2021年05月31日

雑詠(005)

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腹を、切り、裂かれ、卵を、取り、出され、砕かれ、肥料となる鮭の雌
いちどきに咲いたばかりに枯れ果てて躑躅おまえもかわいそうだね
いつだってほんとうのことは生きたまま蟻にたかられゆくカブトムシ
中庭を出られず歩きまわるひと忘れものしたことも忘れて
白、黄色、茶色、水色 ひとことで言えば五月の新緑のやま
おもしろくもないって顔でベローチェにわたしをずっと見ている赤子
心臓の奥に今でも観覧車まわるのだろうひとりひとつの

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2021年05月30日

石松佳詩集『針葉樹林』

著者 : 石松佳
思潮社
発売日 : 2020-12-10

第57回現代詩手帖賞を受賞した作者の初めての詩集。
第71回H氏賞受賞。

ふだん現代詩を読むことはあまりないのだが、葉ね文庫で見かけて購入した。

わたしは今まで、軽やかな田園というものを見たことがなかった。胸に広がる水紋は、どれもひとしく苦しい。(「田園」)
試合は閉じられる
すると大きい川が現れて
球児たちが一斉にその縁に
歯のように並び
川に向かって一礼をした
(「sad vacation」)
四川料理店で女性が、昼に向かって口笛を吹いている。曲の名を尋ねたら、水禽、と言って笑った。(「野鳥のこと」)
息を吹きかければ
硝子窓が曇る
生きることは衣服のように白い
(「雪」)

心惹かれる魅力的なフレーズがいっぱいある。言葉と言葉のつなぎ方やイメージの展開の仕方など、現代詩から学べることはたくさんありそうだ。

2020年11月30日、思潮社、2000円。

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2021年05月29日

「はじめての短歌」申込受付中

NHK学園でZoomを使ったオンライン講座「はじめての短歌」を行います。毎週木曜日(全4回)19:30〜20:45です

・1回目 6月 3日「短歌の基本」
   歴史、定型、韻律、題材、文語・口語、かな遣い
・2回目 6月10日「作者と読者」
   詠みと読み、省略と想像力、短歌はマッチ棒
・3回目 6月17日「表現のコツ」
   語順、「てにをは」、打消、比喩、固有名詞など
・4回目 6月24日「生活と人生」
   日常の豊かさ、家の中のもの、身近な風景

https://www.n-gaku.jp/life/topics/6000
https://coubic.com/ngaku-online/676751

初心者の方も長年短歌をやっている方も大歓迎です。
興味のある方はぜひご参加ください。

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2021年05月28日

瀧口夕美『民族衣装を着なかったアイヌ』

takiguchi.png

副題は「北の女たちから伝えられたこと」

阿寒湖畔のアイヌコタンの土産物店に生まれ育った著者が、様々な人への聞き取りを通じて自らのルーツとアイデンティティを模索・確認していく物語。

「観光」が大嫌いだった私には、この「神秘」のマリモほど陳腐なしろものはなかった。おみやげマリモがまとう陳腐さが、観光地で暮らす自分に重なる。
わたしは自分自身のルーツとして、アイヌのことがものすごく気になりながらも、アイヌ民族というものと、現代のアイヌである自分自身との距離がずっとつかめずにいた。

観光地で生まれ育ったことに居心地の悪さを感じていた著者は、自らのルーツであるアイヌをどう受け止めればいいのか悩む。そんな彼女の心をほぐし励ましてくれたのは、北海道やサハリンで生きる女性たちであった。

母の瀧口ユリ子(アイヌ)、北川アイ子(ウイルタ)、金玉順(サハリン残留朝鮮人)、マリア・セルゲイブナ(金山秀子、サハリン残留日本人)、長根喜代野といった「北の女たち」の人生は、国境や民族といった枠を越えて強烈な印象を残す。

差別があった、抑圧があった、それに対してアイヌは闘ってきた。それはいわば外向けの語りであって、人は普段から、たとえば身内の人間に対して、つねにこういう話し方をするわけではない。

民族や国家などの大きな歴史と並行して存在する無数の個人の歴史。その両方を見ていかなければ、本当の意味で歴史を知ることにはならないのだろう。

十数年の時間をかけて出来上がったこの本には、著者の思索や眼差しの深まりがよく表れている。書かれるべき一冊、生まれるべき一冊だったのだと強く思う。

2013年6月15日第1刷発行、2021年2月22日第4刷。
編集グループSURE、2500円。

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2021年05月27日

映画「街の上で」

監督:今泉力哉
脚本:今泉力哉、大橋裕之
出演:若葉竜也、穂志もえか、古川琴音、萩原みのり、中田青渚ほか

下北沢の町を舞台にした青春群像劇。魚喃キリコの漫画が出てくると聞いて見に行った。

登場人物の会話がとても自然な感じで、古着屋、古本屋、ライブハウス、ラーメン屋、小劇場、バー、カフェなど街の風景にも惹かれる。

中学・高校時代は遊ぶと言えば下北沢だったし、大学時代は下北沢の近くに住んでいたこともあって、いろいろと懐かしい。

見ていて今年1番の作品と思ったのだけど、終盤の展開がマンガチックなのが今ひとつ。別にすべての話題を回収しなくてもいいのにな。

でも、おススメ。

出町座、130分。

posted by 松村正直 at 10:25| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月26日

野澤亘伸『師弟』


副題は「棋士たち 魂の伝承」。
2018年刊行の単行本の文庫化。巻末に文庫版特別鼎談「おらが弟子自慢」を収めている。

6組の棋士の師弟に取材して、棋士人生や師弟関係のありようを描いたノンフィクション。登場するのは「谷川浩司・都成竜馬」「森下卓・増田康宏」「深浦康市・佐々木大地」「森信雄・糸谷哲郎」「石田和雄・佐々木勇気」「杉本昌隆・藤井聡太」。

プロ棋士の養成機関である「奨励会」に入るには、棋士の誰かに入門する必要がある。

奨励会の試験は毎年8月に行われ、全国から「天才」と呼ばれた子どもたちが集まる。合格率は約3割。しかし、本当に厳しいのは入会後にプロになるまでの過程である。合格した子どもの約8割が、年齢制限までに規定の段位に達することができないか、自分の才能に限界を感じて辞めていく。

何ともすごい世界だと思う。そうしてプロになっても、タイトル争いに絡むことができる棋士はほんの一握りだ。

杉本 教室の生徒なら、こちらも一生その子と付き合えますが、奨励会に入りたいと言われてしまうと、ただでは済まない。棋士になって一生付き合うか、途中で辞めて違う道に行くかの二つに一つでしょうから。そう言った意味で師匠をお願いされるときには、非常に複雑な気持ちになることが多いです。

6組の師弟の関係は一様ではないが、世代の異なる二人が交わることによって、互いの人生が変化していく。その人間ドラマを、本書は見事に描き出している。おススメ。

2021年2月20日、光文社文庫、680円。

posted by 松村正直 at 22:18| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月25日

井澗裕編著『稚内・北航路』


ブックレットボーダーズ3。
副題は「サハリンへのゲートウェイ」。

稚内とサハリンの歴史的な結び付きや、日ロの交流と国境観光の地としての魅力を記した一冊。

稚内は「日本のさいはて」というイメージが強いが、サハリンへの玄関口という見方もできる。

北海道内の「隣りの市」と言っても、オホーツク海側の紋別市が約二一〇キロメートル、日本海側の留萌市が約一九〇キロメートル、内陸の名寄市が約一七〇キロメートルだ。眼を転じて宗谷海峡を越えると、コルサコフ市が航路の距離で約一五八キロメートルと、余程近い位なのだ。

2015年の夏に私がサハリンへ行った際には、稚内からフェリーでコルサコフへ渡った。けれども、ハートランド社はこの年で撤退。2019年以降は定期航路が休止状態となっている。
https://www.city.wakkanai.hokkaido.jp/sangyo/saharin/

定期航路は本来、ノンパワー・セキュリティ(武器なき平和)の根幹である。コミュニティが健全であるための第一原則は「隣近所と行き来がある」「顔を知っている」ということだ。

なるほど、そうだなと思う。コロナ禍が終息したら、何とかまた定期航路を復活させてもらいたいものだ。

2016年7月10日、NPO法人国境地域研究センター、900円。

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2021年05月24日

かのよしのり『歩兵の戦う技術』


副題は「銃弾や砲弾が飛び交う戦場で勝利して生き残る」。

元陸上自衛官の著者が、現代の歩兵の基本的な点についてコンパクトにまとめた一冊。

「「歩兵」とは何か?」「歩兵の個人装備の重量」「兵站とは?」「匍匐前進」「行軍の速度」「地雷の処理」「防御は何のためにするのか?」「雪中カモフラージュ」「偵察と斥候」といった項目について、それぞれ文章1頁+図版1頁で解説している。

著者は「はじめに」の中で「国家主権とは軍事力を行使する権利にほかならないからです。ですから、民主主義すなわち国民が主権者であるということは、国民が軍事力の担い手であるということにほかなりません」と書いている。

賛否両論ある意見だと思うが、理屈としてはその通りだろう。戦争に反対する人も、軍事に関する知識は持っておくに越したことはない。

国から支給されるものを官給品といいます。英語ではガバメントイシューといいますが、これを略してGIといいます。兵隊のことをGIというのは、全身を官給品で包んでいることからきています。
戦争全体から見ると、この兵站活動こそが戦争の主体で、前線での戦闘などは、兵站という巨大な剣がぶつかり合って出ている火花にすぎないとさえいえます。
缶詰めは発明されたのに、缶切りが発明されるのはその48年も後で、それまで缶を開けるにはノミとハンマーが必要でした。
21世紀になって、偵察に用いる小型のドローンが歩兵部隊にまで配備されるようになりました。米軍を例にとれば、歩兵小隊には、手で投げて発進させ、90分程度の偵察ができるドローンが装備されています。

戦争をするべきでないのは当然のこととして、一方で現代の軍隊がどのような組織や装備になっているかを知っておくのは大切なことだろうと思う。

2018年11月25日、SBクリエイティブ サイエンス・アイ新書、1000円。
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2021年05月23日

平岡直子歌集『みじかい髪も長い髪も炎』


第23回歌壇賞を受賞した作者の第1歌集。
339首を収めている。

こぼされてこんなかなしいカルピスの千年なんて見たことがない
きみの骨が埋まったからだを抱きよせているとき頭上に秒針のおと
ダウンジャケットいま転んだら12個の卵が割れてしまう坂道
飛車と飛車だけで戦いたいきみと風に吹かれるみじかい滑走路
死ぬことは怖いねふたりふたりって鳴る絨毯の上の足音
お母さんが編んだマフラーという生き物は英訳すると死んでしまうの
心臓と心のあいだにいるはつかねずみがおもしろいほどすぐに死ぬ
三越のライオン見つけられなくて悲しいだった 悲しいだった
洗脳はされるのよどの洗脳をされたかなのよ砂利を踏む音
朝にとどくものたちはみな遠くからくる遠くから朝刊がくる
観客はじゃがいもと言われたじゃがいもの気持ちを考えたことがあるのか
カゲロウの背骨のような縫い針が秋に一本置き去られたり

1首目「こ」「こ」「か」「カ」の響き。三句で軽く切れると読む。
2首目「骨が埋まった」という見方が鋭い。下句、時限爆弾みたい。
3首目、ダウンジャケットのもこもこ感を、卵パックに喩えている。
4首目、相手と真っ直ぐに向き合う心情や関係。小細工せずに潔く。
5首目「ふたり」が「二人」でありまたオノマトペにもなっている。
6首目、他人から見れば普通の使い古されたマフラーに過ぎない。
7首目、どちらも英語ならheart。その狭間に感情や魂が明滅する。
8首目、待ち合わせによく使われるライオン像。下句の破格の強さ。
9首目、生きることは何かに洗脳されることだという把握が印象的。
10首目、目覚めの光や風をイメージさせてから朝刊という具体へ。
11首目、人前であがらない方法。確かにじゃがいもには失礼な話。
12首目、初二句の比喩によって、存在しないカゲロウが生まれる。

どのように読んだら良いか迷う歌も多い一方で、強く印象に残る歌もたくさんあった。

2021年4月26日、本阿弥書店、2000円。

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2021年05月22日

オンライン講座「はじめての短歌」

オンライン短歌ご案内.jpg


6月にNHK学園でZoomを使った短歌初心者向けのオンライン講座「はじめての短歌」を行います。

ご興味のある方は、ぜひご参加ください。
毎週木曜日の夜、全4回の講座です。

https://coubic.com/ngaku-online/676751
https://www.n-gaku.jp/life/topics/6000

1回ごとの申込みも受付けております。
(今のところ1回目2回目の分が掲載されています。3回目4回目の分も、後日追加されます)

6月3日
https://coubic.com/ngaku-online/642010
6月10日
https://coubic.com/ngaku-online/723137

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2021年05月21日

映画「狼をさがして」

監督・製作:キム・ミレ
出演:太田昌国、大道寺ちはる、荒井まり子、荒井智子、浴田由紀子、内田雅敏、宇賀神寿一ほか

1970年代に三菱重工本社ビル爆破事件などを起こした「東アジア反日武装戦線」についてのドキュメンタリー。原題はそのまま「The East Asia Anti-Japan Armed Front」。

20代の頃に松下竜一『狼煙を見よ』を読んで以来、彼らにはずっと関心を持ち続けてきた。

今回、右翼団体の妨害によって上映が中止になるなどの騒ぎが起きている。それは取りも直さず、彼らの提起した問題が今も解決されずに残っているということなのだと思う。

戦時中の徴用工による訴訟は続き、アイヌ差別も解消されていない。外国人労働者や入管の問題も同じ文脈で捉えることができるだろう。彼らが自ら名乗った「反日」という言葉は、現在しばしば他者へのレッテル貼りに使われるようになっている。

死刑判決を受けたまま獄中で亡くなった大道寺将司は俳句を詠んでいた。2013年に句集『棺一基』が第6回日本一行詩大賞を受賞したのだが、同時受賞が永田和宏歌集『夏・二〇一〇』であった。授賞式で太田昌国さんと話をしたのが懐かしい。

京都みなみ会館、74分

posted by 松村正直 at 06:59| Comment(2) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月20日

たいたい歌

このところ、「〜したい」という言い方が短歌に増えてきているように思う。1首に1回だけでなく2回出てくることもある。

今すぐに帰って猫をさわりたい今を今すぐ反芻したい
             山川藍『いらっしゃい』
死ぬまでが暇だな 歌をうたひたい花の名前をもつと知りたい
             逢坂みずき『虹を見つける達人』
いちめんのたんぽぽ畑に呆けていたい結婚を一人でしたい
             北山あさひ『崖にて』
将来は強い恐竜になりたいそしてかわいい化石になりたい
             工藤玲音『水中で口笛』
友だちに会いたい 会って野ざらしの畳の上で花見がしたい
             谷川由里子『サワーマッシュ』

願望の畳み掛けに迫力があるのだけど、願いの強さを表しているというよりも、少し投げやりな気分を表している感じがする。

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2021年05月18日

「短歌研究」5月号の増刷

「短歌研究」5月号が創刊以来90年で初めて増刷になったということで話題を呼んでいる。

https://www.asahi.com/articles/ASP5K541YP5HUCLV002.html?twico

「三〇〇歌人新作作品集」には私の歌も載っているので、基本的にはめでたく、嬉しいことだと思う。でも、ちょっと立ち止まって考えたいことがある。

一つは「初めての増刷」=最大の売上、ではないということだ。記事には「初刷り4千部に500部を増刷した」とあって、そんなに少ない部数なのかと逆に驚いた次第である。年々雑誌の販売数が減っているのは知っていたが、ここまでの落ち込みようだとは思わなかった。

例えば結社誌「塔」でも1300部くらいは刷っているので、その3倍しかないと考えれば総合誌の部数の少なさがわかるだろう。

もう一つは、今回の特集が300名の作品を羅列した(だけの)ものである点である。正直なところ、これで売れるのだったら編集のアイデアなど何も必要ないではないか、との思いが拭えない。

もちろん、喜ぶべきことだとはわかっている。わかってはいるのだけど、このモヤモヤ感はどうしたものだろう。

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2021年05月17日

本郷・湯島・上野

今日は本郷・湯島・上野を2時間ほどかけて散策した。

丸ノ内線の「本郷三丁目駅」で降りて、しばらく本郷界隈を歩き回ってから、湯島の切通しを抜けて、不忍池を経てJR「上野駅」へ。

東京は台地と谷と坂でできていることが、歩くと実によくわかる。

東京に住んでいた頃はいつも電車や地下鉄に乗っていて、歩いて移動することが少なかった。やっぱり歩かないと東京の面白さはわからないんだなと実感した。

posted by 松村正直 at 23:46| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月16日

オンライン講座「はじめての短歌」

6月にNHK学園でZoomを使った短歌初心者向けのオンライン講座「はじめての短歌」を行います。

https://coubic.com/ngaku-online/676751
https://www.n-gaku.jp/life/topics/6000

ご興味のある方は、ぜひご参加ください。
毎週木曜日の夜、全4回の講座です。

■日程・時間(全4回)
@ 6月 3日(木)19:30〜20:45
A 6月10日(木)19:30〜20:45
B 6月17日(木)19:30〜20:45
C 6月24日(木)19:30〜20:45

1回ごとの申込みも受付けております。
(今のところ1回目2回目の分が掲載されています。3回目4回目の分も、後日追加されます)

6月3日
https://coubic.com/ngaku-online/642010
6月10日
https://coubic.com/ngaku-online/723137

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2021年05月15日

木村元彦『13坪の本屋の奇跡』


副題は「「闘い、そしてつながる」隆祥館書店の70年」。

大阪の谷町6丁目にある隆祥館書店と経営者の二村善明・知子親子を描いたドキュメンタリー。「町の本屋」が次々と廃業していく中にあって、70年以上も営業を続けている秘密に迫っている。

全国の書店数は、この20年間に約22000店から11000店に半減している。店舗を構えている書店に限れば既に1万店を割っているのが現状だ。

その背景には出版不況や活字離れ、アマゾンを始めとしたネット通販の台頭などがあるのだが、それだけではない。大手2社の寡占体制になっている取次など、出版流通をめぐる構造的な問題がいくつも存在している。

二村親子は長年にわたって、同日入帳、ランク配本、見計らい配本など、中小の書店にとっての死活問題の改善に取り組んできた。また、2011年からは「作家と読者の集い」を260回以上にわたって続けている。

地域に書店のあることは、文化の発信地として、また人々の交流の拠点として、とても大きな意味を持っている。

私の生まれ育った町にも、駅前に大塚書店(ブックス飛鳥)・富士見堂・玉川学園購買部・久美堂などがあり、電車通学の帰りにいつも立ち寄っていた。思えばそうした環境が本を読む習慣につながったのである。

2019年11月25日、ころから、1700円。

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2021年05月14日

映画「海辺の彼女たち」

脚本・監督:藤元明緒
出演:ホアン・フォン、フィン・トゥエ・アン、クィン・ニューほか

技能実習生として日本にやってきた3名のベトナム人女性の物語。過酷な労働環境や不法就労の問題が浮き彫りになる。予告編を見てドキュメンタリーかと思っていたのだがそうではなく、取材に基づいたドラマであった。

雪深い港町の風景が印象に残る。

以前私が働いていた物流倉庫やプラスティック成型工場でも、ベトナム人や中国人の研修生が働いていた。外国人労働者の数は2019年時点で約165万人、そのうち技能実習生は約38万人にのぼる。

こうした人々の働きがなければ、既に私たちの生活は成り立たなくなっているという現状があるのだ。

京都シネマ、88分。

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2021年05月13日

アレックス・カー『ニッポン巡礼』


白洲正子『かくれ里』に影響を受けた著者が、全国各地にある素敵な場所を訪ね歩き、日本の歴史や観光のあり方について考察した一冊。

取り上げられているのは、「日吉大社、慈眼堂、石山寺」「羽後町田代、阿仁根子」「能登半島」「八頭町、智頭町」「奄美大島」「萩」「三井寺」「南会津」「青ヶ島」「三浦半島」の全10か所。

こんなふうに全国各地をめぐるタイプの本は、見つけるといつも買ってしまうな。

日本はよく「木の文化」と称されますが、実は「石の文化」でもあります。殊に古代神道における石への崇拝は根強く、神社を訪れることは石との出会い、といっても過言ではありません。
東京を中心にした現代の感覚では、輪島は「遠い」場所で、この地で洗練された漆器類が生産されることは不思議に思われがちです。しかし、視点を変えれば、能登半島は昔の日本列島の航路における要衝の地と、とらえることができます。
「草の生えた屋根」は決して古式というわけではなく、エコロジカルな意味で最先端ととらえることもできます。近年では小さなデザイン住宅から巨大な工場まで、雑草や芝生を屋根や屋上に生やす試みを、世界各地で見ることができます。

半世紀近くにわたって日本を見てきた著者は、美しい風景を愛するだけでなく、土建国家日本の公共事業や、近年のオーバーツーリズム、インスタ映え等に対する危惧を、繰り返し指摘している。

私たちの観光も、将来を見据えて持続可能なものに変えていく必要があるのだろう。

2020年12月22日、集英社新書ヴィジュアル版、1400円。

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2021年05月11日

鈴木ちはね歌集『予言』

書肆侃侃房
発売日 : 2020-08-05

第2回笹井宏之賞大賞受賞。314首を収めた第1歌集。
言葉の繰り返しがうまく使われている。

不動産屋の前に立ち止まって見ていると不動産屋が中から見てくる
重要だから赤いペンキで書いたはずなのにそこだけ読めないみたいな
パンクしてしまった自転車を遠い記憶のように押して帰った
駅の手前で止まってしまう地下鉄のずっと見ているトンネルの壁
橋を架けなおすために橋をこわすために仮の橋をいま架けてるところ
全体重でドアを押しあけ物心ついたばかりの人が出てくる
山眠る よく燃えそうな神社へと人びとの列ときどき動く
東京にオリンピックがやってくるパラリンピックもおまけにつけて
有識者会議の机上いちめんに有識者の数だけの伊右衛門
保留音の小さな世界の二周目が終わって三周目が流れだす
靴べらで靴へと足を流しこむ こういう時間の先に死がある
ライターで手持ち花火に火をつける ついたら急に明るい更地

1首目、一つ目の「不動産屋」は建物を、二つ目は人を指している。
2首目、黒ペンキより赤ペンキの方が色褪せやすくて逆効果になる。
3首目、長々と重い自転車を押して帰る時のやるせない気分が滲む。
4首目、普通の電車であれば止まっても風景が動くから良いのだが。
5首目、橋の架け替えでは確かにこういう手順で工事が進んでいく。
6首目、「物心ついたばかりの人」がいい。幼稚園児くらいの子か。
7首目、冬の季語を使っているので初詣の場面だろう。下句がいい。
8首目、常に付きまとう「おまけ」の感じをはっきりと言い切った。
9首目、ニュースでよく映る光景。「伊右衛門」の人名感が効果的。
10首目、「小さな世界」は曲名だが、世界を三周しているみたい。
11首目、動詞「流しこむ」がいい。下句がハッとさせられる把握。
12首目、花火の美しさでなく照らし出された更地の姿に目が向く。

2020年9月14日第2版、書肆侃侃房、1900円。

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2021年05月10日

文学フリマ東京

5月16日(日)に開催される第32回文学フリマ東京に出店します。
https://bunfree.net/event/tokyo32/

緊急事態宣言下ということで参加するか迷ったのですが、
さまざまな状況を考慮して決断しました。

ソ‐09「やさしい鮫」で、私の歌集・歌書および同人誌「パンの耳」1〜4号を販売します。どうぞお立ち寄りください。
https://c.bunfree.net/c/tokyo32/!/%E3%82%BD/9

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2021年05月09日

古川浩司・ルルケド薫編著『知っておきたいパラオ』


ブックレット・ボーダーズ7。
副題は「ボーダーランズの記憶を求めて」。

このところパラオに対する関心がぐいぐいと高まっている。かつて南洋群島として日本の委任統治下にあった歴史や、中島敦の足跡、ペリリュー島の戦跡、そして現在のパラオの置かれている状況など、興味は尽きない。

旅行業界はマスツーリズムで成り立っている。(…)隣のグアムが安近短のマスツーリズムであるのに対し、パラオは、以前からダイビングスポットのメッカであり、ある意味では、エコツアーを実践してきたデスティネーション(目的地)でもある。
仕事の後、飲みに行くことをパラオでは、ツカレナオス(疲れ治す)と言います。そこから派生して、ビール自体のことを、そう呼ぶこともあります。
時代が変わり簡素化してくる伝統儀式が多いなか、パラオの葬送は、ご遺体の冷凍という新時代の技術を取り入れて、伝統より長く大きくなっているのは興味深い。その理由は、香典が葬儀費用の大部分を担うため、給料日を待ったり、海外からの参列者を待っているからである。
日本統治の名残りが顕著なのは、一部の州憲法だろう。パラオ語で、憲法はKempoと言う。アンガウル州憲法は第一二条(A)で公用語の一つに日本語を定めている。

海外旅行に行けるようになったら、ぜひ一度訪れてみたいと思う。
2018年に運航休止になってしまった日本からの直行便が復活してくれると良いのだけど。

2020年8月10日、国境地域研究センター、900円。

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2021年05月08日

北田博充『これからの本屋』


本に関わる仕事を長く続けている著者が、本屋の現状や将来について考察した一冊。

「ていぎする」「くうそうする」「きかくする」「どくりつする」の四章から成っていて、書店員へのインタビュー、架空の本屋の物語、本を売るための企画など、様々な角度から本屋の今後について迫っている。

本が売れない時代だからこそ、新しい読者を増やさなければならないのは当然のことだが、そもそも本を読まない人は本屋に足を運ばない。本屋の中で奮闘することが重要なのは言うまでもないが、本が本屋の外に出向いていくことも同じくらい重要なことだ。
人はその店で買い物をすれば、その店のことをよく覚えているものだ。逆に、買わなかった店のことはすぐに忘れてしまう。だから、お客さんに再来店してもらおうと思えば、何でもいいから一冊買ってもらうことが大事なのだ。
今なんとなく感じているのは、「本を売ること」だけが本屋を定義するものではない、ということだ。本屋という名称は「場所」をさす言葉ではなく、「人」をさす言葉なのではないだろうか。

本屋を取り巻く状況は年々厳しくなっていくばかりだ。著者が2013年の立ち上げから2016年まで勤めた「マルノウチリーディングスタイル」も、先月閉店した。本屋の存在しない世界が、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。

2016年5月1日、書肆汽水域、1200円。

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2021年05月07日

林和清歌集『朱雀の聲』

著者 : 林和清
砂子屋書房
発売日 : 2021-03-17

357首を収めた第5歌集。
第一部には2020年3月以降、コロナ禍をリアルタイムで詠んだ歌100首が収められている。

あたらしい仏像怖し牛乳のやうに生なまとなめらかな皮膚
何を見ても他人がうらやましく思ふ咲けばさくらの幹くろくなる
一日がちぢまつてゆくちかちかと赤いのはカナメモチの生垣
失つた空腹もとめて歩いてゐる出口ばかりのしづかな街を
ずつとゐると妻の機嫌の満ち引きの潮目がわかる今日は小満
あんたかて殺されたことあるやろと鵺は言ふ鵺は人肌をして
若きらの談笑を背で聞きながら蛸のからだの一部を嚙みをり
うつかり歳を取つてしまつて萩の散る朝の路面に佇つこともある
一度あがつた雲雀はかならず降りてくる巣からはすこし離れた土に
ほんものかさうでない煙草を吸ふ者ら疎らに群れて宙を見てゐる

1首目、「牛乳のやうに」が効いている。これが本来の姿なのだ。
2首目、上下句の取り合わせがいい。花びらとの対比で黒く見える。
3首目、コロナ禍の日々。「ち」「か」の音の繰り返しが効果的。
4首目、「失った空腹」「出口ばかり」にコロナ禍の気分が滲む。
5首目、機嫌が少し良くなってきたのだろう。潮目を読むのが大切。
6首目、上句の京都弁が何とも言えず怖い。伝説の怪物である鵺。
7首目、若者たちの談笑の輪にはもう入っていけない寂しさが滲む。
8首目、「うつかり」が面白い。ふと自分の年齢に驚くことがある。
9首目、降りる雲雀なのが新鮮。外敵に巣が発見されないように。
10首目、喫煙所の光景。電子タバコや加熱式タバコの人もいる。

2021年3月22日、砂子屋書房、3000円。

posted by 松村正直 at 07:40| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月05日

映画「緑の牢獄」

監督:黄インイク

かつて日本の植民地であった台湾から西表島に移住し、炭鉱で働いていた人々がいた。両親に連れられて海を渡ってきた90歳の女性(橋間良子)の姿を映しつつ、忘れられた歴史を浮かび上がらせるドキュメンタリー。

西表島に炭鉱があったことをこの映画で初めて知った。国境や境界をめぐる問題としても興味深いし、一人の人間の人生ドラマとしても非常に心に滲みる内容であった。最後のシーンが特に印象的。

京都シネマ、101分。

posted by 松村正直 at 07:45| Comment(4) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月04日

NHK学園のオンライン講座

来月、Zoomを使った短歌初心者向けのオンライン講座を行います。
毎週木曜日の夜、全4回の講座です。

■日程・時間(全4回)
@ 6月 3日(木)19:30〜20:45
A 6月10日(木)19:30〜20:45
B 6月17日(木)19:30〜20:45
C 6月24日(木)19:30〜20:45

5月7日より受付が始まりますので、ご興味のある方はぜひお申込みください。

https://coubic.com/ngaku-online/676751
https://www.n-gaku.jp/life/topics/6000

posted by 松村正直 at 23:18| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月03日

橋爪志保歌集『地上絵』

著者 : 橋爪志保
書肆侃侃房
発売日 : 2021-04-15

同人誌「羽根と根」などで活躍する作者の第1歌集。317首。

改札の前であなたと完全におんなじひとがほほえんでいる
風のなか本をひらけば花びらとともにさらわれてゆく正誤表
よせがきにきみが小さく描いてくれた舌のくるくるしたカメレオン
靴ひもをむすんで顔をあげたとき友だちとよべるひといなかった
ここへ来て一緒に濡れてほしいのにあなたは傘をたくさんくれる
かんたんなてんらんかいにゆきたいなみずうみに触るだけのてんらんかい
こよみではもう春だけど適当なお店で買ったタルトのまずさ
ピクルスをきみはパンから抜きとって花のまばらな川原へ放つ
いつまでも足を浸している銀のはしごはプールサイドの隅で
すぐいなくなる母だった 追いかけて転んだ傷がいまも手にある

1首目、「完全におんなじ」に、喜びや戸惑いなど心の揺れが滲む。
2首目、正誤表は小さな紙のことが多いので、よく紛失してしまう。
3首目、カメレオンが可愛らしい。「舌」と「した」が韻を踏む。
4首目、誰が友だちかあらためて考えると、けっこういないものだ。
5首目、やさしい人なのだけど、私が求めているのはそれではない。
6首目、音の響きに弾むような楽しさがある。ひらがなも効果的だ。
7首目、時候の挨拶の言葉から、三句以下へのつながり方が面白い。
8首目、ハンバーガーのピクルスが苦手なきみ。下句はア段の連発。
9首目、見立てが印象的。途中までしかない梯子の存在感が際立つ。
10首目、手にある傷よりも、きっと心に負った傷の方が深いのだ。

2021年4月7日、書肆侃侃房、1700円。

posted by 松村正直 at 10:43| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月02日

小嶋独観『奉納百景』


副題は「神様にどうしても伝えたい願い」。

願いごとを託し、あるいは願いが叶ったお礼に、神仏に物を供える。それが何百、何千と集まると、奇妙で圧倒的な光景が出現する。全国各地のそうしたスポットを訪れて紹介した一冊。

神木に打ち付けられた鎌、山のように積まれた牛の鼻輪、洞窟に差し込まれた刀、1万本以上ある鹿の角、畦道で結合する藁の性器、本堂に吊り下げられた死者の衣服など、どれもこれも凄まじい迫力だ。

それは人間の祈りの形ではあるけれど、さらに言えば人間の剝き出しの欲望や執念の姿でもある。美しさと醜さが入り混じっている。

民俗学・宗教学的な観点から見て印象的な話も多い。例えば「鮭千本供養」は、もともと鮭を千匹捕獲するたびに卒塔婆を一本立てる慣わしなのだが、

人工孵化によって遡上してくる鮭の数が桁違いに増えたのだ。かくして、数年あるいは数十年に一度だった鮭の供養塔も毎年のように建てられるようになったのである。

という状況になっている。供養すべき鮭の数が飛躍的に増えてしまったのである。

また、未婚で亡くなった子のための「婚礼人形」の奉納の背景には、

無縁仏とは、行き倒れや漂流死体もだが、その家の未婚で死んだ者や子を持たない者、そして幼児もそれに相当する。

という死生観があるのだという。つまり、早くに亡くなった子を家の祖霊として迎えるために、死後の婚礼を行っているのだ。そう考えると、何ともせつない気分になる。

2018年12月7日、駒草出版、1500円。

posted by 松村正直 at 17:14| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月01日

5月

今日から5月。

緊急事態宣言が出ていることもあって、ゴールデンウィークも特に予定がない。家で本を読んだり、原稿を書いたり、調べものしたり、校正したり、掃除したり、昼寝したり。

コーヒー→紅茶→番茶→コーヒー→紅茶・・・と、一日中なにか飲みながら作業している。座っている時間が長いので、腰痛に気をつけないといけないな。

posted by 松村正直 at 23:35| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする