)
・啄木ごっこ(第60回)朝日歌壇と投稿者たち
(「角川短歌」10月号)
・啄木ごっこ(第61回)大逆事件(「角川短歌」11月号)
・啄木ごっこ(第62回)九月の夜の不平(「角川短歌」12月号)
・ことば以上こころ未満(第1回)(「NHK短歌」4月号)
・ことば以上こころ未満(第2回)(「NHK短歌」5月号)
・ことば以上こころ未満(第3回)(「NHK短歌」6月号)
・ことば以上こころ未満(第4回)(「NHK短歌」7月号)
・ことば以上こころ未満(第5回)(「NHK短歌」8月号)
・ことば以上こころ未満(第6回)(「NHK短歌」9月号)
・ことば以上こころ未満(第7回)(「NHK短歌」10月号)
・ことば以上こころ未満(第8回)(「NHK短歌」11月号)
・ことば以上こころ未満(第9回)(「NHK短歌」12月号)
評論
・徘徊する啄木(「横浜歌人会会報」第123号)
・加藤克巳論「静かな力」(「合歓」第100号)
・「新たな関係や幻を生み出す」(「歌壇」5月号)
・「セーフティーネットとしての短歌結社 『灰燼集』を読む」
(「歌壇」8月号)
・小池光論「言葉であり人生でもある」(「短歌研究」10月号)
書評
・小池光歌集『サーベルと燕』評(「角川短歌」2月号)
・藤原龍一郎著『抒情が目にしみる』評(「歌壇」4月号)
・打矢京子歌集『冬芽』評(「現代短歌」5月号)
・鈴木加成太歌集『うすがみの銀河』評
(「現代短歌新聞」4月号)
・川上まなみ歌集『日々に木々ときどき風が吹いてきて』評
(「現代短歌新聞」5月号)
・三井ゆき歌集『水平線』評(「現代短歌新聞」9月号)
・大野道夫著『つぶやく現代の短歌史』評
(「短歌往来」12月号)
その他
・第10回現代短歌社賞選考座談会(「現代短歌」1月号)
・秀歌を読もう「小池光」(「短歌春秋」165号)
・秀歌を読もう「河野裕子」(「短歌春秋」166号)
・秀歌を読もう「渡辺松男」(「短歌春秋」167号)
・秀歌を読もう「与謝野晶子」(「短歌春秋」168号)
・石畑由紀子歌集『エゾシカ/ジビエ』栞
・アンケート「二〇二二年の収穫」(「ねむらない樹」vol.10)
・澄田広枝歌集『ゆふさり』栞
・山縣満里子歌集『朱夏』序
・くにたち短歌大会選評座談会(「短歌春秋」166号)
・澁谷義人歌集『ハイスクール』跋
・六月の歌(「六花」vol.8)
・未来は明るいか(「うた新聞」12月号)
出演
・第25回「あなたを想う恋のうた」審査員
・講座「多様化する短歌の「今」」(3月18日)
・和歌山県歌人クラブ講演「小池光の歌のあれこれ」(5月28日)
・講座「こんな短歌があるなんて!」(7月2日)
・オンラインセミナー「軍人家庭と短歌―戦後派歌人 森岡貞香の
初期作品を中心に」(8月10日)
・「人麿の里全国万葉短歌大会」選者(8月27日)
・講座「2023年上半期、注目の歌集はこれだ!」(9月16日)
・澄田広枝『ゆふさり』批評会コーディネーター(10月28日)
・大阪歌人クラブ講演「啄木短歌の超絶技巧」(10月29日)
2023年12月31日
今後の予定
2月、3月に下記の講座や歌会、批評会を行います。
みなさん、どうぞご参加ください。
2月4日(日)講座「短歌 ― 連作の作り方」(大阪)
https://www.maibun.co.jp/course-detail?kouzainfo_id=272
2月24日(土)第11回別邸歌会(大阪)
https://matsutanka.seesaa.net/article/501761224.html
3月16日(土)講座「2023年下半期、注目の歌集はこれだ!」
(くずは)https://matsutanka.seesaa.net/article/501674495.html
3月24日(日)笠木拓『はるかカーテンコールまで』批評会(京都)
https://matsutanka.seesaa.net/article/501649283.html
3月30日(土)第12回別邸歌会(和歌山)
https://matsutanka.seesaa.net/article/501761224.html
みなさん、どうぞご参加ください。
2月4日(日)講座「短歌 ― 連作の作り方」(大阪)
https://www.maibun.co.jp/course-detail?kouzainfo_id=272
2月24日(土)第11回別邸歌会(大阪)
https://matsutanka.seesaa.net/article/501761224.html
3月16日(土)講座「2023年下半期、注目の歌集はこれだ!」
(くずは)https://matsutanka.seesaa.net/article/501674495.html
3月24日(日)笠木拓『はるかカーテンコールまで』批評会(京都)
https://matsutanka.seesaa.net/article/501649283.html
3月30日(土)第12回別邸歌会(和歌山)
https://matsutanka.seesaa.net/article/501761224.html
2023年12月30日
雑詠(033)
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こんなにも人は疲れて早朝の電車に首を折り曲げねむる
二時間に一本のバス遠ざかりまた冬枯れの野のなかの道
誤字ひとつ載せたるままに雨の夜を遠く手紙は運ばれてゆく
それぞれに形異なるじゃがいもを三つ食べたり冬至の夜に
深々とさらに大きな穴を掘る埋めようのない穴を消すため
みずからの遠いいびきに目を覚まし小用に立つ冬のあかとき
誰がもっとも得をしたかと考えて椿の花に気づいてしまう
*******************************
こんなにも人は疲れて早朝の電車に首を折り曲げねむる
二時間に一本のバス遠ざかりまた冬枯れの野のなかの道
誤字ひとつ載せたるままに雨の夜を遠く手紙は運ばれてゆく
それぞれに形異なるじゃがいもを三つ食べたり冬至の夜に
深々とさらに大きな穴を掘る埋めようのない穴を消すため
みずからの遠いいびきに目を覚まし小用に立つ冬のあかとき
誰がもっとも得をしたかと考えて椿の花に気づいてしまう
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2023年12月29日
映画「PERFECT DAYS」
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:役所広司、柄本時生、アオイヤマダ、中野有紗、三浦友和ほか
年末に良いものを見た。ヴェンダース版「パターソン」とでも言おうか。画面がスタンダードサイズなので、懐かしい感じがする。
ニュースなどで知っていた東京のおしゃれなトイレをいくつも見られたし、石川さゆりの歌を聴くこともできた。
短歌もこんなふうに詠めたらいいなと思う。
京都シネマ、124分。
出演:役所広司、柄本時生、アオイヤマダ、中野有紗、三浦友和ほか
年末に良いものを見た。ヴェンダース版「パターソン」とでも言おうか。画面がスタンダードサイズなので、懐かしい感じがする。
ニュースなどで知っていた東京のおしゃれなトイレをいくつも見られたし、石川さゆりの歌を聴くこともできた。
短歌もこんなふうに詠めたらいいなと思う。
一生に二度とは帰つて来ないいのちの一秒だ。おれはその一秒がいとしい。たゞ逃がしてやりたくない。
/石川啄木「一利己主義者と友人との対話」
京都シネマ、124分。
2023年12月28日
北山あさひ歌集『ヒューマン・ライツ』
318首を収めた第2歌集。
晩夏(おそなつ)のレモンを切り分けるナイフ 連帯してもしなくてもいい
『「育ちがいい人」だけが知っていること』という本ぜんぶ燃やして焼き芋
木は雪を、雪は硝子をくすぐって冬の終わりの始まりしずか
ワカサギのように心が反り返る怒っているのに元気と言われて
紙詰まりを放置されたるコピー機のつめたき胸へ手を差し入れる
サイダーのキャップを捻る瞬間に「元気だった?」と声がして 夏は
サモトラケのニケの両腕 妹と長く長く母を奪い合いたり
豆腐とはまず水の味、豆の味おわるころお坊さんの味なり
まよなかの雪をしずかに吸いながらみずうみ、傷はゆっくり癒える
てぶくろの指にすいっと縄暖簾分けて真冬の顔を見せたり
1首目、遠い昔に聞いた「連帯を求めて孤立を恐れず」を思い出す。
2首目「育ちがいい」という言葉への反発。「焼き芋」が真骨頂だ。
3首目、雪解けの様子だろうか。「くすぐって」に春の予感が滲む。
4首目、動きのある直喩が印象的だ。怒りが伝わらないもどかしさ。
5首目、コピー機が擬人化され、まるで悩みを取り除いているよう。
6首目、映画のワンシーンのように爽やか。炭酸の弾ける音がする。
7首目、姉妹で両腕を引っ張り合った末に腕がもぎ取れてしまった。
8首目「お坊さんの味」がいい。豆腐は精進料理にもよく使われる。
9首目、傷の癒え方のイメージ。「吸い」という動詞の選びがいい。
10首目、居酒屋などに入って来る人の姿。映像がよく目に浮かぶ。
2023年11月6日、左右社、1800円。
2023年12月27日
「六花」Vol.8
六花書林が毎年刊行している冊子も今年で8冊目。
前号に続いて「詩歌のある暮らし」をテーマに20名がエッセイを書いているほか、連載記事も載っている。私の連載「歌ごよみ」は6回目、六月の日付の入った歌について書いた。全12回の予定なので、これでちょうど半分。
近年、雑誌でもSNSでも早口でせわしない言葉が多く飛び交っているけれど、「六花」の文章はみんな落ち着いていて何とも心地よい。
詩歌とは、自分ではないものを引き寄せる力かもしれない。
/富田睦子「そういう生きもの」
「読む」と「詠む」を同じくヨムという動詞で表現する日本語では、解読することとエンコードすることが同じ行いとして捉えられている。
/泉慶章「スタックしたタイヤ」
俳句という詩は「省略の文学」としばしばいわれる。作者の膨大な経験や思いを色鉛筆で塗りつぶし、塗りつぶし、五七五しか残らなくなるまで斜線を引きまくる作業が常に求められる。ただ面白いのは、塗りつぶされ、斜線の底に沈んだものが熱心な読み手には透けて見えてくる――そんな巧妙な仕掛けが俳句には備わっている気がする。
/柳生正名「塗りつぶす 透けて見える」
今年の夏、青森県三沢市の寺山修司記念館へ行ってみた。予想に反して、実に辺鄙なところにあった。観光のついでに寄ってみる、というような場所ではなかった。記念館の展示を見渡して、寺山の短歌の業績というのは、寺山の人生のほんの一部分にすぎない、ということがよく分かった。
/桑原憂太郎「西勝洋一、前川佐美雄、寺山修司の歌集のこと」
「六花」vol.8 は六花書林から直接購入できます。
http://rikkasyorin.com/rikka.html
2023年12月5日、六花書林、700円。
2023年12月26日
邱永漢『わが青春の台湾 わが青春の香港』
1924年に台湾で生まれ東京帝国大学を卒業、戦後台湾独立運動に関わり香港へ亡命、1954年に再び日本に住むことになった著者の波乱万丈の青春記。
「わが青春の台湾」(1924〜1948)と「わが青春の香港」(1948〜1954)に加えて、友人の王行徳をモデルに書いたデビュー作「密入国者の手記」を収めている。
著者の父は台湾人、母は日本人であった。
同じ屋根の下で育ち、父親も同じなら、母親も同じであるにもかかわらず、私たち十人きょうだいは、姉の素娥、私の炳南だけが本島人で、妹以下は内地人になってしまった。たったこれだけの違いで、同じきょうだいでありながら、私たちの人生は大きく変わってしまったのである。
私は東大の経済学部を受験する決心をしていた。(…)植民地台湾に生まれた私のような人間が将来、文学を志しても生計を立てて行く自信がなかったからである。たいていの本島人のクラスメイトは医学部を志望する。文科系の卒業生でさえ途中から医学部に鞍替えをする。このほうが差別待遇されずに生きて行ける最も安全な道だったからだ。
戦後、日本に代って国民党の支配下に置かれた台湾で、民衆を弾圧する二・二八事件が起きたことは有名だが、台湾独立運動の詳細についてはこの本で初めて知った。
来年1月13日には台湾総統選挙がある。選挙によって自分たちのリーダーを選べることの大切さを、台湾の歴史が何よりもよく示している。
2021年5月25日、中公文庫、900円。
2023年12月25日
古い日記
たまたま古い日記を読み返していたら、2011年2月25日にこんなことを書いていた。
https://matsutanka.seesaa.net/article/387138406.html
この後、2013年から14年にかけて「短歌往来」に連載して、2016年に『樺太を訪れた歌人たち』(ながらみ書房)を刊行している。
日記に「いつの日か」と書いてから5年で本になっているのだ。そう考えると、けっこう早い。願えば叶うということか。
これからも、いろいろな「いつの日か」を、この日記に書いていくようにしよう。
https://matsutanka.seesaa.net/article/387138406.html
昨年出した評論集『短歌は記憶する』の中に「樺太の見た夢」という文章を書いたが、触れられなかった歌人も多く、まだまだ書きたいという思いが強い。いつの日か「樺太を訪れた歌人たち」という連載をして、一冊の本にまとめたいと思っている。
この後、2013年から14年にかけて「短歌往来」に連載して、2016年に『樺太を訪れた歌人たち』(ながらみ書房)を刊行している。
日記に「いつの日か」と書いてから5年で本になっているのだ。そう考えると、けっこう早い。願えば叶うということか。
これからも、いろいろな「いつの日か」を、この日記に書いていくようにしよう。
2023年12月24日
島内景二『和歌の黄昏 短歌の夜明け』
2014年から2016年まで「短歌往来」に連載された「短歌の近代」(全36回)に序章や終章などを追加して一冊にまとめた本。
「古今和歌集」「伊勢物語」「源氏物語」を中心とした和歌文化をどのように現代に継承できるかという観点から、江戸〜明治時代にかけての和歌・短歌の流れを捉え直している。
二十一世紀の短歌が、新たなる開花と見事なる結実の季節に向かうためには、近代短歌がとっくの昔に乗り越えたと錯覚し、実のところはまったく乗り越えていなかった「和歌」の長所と短所を、今一度、再確認しておく必要があると思う。
こうした問題意識のもとに、中島広足、蓮田善明、本居宣長、明治天皇、近藤芳樹、橘守部、香川景樹、正岡子規、大和田建樹、落合直文、樋口一葉、森鷗外、与謝野鉄幹、与謝野晶子、佐佐木信綱、窪田空穂、若山牧水、原阿佐緒、北原白秋、石川啄木、斎藤茂吉、島木赤彦、伊藤左千夫らの和歌・短歌を取り上げて読み解いている。
貞門の特徴は「言語遊戯」だと言われることもあるが、絶対に「遊戯」ではない。『新古今和歌集』の歌風が、「遊戯的」であるとか「現実逃避的」だと言われることがあっても、まったくそうではないのと同じことである。
子規は、宗武の和歌が、目にしたものをありのままに詠んだ「嘱目」の写実詠ではなく、王朝和歌の伝統の中から生まれたことを知っている。(…)だが、伝統の上に立体的に重ね合された和歌ではなく、一回きりの歌、すなわち「平面的」な和歌であると、意図的・戦略的に解釈し直してみせ、(…)近代短歌の扉を力強く、こじ開けた。
狂歌は、「和歌ではない」ことを逆手にとって、漢語や俗語などを、制限なしで使用できる特権を得た。その用語の自由を、「発想の自由」にまで突き詰めた。言わば、和歌の「タブー」から完全に解放されたのだ。
十一世紀の『源氏物語』の時代から、十二世紀の院政期までの王朝和文を基準として体系化されたのが、正統的な文語文法である。そうではない「バーチャル文語」の一種が、近代文語なのだ。
明治の文明開化期には、ヨーロッパ文明が大量になだれこんだ。『源氏物語』では日本を近代化できない。『源氏物語』では殖産興業・富国強兵を達成できないという焦りが、『万葉集』に実際以上の強いイメージをもたせた。これが『万葉集』の不幸だった。
本書の根幹をなす構想は非常に大きなものだ。江戸時代の和学者・北村季吟が集大成した「異文化統合システム」としての「源氏文化=和歌文化」と、国学者・本居宣長の「異文化排斥の思想」である「もののあはれ」を比較・対照するという文化史観に立っている。
その当否については何とも言えない。やや図式的過ぎるような気もする。けれども、和歌から近代短歌への流れを考える上でとても示唆に富む内容であるのは間違いない。
2019年9月30日、花鳥社、2800円。
2023年12月23日
ドラマ「コタツがない家」
テレビドラマは普段あまり見ないのだけれど、10月から放送された「コタツがない家」(全10回)が良かった。
主演の小池栄子の演技が素晴らしい。
吉岡秀隆も見事なダメっぷり。
脚本がよく練られていて、最後まで楽しく見ることができた。
オープニングの石川さゆりの主題歌を聞くだけで元気が出る。
主演の小池栄子の演技が素晴らしい。
吉岡秀隆も見事なダメっぷり。
脚本がよく練られていて、最後まで楽しく見ることができた。
オープニングの石川さゆりの主題歌を聞くだけで元気が出る。
2023年12月22日
土岐友浩歌集『ナムタル』
235首を収めた第3歌集。
1首目「もたれる」という動詞の選びがいい。松が傾いている感じ。
2首目「松原」「まばら」の音が響き合う。「ま」の音は下句にも。
3首目「ウミネコ」と「串焼き」がいかにも旅先という感じである。
4首目、人間が狂うのかと思って読むと結句で時計の話だとわかる。
5首目、燕が夏空を自在に飛ぶ姿が初二句からうまく伝わってくる。
6首目「富田」「混んで」「エデン」と響き合う音が耳に心地よい。
7首目、岡本太郎のCMの激しいイメージから一転して下句は静か。
8首目、上句の言い方がおもしろい。歩行者用信号のLEDのことだ。
9首目、風に揺れる「山茱萸の実」が心の形をイメージさせたのか。
10首目、自分以外はみんなグループなどで店に来ているのだろう。
2023年9月10日、私家版、2000円。
それぞれの影にもたれる黒松の遊歩道から海が見えるよ
松原の空はまばらに曇りつつサマータイムはまだ先のこと
ウミネコよ半日だけの旅行者の仮面をつけて串焼きを買う
狂うってよくないですよ手のなかの日が暮れるまで竜頭をいじる
低く飛ぶ 高くも飛べる サンマルクカフェを横切る夏のつばめは
年の瀬の摂津富田に逃げ込んでエデンの園の顚末を訊く
芸術は爆発してもいいけれどお一人様で餃子を食べる
人間のかたちに近いつぶつぶを数えてみたら青に変わった
山茱萸の実をふるわせて心にはむしろかたちがあると気がつく
ひとりでは心もとない豆腐屋のランチに人が並びはじめる
1首目「もたれる」という動詞の選びがいい。松が傾いている感じ。
2首目「松原」「まばら」の音が響き合う。「ま」の音は下句にも。
3首目「ウミネコ」と「串焼き」がいかにも旅先という感じである。
4首目、人間が狂うのかと思って読むと結句で時計の話だとわかる。
5首目、燕が夏空を自在に飛ぶ姿が初二句からうまく伝わってくる。
6首目「富田」「混んで」「エデン」と響き合う音が耳に心地よい。
7首目、岡本太郎のCMの激しいイメージから一転して下句は静か。
8首目、上句の言い方がおもしろい。歩行者用信号のLEDのことだ。
9首目、風に揺れる「山茱萸の実」が心の形をイメージさせたのか。
10首目、自分以外はみんなグループなどで店に来ているのだろう。
2023年9月10日、私家版、2000円。
2023年12月21日
オンライン講座「短歌のコツ」
2021年より続けているNHK学園のオンライン講座「短歌のコツ」が、来年2月より新しいクールに入ります。短歌に興味・関心のある方は、ぜひご受講ください。
https://college.coeteco.jp/live/8940cyl2
日程は2/22、3/28、4/25、5/23、6/27の全5回。毎月第4木曜日の開催です。
時間は19:30〜20:45の75分。前半に秀歌鑑賞をして、後半は提出していただいた作品の批評・添削を行います。質問の時間も取りますので、何でもお気軽にお尋ねください。
2023年12月20日
林芙美子『愉快なる地図』
副題は「台湾・樺太・パリへ」。
1930年から1936年までの海外への紀行文をまとめたもの。旅先は、台湾(1930年1月)、満洲・中国(1930年8月)、シベリヤ・パリ・ロンドン・ナポリ・マルセイユ(1931年11月〜1932年6月)、樺太(1934年5月)、北京(1936年10月)。
20代後半から30代前半の若さで精力的に知らない土地をめぐっている。文体も軽快で、読んでいて楽しい。それぞれの街の特徴を摑むことにも長けている。
台北の城内は常識以外の何ものもない。私には公園も博物館もおよそ静脈だ。只空の上には、台湾らしい土語が、ピンパン、ピンパン弾けている。だが城外は、万国旗のような光景だ。台湾の動脈が踊っている。
私は杭州へ来る汽車の中で、中国の若い女が二人、英語で話しあっているのを見たが、同じ国でありながら、言葉が通じないなんて! 何の不自然さもなく、英語で話しあっている中国の女を見て、私は中国と云う国のでかでかと広いのに愕いてしまった。
物が安いと云えば、パンがうまくて安い。こっちのパンは薪ざっぽうみたいに長くて、それを嚙りながら歩ける。これは至極楽しい。パリーの街は、物を食べながら歩けるのだ。
都会の持つ建築と云うものは、少しも風景的でなく、どこの国の都会とも、共通した文明さがあるものですが、国を見るならば、まずその国の田舎から見る事でしょう。ソヴェートの田舎の風景は、まるでイソップ物語りの絵のようです。
時代は満洲事変から日中戦争にかけての時期である。日本の植民地支配や日中の関係悪化についての意見も記されている。
内地女の知識階級程、厭なものはない。飯をたく事より、本を読む事より、社交が大事らしい。それも内地人同士の間の社交である。それから、内地人が苦力(クーリー)をこきつかっているのには、足から血が登るような反感を持った。
いずれの国の人民も愛国心を持たないものはない……東洋の平和は、東洋の女達がもっと手を握りあってもいいのじゃないだろうか。
来年あたり、日本の知識婦人を束にして連れてゆきたいものだ。小さなところで議論をむしかえしているよりも、早くそうして、深く支那を識ってほしい。友達からでも、まず手を握りあいたい。支那の女はだんだん強く大きくなって来ている。
林芙美子、もっといろいろ読んでみたくなった。
2022年4月25日、中公文庫、990円。
2023年12月18日
53歳
或るサイトの将棋棋士のランキングを見ると、現在のトップ10は以下のようになっている。
年齢を調べてみると、20代〜30代の棋士のなかに一人だけ53歳の羽生九段が入っているという状況だ。
まだまだ頑張ってほしい。
1 藤井聡太竜王名人 21歳
2 永瀬拓矢九段 31歳
3 菅井竜也八段 31歳
4 伊藤匠七段 21歳
5 羽生善治九段 53歳
6 豊島将之九段 33歳
7 佐々木大地七段 28歳
8 渡辺明九段 39歳
9 佐々木勇気八段 29歳
10 八代弥七段 29歳
年齢を調べてみると、20代〜30代の棋士のなかに一人だけ53歳の羽生九段が入っているという状況だ。
まだまだ頑張ってほしい。
2023年12月17日
第10回別邸歌会
第10回の別邸歌会を「奈良カエデの郷ひらら」(奈良県宇陀市)で開催。
自宅から電車とバスを乗り継いで、ちょうど2時間。1935年に建てられて2006年まで使われていた旧宇太小学校の木造校舎が、宿泊などもできる複合施設となっている。
まずは、「Cafeカエデ」で人気の給食ランチをいただく。
今日のメニューは、具だくさんポトフ・ミートスパゲッティ・クリームコロッケ・サラダ・フルーツヨーグルト・あげパン・牛乳。どれも懐かしい味がする。
歌会の会場は木造校舎2階の「5年1組」の教室。
机や椅子、黒板などの備品は当時のまま。
黒板消しとチョーク。何とも懐かしい。
参加者10名、計20首の歌について13:00から16:00過ぎまで議論する。いろいろな読みが出て、楽しい歌会だった。
次回の別邸歌会は来年2月24日(土)。大阪市住之江区の「昭和の隠れ家」で行う予定。参加申込み、お待ちしてます。
自宅から電車とバスを乗り継いで、ちょうど2時間。1935年に建てられて2006年まで使われていた旧宇太小学校の木造校舎が、宿泊などもできる複合施設となっている。
まずは、「Cafeカエデ」で人気の給食ランチをいただく。
今日のメニューは、具だくさんポトフ・ミートスパゲッティ・クリームコロッケ・サラダ・フルーツヨーグルト・あげパン・牛乳。どれも懐かしい味がする。
歌会の会場は木造校舎2階の「5年1組」の教室。
机や椅子、黒板などの備品は当時のまま。
黒板消しとチョーク。何とも懐かしい。
参加者10名、計20首の歌について13:00から16:00過ぎまで議論する。いろいろな読みが出て、楽しい歌会だった。
次回の別邸歌会は来年2月24日(土)。大阪市住之江区の「昭和の隠れ家」で行う予定。参加申込み、お待ちしてます。
2023年12月16日
林芙美子と啄木
林芙美子を読んでいると、しばしば啄木の歌が出てくる。
「私は宿命的に放浪者である。私は古里を持たない」(放浪記)と書く芙美子と「石をもて追はるるごとく/ふるさとを出でしかなしみ/消ゆる時なし」(一握の砂)と詠む啄木には、通じ合う部分が多かったのだろう。
「私は宿命的に放浪者である。私は古里を持たない」(放浪記)と書く芙美子と「石をもて追はるるごとく/ふるさとを出でしかなしみ/消ゆる時なし」(一握の砂)と詠む啄木には、通じ合う部分が多かったのだろう。
明日の十二日は啄木の記念日だと云うのだけれども、啄木が生れた日なのか亡くなった日なのか、それさえわたしは知らない。読むにはどんな歌がいいだろうと、わたしはトランクから啄木歌集を出してあっちこっちめくってみた。
百年(ももとせ)の長き眠りの覚めしごと
呿呻(あくび)してまし
思ふことなしに
山の子の
山を思ふがごとくにも
かなしき時は君をおもへり
こんな歌が眼にはいった。辛くなるような気持ちだった。
「田舎がえり」
さいはての駅に下り立ち
雪あかり
さびしき町にあゆみ入りにき
雪が降っている。私はこの啄木の歌を偶(ふ)っと思い浮べながら、郷愁のようなものを感じていた。
「新版 放浪記」
ええめんどうくさい、「いくたびか死なむとしては死なざりし、わが来しかたのをかしく悲し」啄木の歌のせいでもないだろうけれど、いざ日本を遠く離れてみると、妙に涙っぽくもなって来る。
「下駄で歩いたパリー」
2023年12月15日
片倉佳史『台湾に生きている「日本」』
台湾に残る日本統治時代の建物や遺物を紹介した本。
取り上げられているのは、台湾総督府、台北州公共浴場、畜魂碑、宜蘭飛行場跡、和美公学校校内神社、台南駅、竹子門水力発電所、旭村遙拝所、義愛公など。
当然、日本による植民地支配の歴史に深く関わる内容でありデリケートな部分もあるのだが、長年台湾に住む著者ならではの調査力や現地の人々との交流が印象に残る。
いま台湾では郷土史探究が潮流となっている。植民地統治は肯定されるような性格のものではないが、台湾の歴史を考察する上で、日本統治時代の半世紀を無視することはできない。そういった視点を庶民が持ち、戦前の遺構が保存や研究の対象となっているのは興味深いところである。
また、建物や遺物だけでなく、現地で使われている日本語由来の言葉についても記している。「アイサツ(挨拶)」「セビロ(背広)」「テンプラ(さつま揚げ)」など。
2009年3月5日、祥伝社新書、900円。
2023年12月14日
別邸歌会のご案内
来年3月30日(土)「黒江tetotte〜旧岩崎邸」(和歌山県海南市)での開催が決まりました。
紀州漆器で栄えた古い町並みが残っているようです。
https://www.kishusikki.com/08_kuroe.html
2023年12月13日
映画「春の画 SHUNGA」
監督:平田潤子
出演:石上阿希(京都芸術大学准教授)、早川聞多(美術史家)、浦上満(古美術商)、ミカエル・フォーニッツ(春画コレクター)、アンドリュー・ガーストル(ロンドン大学教授)、春画ール(春画ウォッチャー)、高橋由貴子(高橋工房代表)など。
江戸時代に隆盛を極めた「春画」をめぐる真面目なドキュメンタリー。歴史や技法、芸術としての魅力、現代アートへの影響など、さまざまな観点から春画の核心に迫っていく。
九州や北海道など全国各地で取材を行っていて、10月に訪れた柳川の立花邸も登場したので懐かしい気分になった。
アップリンク京都、121分。
出演:石上阿希(京都芸術大学准教授)、早川聞多(美術史家)、浦上満(古美術商)、ミカエル・フォーニッツ(春画コレクター)、アンドリュー・ガーストル(ロンドン大学教授)、春画ール(春画ウォッチャー)、高橋由貴子(高橋工房代表)など。
江戸時代に隆盛を極めた「春画」をめぐる真面目なドキュメンタリー。歴史や技法、芸術としての魅力、現代アートへの影響など、さまざまな観点から春画の核心に迫っていく。
九州や北海道など全国各地で取材を行っていて、10月に訪れた柳川の立花邸も登場したので懐かしい気分になった。
アップリンク京都、121分。
2023年12月12日
関口由彦『首都圏に生きるアイヌ民族』
副題は「「対話」の地平から」。
東京・中野にあったアイヌ料理店「レラ・チセ」に集う13名のアイヌの人々からの聞き書きをまとめた本。
アイヌ民族の文化伝承や権利回復のために運動しているアイヌの人々のなかにも、様々な考えがある。一人一人違うと言っていい。当然のことながら、同じ人の中でも年齢や生活環境によって考えが変化することも多い。
また、運動の場面の語りと生活の場面での語りにも違いがある。
彼(女)らは、一方で、運動の場においては、「弱者」「被害者」としての「アイヌ民族」という型にはまった言葉を用いて一定のストーリーを語り、他方では、それらの平板な言葉では語り尽くせない感覚をもって、日々の生活を営んできたのである。
大切なのは関係性やものごとを図式的に平板に捉えないことだろう。また、生身の人間の考え方や行動は一つに固定したものではなく、常に流動し変化するものだということも知っておく必要がある。
H氏は、型にはまった「アイヌ」/「日本人」といった二分法を課してくる側の見る者のまなざしに捉えられることのないアイデンティティを持ち、アイヌとしての自己意識と、日本人として生きていることとが深刻な葛藤をもたらすことのない柔軟なアイデンティティを生きているのである。
K氏が生まれた集落は、隣家を除いてすべてがアイヌの人の世帯であったため、かえって自分をアイヌだと自覚することはなかった。集落の内にいるかぎり、アイヌと名乗る必要性がなかったのである。
L氏には、アイヌ文化の研究者の書いた「きれいな文章」で、それぞれの人の「思い」が伝わるのだろうかという疑問がある。そして、アイヌの人々を「弱者」としてのみ捉える研究者には、差別の経験のないL氏のような人たちの思いは聞き届けられないのではないかと危惧する。
他者とのコミュニケーションや異文化理解について、多くのことを学ばせてもらう内容であった。
2007年11月15日、草風館、2200円。
2023年12月11日
川野里子歌集『ウォーターリリー』
第8歌集。
明確な方法意識に基づく連作によって、ベトナム戦争、カンボジア虐殺、ダイヤモンド・プリンセス、コロナ禍、広島、伊方原発、沖縄戦、辺野古、タイタニック、小林多喜二、オウム真理教など、過去や現在のさまざまな社会問題を詠んでいる。
困難な状況に置かれた人々、虐げられた人々に心を寄せる姿勢が一貫している。
ブレーキとアクセル踏みまちがへたといふ日本(につぽん)がそしてある老人が
ショーウィンドウの隅にカナブンころがれり新墓なればみづから光り
世界中のゴミうちあげられてゐる渚となりし息子棲む部屋
明けない夜はない のだけれど子の部屋に目覚まし時計三つを拾ふ
しらじらと花びらよりそひ花筏ながれゆくなり誰をも乗せず
淋しとふ文字が千体立ちつくす三十三間堂どれが妣なる
あまたなる蟻おほいなるキャラメルを襲ひつつあり昼のしづけさ
ぽつてりと玉子を落としソース塗り焦がしてゐたりここが爆心地
どこまでもドミノのやうにならぶ墓きらきらと倒れ永眠は来む
もがく蟻籠めたる琥珀うつくしき秋の陽は来てわたしを浸す
1首目、高齢者ドライバーによる事故に日本社会の縮図を見ている。
2首目、死骸がそのまま自らの墓になっているという発想が印象的。
3首目、上句の比喩が強烈。足の踏み場もないほど散らかっている。
4首目、信じる気持ちと迷う気持ちが二句の途中の一字空けに滲む。
5首目、結句に発見がある。筏は筏でも人を乗せることのない筏だ。
6首目、千体千手観音立像を「淋」という字に見立てたのが鮮やか。
7首目、拡大した映像を見ているような生々しさ。「襲ひ」がいい。
8首目、広島を詠んだ一連にある歌。お好み焼きと原爆のイメージ。
9首目、墓の最後はどうなるのか。日本の墓事情を考えさせられる。
10首目、いつしか私も樹脂のような陽射しに閉じ込められていく。
2023年8月10日、短歌研究社、2200円。
2023年12月10日
講座「短歌 ー 連作の作り方」
来年2月4日(日)に毎日文化センター(大阪)で講座「短歌 ー 連作の作り方」を行います。時間は14:00〜15:30の90分間。教室でもオンラインでも受講できます。
https://www.maibun.co.jp/course-detail?kouzainfo_id=272
お申込み、お待ちしております。
https://www.maibun.co.jp/course-detail?kouzainfo_id=272
短歌は1首で完結した一つの作品ですが、実際に雑誌や歌集に作品を発表する際には、5首〜30首程度の歌をならべて「連作」にするのが一般的です。単に歌を寄せ集めただけでは連作になりません。全体の構成やテーマ、並び合う歌同士の相乗効果といった多くの要素が連作には含まれます。本講座では優れた連作を紹介しながら、歌の並べ方やテーマの選び方、題の付け方などについて具体的に詳しくお話しします。
お申込み、お待ちしております。
2023年12月09日
時田則雄歌集『売買川』
帯広で農業を営む作者の第13歌集。タイトルは「うりかりがわ」。
トラクター積乱雲に向かひつつ進む馬鈴薯の花ふるはせて
細く長く林檎の皮を剝く妻を見てをり黄なる目玉の猫が
長靴のなかでいちにち過ごしたる指を湯槽で解してをりぬ
バックホー巨大な穴を掘り終へて影を伸ばしてゐるなりゆふべ
奪ふやうにスイートコーンを捥いでゐる肩まで白い霧に濡れつつ
蝉時雨浴びつつ墓を洗ひをり母の背中を洗ひしやうに
牛糞堆肥積みたるダンプ白き湯気たなびかせつつ国道を行く
新雪を蹴散らし駆けて来し馬の眼に映りゐる青き空
新しい地下足袋履いて草を取る百五十間畝に添ひつつ
光りつつ蛇口より出づる棒状の水もて顔面洗ひてをりぬ
1首目、トラクターや積乱雲の力強さが下句の繊細さを引き立てる。
2首目、われが見ているのかと思って読んでいくと最後に猫が登場。
3首目、縮こまって固くなった足の指に血が流れ疲れが取れていく。
4首目、一仕事終えて、人間なら腰や背中を伸ばしたりするところ。
5首目、「奪ふやうに」が印象的だ。早朝に収獲しているのだろう。
6首目、墓石を洗う時の手の動きによって生前の母の姿を思い出す。
7首目、堆肥が醗酵して熱を発している。北海道ならではの光景だ。
8首目、一面の雪景色と青空。生き生きした馬の動きが目に浮かぶ。
9首目、数詞が効果的。150間は約272メートル。黙々と草を取る。
10首目、「棒状の水」がいい。肉体を使う労働の充実感が伝わる。
2023年12月1日、ながらみ書房、2300円。
2023年12月08日
野嶋剛『日本の台湾人』
副題は「故郷を失ったタイワニーズの物語」。2018年に小学館から刊行された『タイワニーズ ― 故郷喪失者の物語』を加筆、改題したもの。
良書。おススメ。
インタビューや資料をもとに、日本で活躍する台湾ゆかりの人々のファミリーヒストリーを描いている。蓮舫(政治家)、辜寛敏(独立活動家)、東山彰良(作家)、温又柔(作家)、ジュディ・オング(歌手)、余貴美子(俳優)、羅邦強(551蓬莱)、安藤百福(日清食品)、陳舜臣(作家)、邱永漢(経営コンサルタント)など。
日本の台湾独立運動は、主に台湾からの亡命者や学生を中心に一九六〇年代に始まった。刊行物「台湾青年」を細々と刊行しながら、台湾独立のための理論を練り上げ、米国のグループとも連携しながら、日本や世界に情報発信を重ねた。
台湾の人々は、中国人から日本人、再び、中国人、そして現在は台湾人へとめまぐるしくアイデンティティを変化させてきた。こうした近現代史は、台湾において、台湾人でもあり、日本人でもあり、あるいは中国人でもあるという特殊な人々を産み落とした。
一九九九年の台湾大地震、二〇〇八年の四川大地震、そして、二〇一一年の東日本大震災。日中台をそれぞれ襲った三度の災害で、ジュディはいずれも支援活動の先頭に立った。
日本の中華料理の受容プロセスでつい見落とされがちなポイントは、日本人と中華料理の間で媒介の役割を果たしたタイワニーズの存在である。
日本と台湾と中国は歴史的に深い関わりを持っている。それは「台湾有事」といった争いの火種になり得る部分でもある一方で、経済・文化・観光などの交流や相互理解の豊かな土壌にもなっている。
いつかまた台湾に行ってみたいな。
2023年8月10日、ちくま文庫、900円。
2023年12月07日
映画「サタデー・フィクション」
監督:ロウ・イエ
出演:コン・リー、マーク・チャオ、パスカル・グレゴリー、トム・ブラシア、オダギリジョー、中島歩ほか
上海の租界を舞台に1941年12月1日から太平洋戦争開戦までの一週間を描いた作品。日本軍の暗号解読を目論む各国のスパイが、敵味方入り乱れて暗躍する。
劇中劇に使われた横光利一『上海』を読んでみようか。
アップリンク京都、127分。
出演:コン・リー、マーク・チャオ、パスカル・グレゴリー、トム・ブラシア、オダギリジョー、中島歩ほか
上海の租界を舞台に1941年12月1日から太平洋戦争開戦までの一週間を描いた作品。日本軍の暗号解読を目論む各国のスパイが、敵味方入り乱れて暗躍する。
劇中劇に使われた横光利一『上海』を読んでみようか。
アップリンク京都、127分。
2023年12月06日
講座「2023年下半期、注目の歌集はこれだ!」
まだ先の話ですが、来年3月16日(土)に朝日カルチャーセンターくずは教室で講座「2023年下半期、注目の歌集はこれだ!」を行います。時間は13:00〜14:30。教室でもオンラインでも受講できます。
【教室受講】
https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=4624585
【オンライン受講】
https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=4624621
近年、短歌ブームの影響もあって書店で歌集を見かける機会が増えてきました。短歌の上達のためには良い歌集を読むことが欠かせません。歌を「詠む」と「読む」は表裏一体の関係になっているからです。では、年間350冊もの歌集が刊行される中で、一体どの歌集を読めばいいのでしょうか。今回は2023年下半期に出た歌集の中から皆さんにぜひとも読んでほしい6冊をご紹介するとともに、歌集の読み方や一首一首の読みについても考えていきます。どうぞお気軽にご参加ください。
【教室受講】
https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=4624585
【オンライン受講】
https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=4624621
2023年12月05日
阿木津英『女のかたち・歌のかたち』
「西日本新聞」に1995年1月から7月にかけて連載した「女のかたち・歌のかたち」を中心に、20世紀の女性歌人の歌について記した文章をまとめた本。
みどり子の甘き肉借りて笑(え)む者は夜の淵にわれの来歴を問ふ/米川千嘉子『一夏』
子も夫も遠ざけひとり吐きてをりくちなはのごとく身を捩(よぢ)りつつ/秋山佐和子『空に響る樹々』
売り箱の中に仔を産む奴智鮫(どちざめ)に人ら競いて値をつけにけり/川合雅世『貝の浜』
すこしづつ書をよみては窓により外をながめてたのしかりけり/三ヶ島葭子『定本 三ヶ島葭子全歌集』
水桶にすべり落ちたる寒の烏賊いのちなきものはただに下降す/稲葉京子『槐の傘』
引用されている歌や鑑賞が良く、100年にわたる女性歌人の苦闘や輝きが浮かび上がってくる。新書版のコンパクトな内容だが、著者の視野の広さと考察の深さが印象に残った。
2023年8月4日、短歌研究社、1500円。
2023年12月04日
映画「首」
原作・監督・脚本:北野武
出演:ビートたけし、西島秀俊、加瀬亮、中村獅童、木村祐一、遠藤憲一、大森南朋、浅野忠信ほか
有岡城の戦い、高天神城の戦い、備中高松城の戦い、本能寺の変、山崎の戦いと、次々に起こる合戦シーンに迫力がある。
三河弁で喋る織田信長がなんとも強烈。たけし流の笑いやギャグも随所にあって、最後まで飽きることがない。
とは言え、首の刎ね飛ぶシーンが多く、男同士の絡みもあって、83歳の父と二人で観る映画ではなかったかも。
イオンシネマ新百合ヶ丘、131分。
出演:ビートたけし、西島秀俊、加瀬亮、中村獅童、木村祐一、遠藤憲一、大森南朋、浅野忠信ほか
有岡城の戦い、高天神城の戦い、備中高松城の戦い、本能寺の変、山崎の戦いと、次々に起こる合戦シーンに迫力がある。
三河弁で喋る織田信長がなんとも強烈。たけし流の笑いやギャグも随所にあって、最後まで飽きることがない。
とは言え、首の刎ね飛ぶシーンが多く、男同士の絡みもあって、83歳の父と二人で観る映画ではなかったかも。
イオンシネマ新百合ヶ丘、131分。
2023年12月03日
笠木拓『はるかカーテンコールまで』歌集批評会
来年3月24日(日)に京都で笠木拓『はるかカーテンコールまで』歌集批評会が行われます。もともと2020年6月7日に予定していた会がコロナ禍で中止となり、このたび3年9か月ぶりの開催となります。
『はるかカーテンコールまで』を未読の方は、ぜひこの機会にお読みください。おススメです。
https://matsutanka.seesaa.net/article/471123300.html
批評会の参加申込みは下記のフォームまで。
笠木拓『はるかカーテンコールまで』批評会 (google.com)
来年1月以降、歌集・歌書の批評会が相次いで開催されます。
備忘のためにいくつか書いておきます。
1月21日(日)
長谷川麟『延長戦』を読む会(福岡)
1月28日(日)
佐藤華保理第一歌集『ハイヌウェレの手』批評会(名古屋)
2月10日(土)
濱松哲朗歌集『翅ある人の音楽』批評会(東京)
2月11日(日)
野田かおり『風を待つ日の』歌集批評会(京都)
2月24日(土)
川本千栄『キマイラ文語』を読む会(東京)
3月10日(日)
現代短歌フェスティバル in 奈良(奈良)
2023年12月02日
tankalife
「tankalife(たんからいふ)短歌のある日々、短歌である日々」というサイトがあります。
https://tankalife.net/
一首鑑賞や短歌クイズなど多くの短歌が取り上げられていて、私の歌も丁寧に鑑賞していただいてます。
押ボタン式信号と気付かずにここで未来をじっと待ちます
https://tankalife.net/life34/
悪くない 置き忘れたらそれきりのビニール傘とぼくの関係
https://tankalife.net/umbrella20/
三分間待てずに食べるラーメンの鈍い歯触り悪くもないさ
https://tankalife.net/ramen13/
鋭角の切断面を鮮やかにさらしてサンドイッチがならぶ
https://tankalife.net/bread19/
ハンカチをかぶせるだけの子の手品われは見ており日曜の昼間に
https://tankalife.net/magic4/
穴熊は穴より出でてふらふらと仕留められたり赤い「と金」に
https://tankalife.net/shogi1/
短歌クイズ108
https://tankalife.net/quiz108/
短歌クイズ109
https://tankalife.net/quiz109/
短歌クイズ393
https://tankalife.net/quiz393/
短歌クイズ394
https://tankalife.net/quiz394/
他にも数多くの記事が載っていますので、どうぞご覧になってみてください。
https://tankalife.net/
一首鑑賞や短歌クイズなど多くの短歌が取り上げられていて、私の歌も丁寧に鑑賞していただいてます。
押ボタン式信号と気付かずにここで未来をじっと待ちます
https://tankalife.net/life34/
悪くない 置き忘れたらそれきりのビニール傘とぼくの関係
https://tankalife.net/umbrella20/
三分間待てずに食べるラーメンの鈍い歯触り悪くもないさ
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鋭角の切断面を鮮やかにさらしてサンドイッチがならぶ
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ハンカチをかぶせるだけの子の手品われは見ており日曜の昼間に
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穴熊は穴より出でてふらふらと仕留められたり赤い「と金」に
https://tankalife.net/shogi1/
短歌クイズ108
https://tankalife.net/quiz108/
短歌クイズ109
https://tankalife.net/quiz109/
短歌クイズ393
https://tankalife.net/quiz393/
短歌クイズ394
https://tankalife.net/quiz394/
他にも数多くの記事が載っていますので、どうぞご覧になってみてください。
2023年12月01日
住吉カルチャー・フレンテ歌会
10:30から神戸市立東灘区文化センターで「住吉カルチャー」。参加者9名。久々湊盈子歌集『非在の星』を取り上げて話をする。12:30終了。
13:20から同じ場所で「フレンテ歌会」。参加者11名。欠席の方の歌も含めて、計30首について議論する。17:00終了。
現在、「フレンテ歌会」は参加者の募集をしてませんが、「住吉カルチャー」は空きがあります。2時間の講座で、前半に秀歌鑑賞、後半に1人一首の批評・添削という内容です。
受講料は1回2000円。興味のある方は、松村までご連絡ください。
13:20から同じ場所で「フレンテ歌会」。参加者11名。欠席の方の歌も含めて、計30首について議論する。17:00終了。
現在、「フレンテ歌会」は参加者の募集をしてませんが、「住吉カルチャー」は空きがあります。2時間の講座で、前半に秀歌鑑賞、後半に1人一首の批評・添削という内容です。
受講料は1回2000円。興味のある方は、松村までご連絡ください。