2022年03月01日

橋本倫史『市場界隈』


副題は「那覇市第一牧志公設市場界隈の人々」。

2019年6月から建て替え工事が行われ、2022年4月には新市場がオープンする予定の牧志公設市場。その建て替え前の姿を記録するべく、市場内外の30店舗に取材したノンフィクション。

戦後の闇市から始まった市場の歴史や、沖縄の戦後史、さらには沖縄の食文化や暮らしの姿が浮かび上がってくる。

沖縄の人にとって、山羊は食べ慣れた食材の一つだ。公設市場にも山羊肉店が五、六軒あったが、この十年で次々と閉店してしまって、現在では「上原山羊肉店」だけが残る。山羊を飼う人が少なくなり、山羊肉が高級品になってしまったことが原因だという。
沖縄県は一世帯あたりの鰹節消費量が断トツの一位だ。二〇一六年の調査によれば、全国平均が年間二七六グラムであるのに対して、沖縄はその六・四倍の一七六八グラムである。

古い泡盛を収蔵する博物館&酒屋を営む「バザー屋」を紹介する中で著者は、

今目の前にあるものは、そこにあることが当たり前過ぎて、いつのまにか消え去ってしまう。でも、同時代の人達から変人扱いされる人の手で、時代は記録されてゆく。

と書いている。とても大切な指摘だと思う。これは、名著『ドライブイン探訪』や本書を記した著者自身の姿勢でもあるのだろう。
https://matsutanka.seesaa.net/article/465212751.html

2019年5月25日、本の雑誌社、1850円。

posted by 松村正直 at 06:19| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする