2021年07月31日

「『戦争の歌』を読む」(8月12日)

8月12日(木)にオンラインイベント「『戦争の歌』を読む」(野兎舎主催)を行います。昨年に続いて2回目の開催で、時間は19:30-21:30。参加費は1000円です。

短歌の好きな方、歴史に興味のある方、戦争について考えたい方など、皆さんどうぞご参加ください!

詳細について
https://www.facebook.com/events/1140623766423676/
チケット購入
https://yatosha.stores.jp/items/60fb93bf1b946c7782187447

『戦争の歌』(笠間書院、コレクション日本歌人選78)はBOOTHで割引価格にて販売しております。
https://masanao-m.booth.pm/
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2021年07月30日

オンライン講座「短歌のコツ」

NHK学園のオンライン講座「短歌のコツ」を毎月2回、担当しています。毎回1つのテーマを決めて歌作りのポイントを解説するとともに、添削指導も行っています。

現在、全4回の枠で申込みを受付中です。
興味のある方は、ぜひご参加ください。

◆日程・時間(全4回)
2021年8月5日・8月26日・9月9日・30日(木) 19:30〜20:45    

https://coubic.com/ngaku-online/924710#pageContent

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雑詠(007)

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ぬかるみを歩むがごとく梅雨どきの紙の繊維をペン先すすむ
ゆれる、まわる、すべる、かたむく、さまざまな動詞が集う児童公園
声を上げるべきといきおう人あれど怒るかどうかはわたしが決める
東京も夕方六時 時差のない国では続くオリンピックが
また庭のかまきりが猫に捕まった道徳と謹慎のはざまで
死んだ人と死んだ人とが別荘で会話しており古き映画に
きっと母も自宅なら風呂に入るだろう忘れてしまう方が楽だが

*******************************

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2021年07月29日

ワクチン接種

1回目のワクチン接種を受けた。

医師の問診で「座った状態での注射でいいですか?」と聞かれて「はい」と答えつつ、(えっ、立ったままで受ける人もいるの??)と思ったのだけど、用紙を見たら「座位」か「臥位」かの確認だった。

そりゃそうだ。
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2021年07月28日

長谷川ちえ『三春タイムズ』


絵:shunshun

福島県三春町で、「永く使いたい器と生活道具の店〈in-kyo〉」を営む著者が、四季折々の町の様子を記したエッセイ集。

2020年「立春」から始まって2021年の「大寒」までの二十四回、二十四節気ごとのエッセイがまとめられている。

三春という土地の名前は、梅・桃・桜の三つの春が同時に訪れることが由来だと聞いている。早い年だと三月末頃には梅が咲き始め、バトンを渡すかのように桃の花が色を添え、四月に入れば見事なまでのしだれ桜やソメイヨシノが蕾をほころばせる。
三春では暦と実際の自然の移ろいとが、ピタリと歩調を合わせることが多いような気がしている。昔は当り前だったかもしれないそのことが、気候変動もはげしい昨今、豊かなことだと素直に喜びたいと思っている。

気候、風土、歴史、民俗、人々の暮らしや交流の様子などが、落ち着いた筆致で記されている。読んでいて心地よい文章だ。

三春には一度だけ行ったことがある。福島に住んでいた時なので、もう四半世紀も昔のことだ。磐越東線の三春駅からバスに乗って、郊外の滝桜を見に行った。桜は素晴しかったけれど、そう言えば町はほとんど見ずに帰ってきたのだった。

いつかまた訪ねてみたい。

2021年3月29日、信陽堂、2000円。

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2021年07月27日

映画『男はつらいよ 花も嵐も寅次郎』

監督・原作:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
出演:渥美清、倍賞千恵子、田中裕子、沢田研二、下條正巳、三崎千恵子ほか

1982年公開のシリーズ第30作。
大分県の臼杵、湯平温泉、杵築、鉄輪温泉などが舞台になっている。

「男はつらいよ」は単なる喜劇や恋物語としてだけでなく(それだけでも十分だけれど)、時代の記録としての側面も持っている。大分空港へ向かうホバークラフト(1971年開設、現在は廃止)やヤマト運輸の宅急便(1976年開始)が印象的な形で登場する。

映画「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」(松竹、一九八二)には閉園間際の谷津遊園が登場する。沢田研二演じる三郎はチンパンジーの飼育員という設定だった。
             木下直之『動物園巡礼』

千葉県の谷津遊園は、この映画が公開される一週間前に閉園した。もちろん偶然ではなく、閉園する遊園地の姿をフィルムに残そうとロケ地に選ばれたのだ。

これを、例えば谷津遊園のドキュメンタリーの形で残すこともできるだろう。でも山田監督のすごいのは、それを普通のドラマの中にさり気なく残しているところだ。観覧車の中で三郎が「好きや」と告げるシーンでも、観覧車の錆がひどく目立つ。

「男はつらいよ」シリーズは、歳月が経過すればするほど時代の記録としての価値がますます高まっていく作品だと思う。

アップリンク京都、106分。

posted by 松村正直 at 18:47| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

展覧会「戦後京都の「色」はアメリカにあった!」

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京都文化博物館で開催されている「戦後京都の「色」はアメリカにあった!カラー写真が描く<オキュパイド・ジャパン>とその後」を見に行った。

https://www.bunpaku.or.jp/exhi_shibun_post/sengokyotonoiro/

昭和20年代の占領期にアメリカ人が撮影した京都のカラー写真が多数展示されている。アメリカに残っていたものが収集され、今回日本で展示されることになったのだ。

京都の暮らしや町並み、祇園祭の様子、接収住宅でのアメリカ人の生活の様子などが、当時日本ではまだ珍しかったカラー写真で残っているのは貴重なことだ。昭和20年代の空気がありありと甦る。

今も変らない風景もあれば、今ではもう見られない風景もある。先日明治村で見た聖ザビエル天主堂が、河原町の朝日会館の北、現在は「カトリック河原町教会」がある敷地に立っている姿も確認できた。

会期は9月20日まで。

posted by 松村正直 at 07:34| Comment(0) | 演劇・美術・講演 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月26日

オンラインイベント「『戦争の歌』を読む」

8月12日(木)にオンラインイベント「『戦争の歌』を読む」(野兎舎主催)を行います。昨年に続いて2回目の開催で、時間は19:30-21:30。参加費は1000円です。

短歌の好きな方、歴史に興味のある方、戦争について考えたい方など、皆さんどうぞご参加ください!

詳細について
https://www.facebook.com/events/1140623766423676/
チケット購入
https://yatosha.stores.jp/items/60fb93bf1b946c7782187447

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2021年07月25日

安田純生歌集『蛙声抄』

yasuda.jpg


1977年から86年までの作品303首を収めた第1歌集。

1986年に短歌新聞社から刊行された歌集を文庫化したもの。
文庫版解説(門脇篤史)と略年譜が追加されている。

ひらひらと雪ふる宵に人ふたりはかなきものを求めて逢ひぬ
人逝きて桃みのる庭 ゆくりなく大蟻ひとつ踏みつぶしけり
昨夜見し夢ゆ来つらむ葦原に猫の骸(むくろ)をつつける鴉
あぢさゐのたわわに咲ける堤よりつき来し犬のわが夢に棲む
仰ぎ見し藤の花房まなかひにぶら下がりけり寝ねむとすれば
電話にて長く話せり母親を失ひてより明るき友と
見抜かれぬほどに抑へし怒りなり夜空あふぎて風花を食ふ
ことばなく君とあるとき山繭蛾バス待合所の壁をとびたつ
小川から瀕死の鮒をすくひあげ猫に与へつをさな児たちは
死なざりしかの真夏より賢くもまた愚かにもなりて瓜食む
馬跳びはなほも続けり硝子戸を隔て音なき夏の世界に
まなかひを白き手首の行き来して昼ひそやかにわが額(ぬか)剃らる
けふは君と来ざれど冬の森の径(みち)記憶のなかの夕だちに濡る
この世なる〈高天原〉にのぼり来し土竜の屍を裏がへしたり
おもむろに堤こえつつ川霧は村の夕べを舐めはじめたり

1首目、確かなものではなく「はかなきもの」。雪の光景とも合う。
2首目、人間の死と関わりなく実る桃。命の不条理を感じさせる歌。
3首目、夢の世界と現実の世界が繋がっているような不思議な感覚。
4首目、現実の世界で付いてきた犬が、夢の中にも入り込んでくる。
5首目、昼間に見上げた藤の光景が、寝ようとした時に蘇ってくる。
6首目、「暗き」ではなく「明るき」友。明るく振舞っているのか。
7首目、胸の内に秘めた怒りを鎮めるように、雪を口中へと入れる。
8首目、まるで二人の沈黙に耐えかねたかのように、蛾が飛び立つ。
9首目、死にかけの鮒を助けてあげたのかと思ったらそうではない。
10首目、生き延びて齢を重ねることで賢くなるのなら良いけれど。
11首目、硝子戸越しに子供たちの動きが影絵のように見えている。
12首目、不気味な感じで歌が始まって、下句で理髪店だとわかる。
13首目、かつて君と来て夕立に遭った道を今日は一人歩いている。
14首目、地下で生きる土竜にとっては地上が〈高天原〉なのかも。
15首目、「舐め」という動詞の選びがいい。川霧の体感が伝わる。

2021年3月28日、現代短歌社第1歌集文庫、800円。

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2021年07月24日

木下直之『動物園巡礼』

著者 : 木下直之
東京大学出版会
発売日 : 2018-11-30

全国各地にある動物園を巡りながら、動物園とは何かについて考察した本。公営の動物園以外にも、民間の小さな動物園や、かつて盛んに行われた見世物やサーカスの動物ショーに至るまで、対象は幅広い。

動物園が当り前にあった時代を過ぎて、今では動物園が何のために存在するのかを問い直される時代になっている。希少動物の輸入が難しくなり、動物福祉の考えも広まってきた。そうした中にあって、私たちにとって動物園とはいったい何であるのか。歴史・文化・民俗・科学・政策・法律など様々な観点からアプローチしていく。

現代の動物園で目にする動物の多くは、実は動物園生まれなのである。動物園で生まれ育ち、外の世界を知らずに死んでゆく。
つがいの動物はしばしば「夫婦」と見なされ、子どもが生まれると今度は「家族」と呼ばれることが普通だった。人間の関係が動物に平気で投影された。
地方自治体では、博物館・美術館は博物館法に基づき教育委員会、動物園は都市公園法第二条で「公園施設」に規定されているがゆえに公園課の所管が多く、それだけでも両者は遠く隔たっている。
動物園においては四〇年ほど前に廃止された動物ショーが、多くの水族館では集客のために欠かせない。その主役がイルカである。いくつかの水族館では、イルカショーがその経営を支えているといっても過言ではない。

現場を訪ねて取材を重ね、また多くの文献資料に当たることで、著者は動物と私たちをめぐる多くの問題を浮き彫りにする。その圧倒的な筆力には感嘆するほかない。動物について考えることは、人間について考えることでもあり、また命について考えることでもあるのだ。

2018年11月26日、東京大学出版会、2800円。

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2021年07月23日

関口良雄『昔日の客』


東京の大森で古本屋「山王書房」を営んでいた著者のエッセイ集。
1978年に三茶書房から刊行された本が32年後の2010年に復刊され、今でも版を重ねている。

正宗白鳥、上林暁、尾崎士郎、尾崎一雄、野呂邦暢といった文学者との交流や、店を訪れる客とのやり取り、古本に対する思い、故郷の思い出などが、ユーモアも交えて綴られている。確かに名著と言われるだけのことはある。

私は売れなくてもいいから、久米正雄の本は棚の上にそのまま置いておこうと思う。相馬御風、吉田絃二郎、土田杏村の本なども今はあまり読む人もなくなった。古本としては冷遇され、今は古本屋の下積みとなっている不遇な本たちだ。
柿の木にまたがって食う柿の味は、柿の最高の味かもしれない。まして、色づいた四囲の山々を眺めながらの味は……。

還暦記念に本書の出版の準備を進めていた著者は、完成を見ることなく59歳で亡くなった。でも、残された本は多くの人に読まれ続けている。

2010年10月30日第1刷、2021年2月15日第11刷。
夏葉社、2200円。

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2021年07月22日

無料公開中

下記5点の文章・作品をBOOTHで無料公開しています。
興味のある方は、ダウンロードしてお読みください。

・三分でわかる短歌史
https://masanao-m.booth.pm/items/3015943

・十首でわかる短歌史
https://masanao-m.booth.pm/items/3015959

・近代秀歌七十首
https://masanao-m.booth.pm/items/3015967

・エッセイ「岡山時代のこと」
https://masanao-m.booth.pm/items/2835460

・「五反田」7首
https://masanao-m.booth.pm/items/2835462

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小黒世茂歌集『九夏』

著者 : 小黒世茂
短歌研究社
発売日 : 2021-07-12

333首を収めた第6歌集。
風土、歴史、民俗、信仰などを感じさせる歌が多い。

はなれたりふれあつたりしてコスモスは如来のまなこを揺らしてゐたり
しだれ梅に集まる老いの顔のなか姉を探すも見分けられない
おほぞらを二つにわける銀漢のしたで姉の手握りてゐたり
老いびとと死者しかゐない浦みちにひじき干される竹笊のなか
カーテンは水藻のゆらぎ まつくらな自室に鮫が泳いでゐたり
こめかみにしみ入るほどの閑(しづか)さの若狭に冬の蘇鉄をあふぐ
メモ帳にはさんだペンのふくらみを確かめながらお薬師めぐる
うらがへり花は落ちたり 太陽が遠まはりして日暮れがおそい
階段の暗きところにかたまりて細魚のやうな子たちがあそぶ
あの娘のいひなりなのねと子にいへばスモークツリーのふるまひをする

1首目、仏像の視界にあるコスモスが、しきりに風に揺れている。
2首目、たくさんの老人に紛れるように、姉の姿を見失ってしまう。
3首目、天上の天の川と地上の姉妹。離れ離れにならないように。
4首目、鄙びた海岸沿いの道。死者たちも風景の中に存在している。
5首目、ゆらめくカーテンを見ているとまるで海の中にいるみたい。
6首目、静けさと寒さが身体の中に入ってくる。「蘇鉄」の存在感。
7首目、ペンを落としていないか、時々無意識に触れては確認する。
8首目、日が長くなったのを「遠まはり」と捉えたところが印象的。
9首目、もっと明るい所で遊んだらと思うけれど子供はそうしない。
10首目、息子の妻のことだろう。曖昧な受け答えに終始する息子。

2021年7月12日、短歌研究社、2500円。

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2021年07月21日

村松美賀子・伊藤存『標本の本』


副題は「京都大学総合博物館の収蔵室から」。

約260万点の学術標本や教育資料を収蔵する博物館の中から、著者が興味を惹かれたものをカラー写真入りで紹介した本。標本とは何か、どのような目的で作られ、どのように活用されるかといった基本的なことも詳しく解説されている。

蝶の羽は色素ではなく“構造色”といって光の波長などが鱗粉の表面で変化する原理であるため褪色しにくいが、バッタやトンボ、ウスバカゲロウなどの色は色素なので、殺虫や保管に使う薬剤などにより、鮮やかな緑や黄色の色素は抜けてしまう。
“ウミヘビ”にはは虫類のウミヘビと魚類でウナギの仲間のウミヘビがいる。和名はどこに分類するかの判断材料にはならないのだ。
生物の種名に関しては、実在する種のうち多くて20分の1、少なく見積もると100分の1くらいしかついていないともいわれている。

こんな面白い話がたくさん載っていて飽きない。

中でも一番驚いたのは収集した植物を挟んでいた新聞紙の話。1923年に京都帝国大学理学部が沖縄の調査をして植物を収集した。

調査隊が持ち帰った大量の植物のうち、70点ほどが琉球新報、沖縄毎日新聞など当時の沖縄の新聞に挟まれていた。発見された貴重な新聞紙はすべて沖縄県公文書館に寄贈された。

太平洋戦争末期に戦場となった沖縄には、戦前の新聞がほとんど残っていない。戦災で多くのものが焼かれてしまった過酷な歴史が、こんなところにも顔を覗かせている。

2019年3月20日、青幻舎ビジュアル文庫、1500円。

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映画「茜色に焼かれる」

監督・脚本:石井裕也
出演:尾野真千子、和田庵、片山友希、オダギリジョー、永瀬正敏ほか

ブレーキの踏み間違いによる死亡事故、コロナ禍で閉店したカフェ、母子家庭の貧困、風俗店で働く女性たち、学校でのいじめなど、近年の社会問題をふんだんに取り入れた内容。

率直に言ってちょっと盛りだくさんな印象もある。それでも骨太な人間ドラマに仕上がっているのは、主演の尾野真千子の演技力によるところが大きい。

人間の持つ美しさと醜さが次々に浮き彫りになる。今の時代を生き延びるのに大切な逞しさを伝えてくれる作品だ。

京都みなみ会館、144分。

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2021年07月20日

くどうれいん『わたしを空腹にしないほうがいい 改訂版』

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俳句のウェブマガジン「スピカ」に2016年6月に連載された文章に加筆修正してまとめた一冊。「日付」+「俳句」+「食べものに関するエッセイ」というスタイルになっている。

ソーダ水すべてもしもの話でも
才能がなくてもここに夏銀河
夕立が聞こえてくるだけの電話

喜んでいても悩んでいても健康的な明るさを感じさせるのが、著者の特徴であり魅力でもある。読んで元気になるエッセイという感じだ。

「どうしてそんなに料理好きに育ったのかねえ」といつも母は不思議がるけれど、両親あってのこの娘だ、と胸を張って言える。菜箸を握るのが楽しいと思えることは、きっとすこやかに生きていくうえで武器になると信じている。

「両親あってのこの娘だ」と心に思うだけでなくこうして堂々と書ける人は、なかなかいない。まあ、もちろん明るいだけではないのだろうけれど。

2018年8月19日発行、2020年10月16日第9刷。
BOOKNERD、1000円。

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2021年07月19日

山下太吉歌集『焚火にあたる』

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「塔」所属の作者の第2歌集。「かごしま短歌文庫」22。

死ぬまでに弟の骨を硫黄島に拾はむと幾度言ひし叔父逝く
病廊を歩み来る人の杖の音止みぬ中庭のさくらを見るか
峡の村真下に覗けば家ごとにさくらの花の庭に咲きをり
急ブレーキの前の軽トラに急ブレーキ踏みたりイタチは草叢へ逃ぐ

歌集の初めの方に「佐太郎訪ひし燃島(桜島の北にある小島)行 2013年」という一連がある。

珍しき来訪者四人に鵜があまた突堤に並び此方見てゐる
廃屋より出で来し猫に次は人現れるかとしばし見入りぬ
飛び散りて砕けし窓のガラス片踏みつつ教室の中を覗きぬ

「四人」の一人としてこの旅にご一緒したので懐かしい。
・・・あれからもう8年になるのか。

2021年7月15日、ジャプラン、1300円。

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西尾克洋『スポーツとしての相撲論』


副題は「力士の体重はなぜ30キロ増えたのか」。

ブログ「幕下相撲の知られざる世界」が評判を呼び相撲ライターとなった著者が、30の質問の答える形で相撲の仕組みや魅力について記した一冊。

大相撲というと90年代のイメージを持たれている方が多いのですが、当時から30年近く経過するとイメージとは異なる実態があります。

と、まえがきにある通り、「寄り切りから押し出しへ」「平均130kgから160kgへ」「中卒叩き上げから大卒へ」「国民的スポーツからマイナースポーツへ」といった変化や、その理由がわかりやすく説明されている。

相撲というのは珍しい競技で、互いの呼吸の合ったところで勝負が始まります。よく誤解されますが、行司さんが「ハッキヨイ!」と声を上げるのは腕相撲で言うところの「レディー、ゴー!」に当たる立ち合いの合図ではありません。
相撲のもう一つの大きな特徴として、ルールのわかりやすさが挙げられます。土俵の外に出るか、足の裏以外が地面に付いたら負け。これだけです。
現在の18時打ち出しという時間は、プロスポーツの興行として捉えると改善の余地があるように思えます。社会人の大半が平日の18時まで仕事をしているので、リアルタイムでの相撲観戦ができないからです。
年収100万円の幕下力士が120人いる中で、年収1000万円以上の十両に上がれるのは毎場所4人程度。

ちょうど昨日、大相撲名古屋場所が白鵬の45回目の優勝で幕を閉じた。本書でも「Q9 白鵬がこれほど長い間、これほど強い理由を詳しく知りたいです。いくらなんでも強すぎませんか?」といった質問があり、まさにタイムリーな内容だ。

白鵬が休場すると誰が優勝してもおかしくないとはいえ、結局のところ絶好調の白鵬を上回る力士はいまだにいないのが実情です。

まさに著者の予想通りの結果になったという感じである。

2021年6月30日、光文社新書、880円。

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2021年07月18日

映画「ざわざわ下北沢」

監督:市川準
出演:原田芳雄、北川智子、小澤征悦、フジ子・ヘミング、りりィ、樹木希林、渡辺謙、鈴木京香、豊川悦司、広末涼子、平田満ほか

2000年公開の作品。

下北沢駅近くの喫茶店「KARASS」でアルバイトする主人公を中心に、店の常連や友人、商店街の人々のエピソードを描いた群像劇。冒頭に登場する小さな置物が次々と人手に渡っていくことで、順々にエピソードが切り替わっていく。

下北沢の町の雰囲気が濃厚に立ち込めていて、懐かしい気分になる。

出町座、105分。

posted by 松村正直 at 12:14| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

大和郡山吟行

先日、大和郡山へ吟行に出掛けた。

郡山城跡→金魚池→やまと錦魚園・郡山金魚資料館→とほん(本屋)→町家物語館(旧川本家住宅)という行程。

城跡は以前も訪れたことがあるのだが、天守台が復元整備されて眺めの良い展望台のようになっていた。


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金魚養殖業の店で見つけた金魚の鏝絵。


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金魚の自動販売機。
朝取り(!)金魚が一袋200円で売られている。


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木造三階建の町家物語館。
大正13年に建てられたもので、もとは遊郭であった。


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建物2階から見た中庭。
吹抜けになっている。


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ハート形をした猪目窓(いのめまど)。
陰影が美しい。

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2021年07月17日

岡崎武志『上京する文學』


副題は「春樹から漱石まで」。
2012年に新日本出版社より刊行された単行本の文庫化。

さまざまな作品を「上京」という観点から読み解いたユニークな文学論。取り上げられる作家は、村上春樹、寺山修司、松本清張、太宰治、林芙美子など18名。

宮沢賢治は三十七年という短い生涯のなかで、九回も上京している。総滞在日数は約案百六十日にもなった。「三十七分の一」は、東京にいたことになる。
山周(山本周五郎)の作品は没後五十年を超えて、新潮文庫に約五十冊が残り、主要作品をほとんど読める。(・・・)新潮文庫にとって山周はいまだに大事な稼ぎ頭だ。
茂吉が見たのは「赤」だ。明治四十一年の監獄法施行規則により、未決囚のお仕着せは「青(浅葱色)」、既決囚は「赤(柿色)」と定められた。茂吉が見たのは既決囚ではなかったか。

時代背景を踏まえながら、短い文章で的確にポイントを指摘している。文学者にとって東京がどのような存在で、上京がどんな意味を持っていたのかが、よく見えてくる。

本書のもっとも根底にあるのは、著者自身が上京者であるということだ。30歳を過ぎて東京に出てきた時のことを、

知り合いも友人も就くべき仕事も書く媒体もない、まさに裸一貫の突進であった。それでも新しい部屋で新しい朝を迎えて、そこが「東京」だった時の興奮を今も忘れていない。

と書いている。この純粋な気持ちが、20年以上経って本書を生み出したのだと言ってもいいだろう。

2019年9月10日、ちくま文庫、840円。

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2021年07月16日

信綱と啄木

  立待崎に啄木の墓を訪ふ
さすらへ来(き)て喜び見けむ海を見つつ詩人啄木は眠りてありけり
            佐佐木信綱『豊旗雲』

昭和2年に北海道を訪れた時の歌。
明治45年の啄木の死から15年後のことである。

啄木は森鷗外宅で開かれる観潮楼歌会に6回出席しており、信綱とも顔を合わせていた。初対面の明治41年5月2日の日記には

信綱は温厚な風采、女弟子が千人近くもあるのも無理が無いと思ふ。

とある。

この日の歌会は、鷗外15点、平野万里14点、啄木12点、与謝野鉄幹12点、吉井勇12点、北原白秋7点、信綱5点、伊藤左千夫4点という結果だった。

親譲りの歌の先生で大学の講師なる信綱君の五点は、実際気の毒であつた。

と、啄木は楽しそうに記している。
この時、啄木22歳、信綱35歳。

その4年後に啄木は26歳で死に、一方の信綱は91歳まで長生きして昭和38年に亡くなった。

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2021年07月15日

橋本喜典歌集『聖木立以後』


2019年4月8日に90歳で亡くなった作者の遺歌集。
2018年・19年の作品263首を収めている。

眼とづれば見たきものみな見えるのに開けば見えぬ眼を自覚する
湯船にて死にし先輩を思ひゐて怖ろしくなつて手摺を摑む
診察室の並ぶ廊下に待ちをれば看護師のみが姿よくゆく
雲ほそくおぼろになびく 眼球をぬぐへぬわれは眼鏡を拭ふ
大いなる力を若きふた親に与へつづけむこの緑児は
垣根の花見てゐてたまたま帰り来しこの家(や)の夫人と昔語りす
米扁の糊の感覚右の手の人さし指の指先が知る
友の電話聞こえず妻に代れるに笑ひなどして終るのはいつ
人間が酸素を吸ひて生きてゐる存在なるを知りて日々あり
何もかもして貰ふ身になつてきて卑屈になるなと内なる鬼が言ふ

1首目、緑内障により視力が低下した作者。上句が何でもせつない。
2首目、2017年に亡くなった岩田正を思う。下句に死の実感あり。
3首目、病気や高齢の方が多い場所で看護師は若く颯爽としている。
4首目、眼球も拭ったり取り替えたりできれば良いのだけれども。
5首目、親が子に力を与えるのではなく、子が親に力を与えるのだ。
6首目、偶然がもたらした素敵な一場面。夫人も高齢なのだろう。
7首目、かつて米粒を糊代わりに使っていた時の感触を覚えている。
8首目、耳の聞こえも悪い作者。仲間外れにされたような寂しさだ。
9首目、酸素ボンベを使うようになり、呼吸は当り前ではなくなる。
10首目、介助・介護を受ける立場となった時に精神をどう保つか。

巻末の年譜には、亡くなった時の様子が次のように記されている。

四月七日、「平成31年4月の歌」と題したまひる野の歌稿(八首)を、拡大読書器を駆使して原稿用紙に鉛筆書きで自ら清書する。短歌手帳に鉛筆を挟んで枕の下に入れ、就寝。四月八日早朝、自宅にて永眠。享年九十歳。

最後の最後まで見事に歌人だったんだなと思う。
晩年の3歌集『生きて帰る』『聖木立』『聖木立以後』は、それぞれとても味わい深い歌集だった。

https://matsutanka.seesaa.net/article/443295594.html
https://matsutanka.seesaa.net/article/461424279.html

謹んでご冥福をお祈りします。

2021年6月25日、角川書店、2000円。

posted by 松村正直 at 07:20| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月14日

矢ぐるまの花(その3)

お花やお花、撫子(なでしこ)の花や矢車の花売、月の朔日(ついたち)十五日には二人三人呼び以(も)て行くなり。
       泉鏡花「草あやめ」(明治42年)

「矢車の花」は、当時花売りが売りにくるほどの花であったことがわかる。これは当然、山野に自生するヤグルマソウではなく、明治期にヨーロッパから渡ってきたヤグルマギクであろう。

朝ごとに一つ二つと減り行くに何が残らむ矢ぐるまの花
俛首(うなだ)れてわびしき花の耬斗菜(をだまき)は萎みてあせぬ矢車のはな
風邪引きて厭ひし窓もあけたればすなはちゆるる矢車の花
快き夏来にけりといふがごとまともに向ける矢車の花
       長塚節『長塚節歌集』(大正6年)

大正3年5月の歌。

入院中の作者が見ているのは壜に活けられた花。「いつの間にか、立ふぢは捨てられ、きんせんはぞろりとこぼれたるに、夏の草なればにや矢車のみひとりいつまでも心強げに見ゆれば」と詞書にある。

部屋に飾られているだけでなく、「まともに(正面に)向ける」という言葉からも、この「矢車の花」はヤグルマギクだとわかる。

要するに、明治・大正期に「矢ぐるまの花」とあれば、それはヤグルマギクで間違いないと言っていいだろう。

posted by 松村正直 at 17:50| Comment(0) | 石川啄木 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月13日

矢ぐるまの花(その2)

「古い時代の言葉の意味を知るには、その当時の辞書を調べるのが一番」と、かつて安田純生さんに教わったことがある。「矢ぐるまの花」についてはどうだろう。

そんな時に辞書ではないけれど役に立つのが青空文庫である。青空文庫の検索機能を使って「矢車の花」を調べると、古い用例がいくつも見つかる。

中華民国の旗。煙を揚げる英吉利(イギリス)の船。『港をよろふ山の若葉に光さし……』顱頂の禿げそめた斎藤茂吉。ロティ。沈南蘋。永井荷風。
 最後に『日本の聖母の寺』その内陣のおん母マリア。穂麦に交じつた矢車の花。
      芥川龍之介「長崎」(大正13年)

長崎の名物を列挙した文章に「矢車の花」が出てくる。ここで注目すべきは「穂麦に交じった」だ。ヤグルマギクは英語で corn flower と言い、麦畑などの穀物畑に咲く花という意味なのである。

雛罌粟(コクリコ)の花が少しあくどく感じる程一面に地の上に咲いて居る。矢車の花は此國では野生の物であるから日本で見るよりも背が低く、菫かと思はれる程地を這つて咲いて居る。
      与謝野晶子「巴里の旅窓より」(大正3年)

フランスを訪れて見かけた花についての描写。ヤグルマソウが日本の在来種であるのに対して、ヤグルマギクはヨーロッパ原産。フランスの国花の一つにもなっている。

つまり、芥川の「矢車の花」も晶子の「矢車の花」も、どちらもヤグルマギクを指している。

posted by 松村正直 at 23:14| Comment(0) | 石川啄木 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月12日

矢ぐるまの花(その1)

 函館の青柳町こそかなしけれ
 友の恋歌
 矢ぐるまの花
      石川啄木『一握の砂』

啄木の有名な一首だが、この歌の「矢ぐるまの花」については2つの解釈がある。「ヤグルマソウ(ユキノシタ科)」と「ヤグルマギク(キク科)」である。「ヤグルマギク」を「ヤグルマソウ」と呼ぶこともあるので、余計にややこしい。

矢ぐるまの花 ― 矢車草。ユキノシタ科の多年草。北海道、本州の深山に生える。高さ一〜一・五メートル。普通五枚の小葉が矢車形につく。夏、黄白色の無弁の小花を円錐状に多数つける。
      上田博『石川啄木全歌鑑賞』
「矢ぐるまの花」これは矢車草の花ではなく、セントウレアつまりヤグルマギクの花です。花形が矢車に似ているのでこの名があります。啄木がうたっているのはおそらく青紫色のヤグルマギクでしょう。イメージされているのは五月下旬か六月初旬ころのことでしょうか。
      近藤典彦『啄木短歌に時代を読む』

前者はヤグルマソウ説、後者はヤグルマギク説である。

ここに書かれているように、二つの花は全く別の花であり印象も大きく異なる。ヤグルマソウは6〜7月頃に白い小さな花(萼)が密生して付き、ヤグルマギクは4〜6月頃に青紫(白やピンクもあるが)の花を咲かせる。ヤグルマソウは葉が矢車に似ているのに対して、ヤグルマギクは花が矢車に似ていることから命名されている。

では、啄木の歌の「矢ぐるまの花」はどちらなのか?

posted by 松村正直 at 23:03| Comment(4) | 石川啄木 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月11日

朴 順梨『離島の本屋』


副題は「22の島で「本屋」の灯りをともす人たち」。

フリーペーパー『LOVE書店!』の連載をまとめた一冊で、全国の離島にある本屋を訪ねて取材した内容である。

登場するのは、父島、母島、伊豆大島、中通島、礼文島、生口島、弓削島、周防大島、江田島、篠島、与那国島、与論島、八丈島、隠岐島後、北大東島、家島、大三島、奄美大島、新島、小豆島、対馬、沖永良部島。

と言っても、これらすべての島に本屋があるわけではなく、図書館がある島や出張本屋が来る島なども含めて、離島における本の事情をレポートしている。

交通の不便な離島でも多くの人の努力によって本が流通していることに、何とも心が温まる。もちろん、本の売れない時代にあって離島で本屋を続けるのは簡単なことではない。

「10年ほど前から、本屋としてのこだわりが持てなくなってしまいました」
「何がよく手に取られるのかが、わからないところがあるんです。良い本を売りたいと、ずっと思っているんですけど……」
「書籍の売れ行きは年々落ちてきているけど、書店なんだから本を置かないとね」

こうした話が随所に出てくる。それでも、地元ゆかりの本を置いたり、文具や雑貨を販売したり、様々な工夫をして本屋が生き残っているのであった。

2013年7月15日、ころから、1600円。

posted by 松村正直 at 23:38| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月10日

オンライン講座「短歌のコツ」

今月から月に2回、NHK学園のオンライン講座「短歌のコツ」を行っています。次回は7月29日(木)19:30〜20:45(75分)です。

https://coubic.com/ngaku-online/829301

初心者からベテランの方まで、どなたでも楽しんでいただける内容となっています。興味のある方は、ぜひご参加ください。

posted by 松村正直 at 22:17| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月09日

48歳 vs 51歳

将棋の王座戦の挑戦者決定戦は、木村一基九段と佐藤康光九段で争われることになった。年齢で言えば48歳対51歳。どちらが挑戦者になったとしても、すごいことだ。

今年の王座戦は、藤井二冠、豊島竜王、渡辺名人といった強豪が本選の1、2回戦で相次いで敗れる波乱の展開。

永瀬拓矢王座は28歳。タイトル戦五番勝負が楽しみになってきた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/

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2021年07月08日

『駅へ』Kindle版の発売

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今年20年ぶりに復刊した『駅へ』(野兎舎)の Kindle版が発売されました。紙の本より少し安くなっています。電子書籍となってまた新たな読者と出会えますように。

『駅へ』Kindle版(amazon)

紙の方も引き続き「野兎舎」のオンラインストアにて販売中です。
https://yatosha.stores.jp/items/600d346831862555b743dcdb

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2021年07月07日

乾 醇子歌集『夕陽のわつか』

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「パンの耳」の仲間である乾醇子さん(ヤママユ)の第2歌集『夕陽のわつか』(本阿弥書店)が刊行された。久々湊盈子さん、萩岡良博さんとともに栞文を書かせていただいている。

鴨たちの集まる川面のきらめきに昨日の疲れの消えてゆきたり
咲き初めし白梅の小枝あしらはれ西京漬けの鰆が並ぶ
毀たるる家はガ音に響きつつ楽しさうなり柱も壁も
相槌はふーんで終はる三人の息子それぞれトーン異なる
一夜にて黄葉すすみし御堂筋昨日の私にもどしてほしい

2021年7月21日、本阿弥書店、2700円。

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2021年07月06日

田村元歌集『昼の月』

著者 : 田村元
いりの舎
発売日 : 2021-06-28

2012年から2020年までの作品337首を収めた第2歌集。
サラリーマンの哀歓を詠んだ歌とお酒や飲食に関する歌が中心。
妻を詠んだ歌にも印象的なものが多かった。

ふたりとも「田村」の判を押し終へて離婚届を折りたたみたり
サラリーマンは太鼓持ちではないけれどときをり持ちて叩くことあり
黒豆が黒豆せんべいから落ちて秋の底へと転がりゆけり
エレベーターわが前へ昇り来るまでを深き縦穴の前に待ちをり
おでん屋の湯気にわれらも茹でられて竹輪とがんもになりて別れる
常夜灯ともして妻のゐない夜もベッドの片側空けて眠りぬ
日めくりの厚みが壁に突き出して仕事始めのうどん屋しづか
菊の花二輪が皿に咲いてをり〆鯖がわれに食はれたるのち
辛口の「谷川岳」を北に置きわがテーブルは関東平野
テーブルでMacの画面ひらくとき妻のMacの背と触れ合ひぬ

1首目、離婚する時点ではまだ同じ姓なのだが奇妙な感じを受ける。
2首目、上司や得意先の機嫌を取らなくてはならないこともある。
3首目、「秋の底」が黒豆の「黒」と響き合って深さを感じさせる。
4首目、扉が閉まっているので感じないが、落ちたら死ぬ深さだ。
5首目、「竹輪とがんも」に上機嫌のほろ酔い気分が表れている。
6首目、ダブルベッドに広々寝ても構わないのだが、そうはしない。
7首目、まだ1月なので日めくりは箱のような厚みと存在感がある。
8首目、もともと皿にあったのだが、食後に目に付くようになる。
9首目、群馬出身の作者らしい歌。関東平野を俯瞰するような視点。
10首目、向かい合ってパソコンを開く場面。妻との距離感が新鮮。

2021年6月22日、いりの舎、2500円。

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2021年07月05日

田口朝子歌集『朝の光の中に』

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田口朝子さんの第1歌集『朝の光の中に』が刊行されました。
ご縁があって解説を書かせていただいてます。

水槽をのりこえ蛸はゆかむとすたこよここから海は遠いよ
切られし首つながれ苔の生えてをり廃仏毀釈の名残りといひて
花ばさみ庭のどこかに置き忘れその夜しづかに雨降りはじむ
十二年電池残量あるといふペースメーカーが私を刻む
いけばなは花の命をもらふこと私の中に花が入り来る

2021年6月22日、青磁社、2500円。

posted by 松村正直 at 19:38| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月04日

カベルナリア吉田『肉の旅』


副題は「まだ見ぬ肉料理を求めて全国縦断!」。

全国各地の名物肉料理を食べ歩く旅行記。カラー写真が豊富に載っていて、食欲をそそられる。

登場するのは、トンテキ(四日市)、イルカ・クジラ(太地)、竜田揚げ(法隆寺)、肉じゃが(舞鶴・呉)、焼き鳥・せんざんぎ(今治)、唐揚げ(中津)、すっぽん(安心院)、チキン南蛮(延岡)、鶏飯(奄美大島)、ステーキ・山羊汁(沖縄)、ローメン(伊那)、ソースかつ丼(駒ヶ根)、おたぐり・焼肉(飯田)、パイカ(三沢)、馬肉・とりもつラーメン(新庄)、やきとり(室蘭・美唄)、がんがん鍋(赤平)、なんこ(歌志内)、ポークチャップ(砂川)、ジンギスカン(滝川)、サフォークラム(池田)、ザンギ(釧路)などなど。

肉料理を食べるだけではなく、各地を旅して著者は日本の現状を目の当たりにする。

人気の店めがけて脇目もふらず行列に並び、ほかの店を探すことはしない。ツマらなくなったね日本人。
東京に一極集中し、寂れていく地方。沖縄も、人もモノも那覇に集中し、宜野湾など近郊都市ですら寂れていく。
昨今はハコ物にゆるキャラ、歯抜けのテナントビル―。地方は本当に大変だが「アソコガ成功したからマネしてウチも」では絶対うまくいかない。

ネットの情報だけに頼って旅をする観光客、全国的にも地域的にも(世界的にも?)進む一極集中、そして地方の町おこしの難しさ。長年にわたって旅を続けている著者だからこそ気づく点も多い。

最近はテレビも雑誌もネットもグルメ「情報」だらけでウンザリしているので、あえて見せ情報はほとんど載せなかった。

確かにこの本はグルメ情報誌ではない。肉を食べ、店の人と語り、現地に行って自分の目で見つけたものを追求する。そんな著者の旅のあり方を見せてくれる一冊である。

2016年8月8日、イカロス出版、1600円。

posted by 松村正直 at 09:42| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月03日

旧室蘭駅

本を読んでいたら、昨日のブログで少し触れた旧室蘭駅のことが出てきた。

室蘭駅は北海道炭礦鉄道の駅として明治25年開業。ここに残る駅舎は明治45年築で、北海道の駅舎では最古の木造建築物なのだ。寄棟造に破風を配した入母屋風。白漆喰の外壁は西洋モダンの気品を漂わせ、風格がありカッコいい。
           (カベルナリア吉田『肉の旅』)

こういう偶然は嬉しい。

旧室蘭駅にはいつか行ってみよう。
偶然の導くところには、きっと何かがある。

posted by 松村正直 at 09:25| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月02日

映画「モルエラニの霧の中」

監督・脚本:坪川拓史
出演:大杉漣、大塚寧々、香川京子、小松政夫、坂本長利、水橋研二、菜葉菜ほか

「モルエラニ」はアイヌ語で「小さな坂道を下りた所」の意味で、室蘭の語源にもなった言葉だそうだ。

室蘭在住の監督が、室蘭市民の協力も得ながら室蘭で撮影した作品。冬、春、夏、晩夏、秋、晩秋、初冬の全7篇から成り、それぞれの物語は緩やかなつながりを持っている。

214分という長尺の映画で、前半3篇が終ったところで10分間の休憩があった。

何らかの欠落や喪失を抱えた人物が織り成す物語が、モノクロとカラーの映像で描かれていく。現実、幻想、過去、写真、記憶、夢などが交差して不思議な味わいを感じさせる。

現実の世界では亡くなった大杉漣や小松政夫が生きていることも、この映画にはふさわしいように思われた。

室蘭市青少年科学館の蒸気機関車「D51 560」は、映画ではスクラップにされる運命になっていたが、実際は旧室蘭駅舎公園(ぽっぽらん公園)に移設されて展示されているらしい。一度会いに行きたい。

214分、京都みなみ会館。

posted by 松村正直 at 18:47| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月01日

オンライン講座「短歌のコツ」

7月から月に2回、NHK学園のオンライン講座「短歌のコツ」を行います。全6回のコースの他に1回ごとの受講もできますので、お気軽にお申込みください。

各回75分の講座で、前半は毎回一つのテーマを決めて話をし、後半は参加者の歌の批評・添削を行います。初心者からベテランの方まで、歌歴を問わずどなたにもお楽しみいただける内容です。

■日程・時間(全6回)
7月 8日(木)19:30〜20:45
7月29日(木)19:30〜20:45
8月 5日(木)19:30〜20:45
8月26日(木)19:30〜20:45
9月 9日(木)19:30〜20:45
9月30日(木)19:30〜20:45

お申込みは下記のページから。

■短歌のコツ講座(全6回セット)
https://coubic.com/ngaku-online/804470
■短歌のコツ講座(7月8日単発)
https://coubic.com/ngaku-online/503310

よろしくお願いします!

posted by 松村正直 at 07:11| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする