2017年08月31日

遠藤由季歌集『鳥語の文法』


2010年から16年までの作品375首を収めた第2歌集。
冒頭に引っ越しの一連があり、何だか暗いトーンだなと思って読み進めていくと〈空の壜捨てるこころは痛みおり婚解きにゆく霜月の朝〉という歌があって事情がわかる。

コンビニに似た明るさの古書店で買いたり『和泉式部日記』を
艶やかなグランドピアノに負けぬよう肩剥き出しに女は弾けり
あばら骨状に並んだ団地見ゆ塗り替えられた白さ鋭く
ひつまぶし三種の食べ方楽しみて吐息のような白湯を飲みたり
駅頭に夜の花屋は開かれて影ごと花を売りさばきおり
分度器の薄れた目盛りを思い出す秋のひかりが睫毛に触れて
妙に軋む雨の日の椅子 売り上げと関わりあらぬデータ打ち込む
描かれた陽は透きとおる厚らかに塗り重ねたる油彩のなかに
鋭角に葱切りゆける包丁は大雪の夜に父が砥ぎたる
名刺として鱗いちまいずつ配り人に戻りて乗る銀座線

1首目、昔からある古書店は薄暗いが、ブックオフはとても明るい。そこで買うのが古典であるというのも、妙にちぐはぐな感じ。
2首目、「剥き出し」という語の選びに、女性であることの痛みを感じる。
3首目、「あばら骨状」がいい。地図などで見ると確かにそんなふうに見える。
4首目、そのまま、葱とわさび、お茶漬け。「吐息のような」に満足感が滲む。
5首目、明るい花に寄り添うように「影」があるという発見。
6首目、分度器の目盛と目の縁にある睫毛。言われてみればよく似ている。
7首目、三・四句目から自分の仕事に対する徒労感のようなものが伝わる。
8首目、厚く塗りかねているのに透明感があるのが不思議なのだ。
9首目、葱を切る場面に父が包丁を砥ぐ場面がオーバーラップする。
10首目、仕事を終えて素顔の自分に戻るところ。人魚のイメージでもあるし、羽を抜いて機を織る鶴のようでもある。

2017年7月1日、短歌研究社、2500円。

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2017年08月30日

さいかちさんのブログ


さいかち真さんがブログ「さいかち亭雑記」で『樺太を訪れた歌人たち』を取り上げてくださいました。丁寧にお読みいただき、ありがとうございます。

昨年刊行した本ですが、内容的に古くなることはありませんので(何しろ70年以上前の話です)、これからも多くの方にお読みいただければ幸いです。今すぐでなくて構いません。気が向いた時にぜひ。

10年後、20年後でも、多分このテーマでこれ以上の本が出ることはないと思います。それだけの自信を持っている一冊です。

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2017年08月28日

第20回「あなたを想う恋の歌」作品募集中!


現在、第20回「あなたを想う恋の歌」の作品を募集中です。
締切は10月31日(当日消印有効)
http://www.manyounosato.com/

最優秀賞(1首)は10万円、優秀賞(3首)は3万円、秀逸(10首)は1万円。
しかも、投稿料は無料!
ネットからも投稿できます。

皆さん、ぜひご応募ください。

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2017年08月27日

「短歌人」2017年9月号


編集室雁信(編集後記)に小池光さんが、こんなことを書いている。

●歌集が次々に出て慶賀に耐えないが歌集というものは売るものでも売れるものでもなく差し上げるものである。少し分厚い名刺である。名刺だから差し上げて、それでなんの余得も欲してはならない。差し上げた未知の人から返事がきたりして嬉しいものだ。それで十分と思わねばならぬ。

随分と思い切った書き方をしているが、読んでいて気持ちがいい。最近の小池さんらしいとも思う。十年くらい前まではみんなこういう感じで歌集を出していたわけで、「歌集は名刺代わり」という言葉もよく聞いた。

近年、歌集を売ろうとする試みや努力が出版社や歌人の間にも広がりつつある。それはそれで大事なことだと思う。お金の問題はやはり馬鹿にできないのであって、歌集が売れて作者の経済的な負担が少なくなれば随分と歌集出版の風景も違ってくるだろう。

その一方で、歌集が売れないことを別に悲観する必要もない。売れる・売れないというのは、短歌にとって本質ではないからだ。最終的には、自分の納得のいく歌ができるかどうかという問題であろう。

もちろん、売れるに越したことはなくて、僕自身、本を出すたびにベストセラーになることを思い描く。でも、小池さんの書いている「それで十分」という心構えも忘れずにいたいと思う。

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2017年08月26日

夕焼け


今日は久しぶりに一日中家にいた。

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ベランダから見た夕焼け。
子どもの頃に遊んだ三角公園を思い出す。

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2017年08月25日

できたて


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第4歌集『風のおとうと』ができました。

ご注文は、六花書林 http://rikkasyorin.com/
または、松村正直 masanao-m@m7.dion.ne.jp までお願いします。
定価2500円(税別)です。


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2017年08月24日

「塔」2017年8月号(その2)


さかのぼること許されて琺瑯のボウルに乾燥椎茸もどる
                         福西直美

時間を巻き戻すように膨らんでゆく椎茸。初・二句の把握が印象的で、反対に、現実にはさかのぼることが不可能な時間というものを思わせる。

映画って便利だ海にいないとき並んで海を見た気になれる
                         小松 岬

確かに映画館のスクリーンは横に広くて、画面が海のようでもある。好きな人と一緒に映画を見ていると、海に行ったような気分になれるのだ。

にわとりがにわとりの姿のままで眠っている零度のショーケース
                         鈴木晴香

パリに住んでいる作者。肉屋でにわとりが、生きていた時の姿を思わせる形で売られているのだろう。「零度」がいい。日本ではあまり見られない光景。

四人子の通り道としこれまでのわれありと思う子を産み終えて
                         矢澤麻子

自分の身体や存在を「四人子の通り道」と言い切ったところに強さがあり印象に残る。別の世界とこの世をつなぐ通り道となっているのだろう。

めしいなる犬は鼻から電柱にぶつかりて後ゆまりをかけたり
                         永久保英敏

年老いた犬の姿がありありと見えてくる一首。「ぶつかりて」が何とも哀しい。それでもやはり昔からの習性で、おしっこは電柱にかけるのだ。

あの一番低いマンションがうちです、と告げて別るる雨の街角
                         逢坂みずき

誰かに家の近くまで送ってもらったのだろう。家までは来ないで、マンションが見えるあたりで別れるというところに、相手との距離感が出ている。

いく筋か黒く流るる水ありてわさび田と知りぬ春の雪ふかし
                         坂東茂子

雪の積もる中に筋をなして流れている水。「黒く」と言ったのが良くて、反対に雪の白さも浮かび上がる。結句の字余りも雪の深さを感じさせて効果的。

posted by 松村正直 at 08:51| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月23日

「塔」2017年8月号(その1)


わが齢(とし)に娘がおどろき娘の歳にわれがおどろくケーキ食べつつ
                        亀谷たま江

作者の誕生日を祝って家族でケーキを食べている場面だろう。互いの年齢に今さらのように驚く母娘の姿が、何ともユーモラスに詠まれている。

三人のうちの二人が病みてをりほぼ全滅と言ふべし家族
                        澤村斉美

夫と幼い子どもが風邪をひいて寝込んでしまったという状況。そうでなくても人手が足りないのにという焦りと苛立ちが「ほぼ全滅」によく表れている。

臨月の娘(こ)の腹撫でてもの言へば呪文をかけるなと遮られたり
                        村田弘子

臨月ともなればいろいろとお腹の子に語り掛けたくなるものだが、度々なので鬱陶しがられたのだろう。「呪文をかけるな」が強烈で笑ってしまう。

ポシェットの細きベルトがTシャツの乳房の間をとほり七月
                        清水良郎

薄いTシャツ越しに乳房の形が浮かび上がってくるので、思わず目が行ってしまうのだ。夏の明るさと健康的な(?)エロティシズムの感じられる歌。

この部屋は海からの風の通り路十三階の窓開け放つ
                        乙部真実

マンションの窓を開けるとよく風が通り抜けるのだろう。それが海から吹いてきた風だと思うと、気分も開放的になる。遠くに海が見えるのかもしれない。

いちどだけ掬はれしみづ さまよへるあなたをうるほす河でよかつた
                        小田桐夕

恋の場面を詠んだ歌。一度だけの関わりでも構わないという強い思いや覚悟が滲む。相手の心を潤すことができればそれで十分だと感じているのだ。

ご愁傷さまです、の中に秋はありあなたはゆくのかなその秋を
                        安田 茜

「ご愁傷さま」という挨拶が行き交う葬儀の場にあって、亡き人に思いを馳せているところ。言葉遊びの要素がうまく働いていて味わい深い。


posted by 松村正直 at 18:25| Comment(4) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月21日

もう会えない人たち


19日、20日と「塔」の全国大会で福島県の郡山へ行ってきた。
全国から175名が集まって、賑やかで楽しい二日間だった。

ご高齢のために大会に参加できない台湾の会員の方に寄せ書きを
したり、今は寝たきりの状態となっている方の話を聞いたりもした。

今日は今日で、僕が「塔」に入会した頃にとてもお世話になった方が
退会するとの連絡があり、久しぶりに電話で話をした。懐かしかった。
一緒に勉強会をしたりしていたのは、もう15年くらい前だろうか。

毎年多くの会員が全国大会に集まる一方で、もう会うことのできない
方も多い。誰だって、来年また同じように会えるとは限らないのだ。


posted by 松村正直 at 22:58| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月19日

福島へ


今日、明日と「塔」の全国大会に参加するため、福島県郡山市へ行ってきます。これから5:39の始発に乗って10:06に郡山に着く予定。


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2017年08月18日

「稚内市サハリン事務所」のブログ


サハリン(樺太)に興味のある方におすすめなのが「稚内市サハリン事務所」のブログ「65RUS−ユジノサハリンスク市アムールスカヤ通から…」。
http://65rus.seesaa.net/

ほぼ毎日更新されるし、内容も具体的でおもしろい。サハリンを旅行している気分を味わうことができる。

サハリンに関する情報はガイドブックでもネットでも極端に少ない。そんな中で、このブログはとても役に立つ。

posted by 松村正直 at 20:53| Comment(0) | 樺太・千島・アイヌ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月16日

第4歌集


今月下旬に第4歌集『風のおとうと』を刊行します。
2011年から14年までの作品505首を収めました。

現在、版元の六花書林で予約受付中です。定価は2500円(税別)。
http://rikkasyorin.com/

よろしくお願いします。

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2017年08月15日

「短歌往来」2017年9月号


米川千嘉子「つるつるの世」33首から、はじめの5首を引く。

 「お嬢さんの金魚」の歌よ水槽はとぷとぷとぷと夏のひかりに
 九州に豪雨はつづき七年間会ふことなき河野裕子さんをおもふ
 河野さんの「ちりひりひ」とか「妙(めう)な」とか ひるがほは首しろく
 咲きだす
 アホなことはどれほどどれだけ積み上がりし この七年を知らぬひる
 がほ
 河野さんのあかあか赤ままの良妻のうた その幸ひはいまもそよぐや

2010年に河野裕子さんが亡くなって、早くも7年が過ぎた。
河野さんを偲びつつ、移りゆく時代に思いを馳せているのだろう。

河野さんの歌がいくつも踏まえられている。

 お嬢さんの金魚よねと水槽のうへから言へりええと言つて泳ぐ
                      『歩く』
 ちりひりひ、ちりちりちりちり、ひひひひひ、ふと一葉(ひとは)笑ひ出し
 たり神の山              『体力』
 眠りゐる息子の妙(めう)な存在感 体力使ひて眠りゐるなり
                      『体力』
 美しく齢を取りたいと言ふ人をアホかと思ひ寝るまへも思ふ
                      『母系』
 良妻であること何で悪かろか日向の赤まま扱(しご)きて歩む
                      『紅』

こんなふうに古い歌を思い出しながら、歌を読んでいくのも楽しい。

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2017年08月14日

「上終歌会01」


2016年8月から京都芸術大学文芸表現学科の学生を中心に行っている「上終(かみはて)歌会」のメンバーの出した冊子。記念すべき第1号。

 赤青黄緑紫白黒と何もなかった日の帰り道
                     小林哲史

上句の色の羅列が「何もなかった」につながるのが面白い。色だけをぼんやり見ていたようでもあるし、本当は何かあった日なのかもしれないとも思う。

 記憶の雪は四十五度にふっている窓の対角にきらきらとして
                     中野愛菜

「四十五度」がいい。風まじりの氷の粒のような雪が斜めに窓を横切っていく。ふるさとの家で見た光景だろうか。記憶に今も鮮やかに残っているのだ。

 帽子だけ持って飛び乗る上り線窓の指紋が富士に重なる
                     鵜飼慶樹

上句のリズムや内容に若さと勢いがある。下句は一転して非常にうまい写生で、技術の確かさを感じる。東海道線で東京方面へ向かうところか。

 はなびらがあなたの胸にすべりこむはなびらだけが気づく心音
                     中山文花

淡い恋の歌。相手の着ているTシャツの首のあたりから桜の花びらが入っていくのが見えたのだろう。君の心臓に触れてその音を聴いてみたいという思い。

 バースデーケーキに墓標立てる彼うちくだかれたうちくだかれた
                     森本菜央

下句がいい。ひらがな表記が呪文のようでもあるし、「打ち砕かれた」という言葉が解体して、「抱かれた」や「枯れた」が浮んでくるようにも読める。上句の蠟燭を「墓標」に見立てているのも、意外性があって印象に残る。

2017年8月1日発行。

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2017年08月12日

短歌結社


結社で学んだことはいろいろあるが、一番は「人間は生きて死ぬ」ということ。

河野裕子さん、田中栄さん、諏訪雅子さん、古川裕夫さん、坂田久枝さん、
塩谷いさむさん、田中雅子さん、佐藤南壬子さん、山下れい子さん・・・

もう二度と会えない人がたくさんいる。

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8月12日


今日は河野裕子さんの亡くなった日。
もう7年になるのか。

今死ねば今が晩年 あごの無き鵙のよこがほ西日に並ぶ
やはらかな縫ひ目見ゆると思ふまでこの人の無言心地よきなり
アメンボの私の脚がまぶしいから 土曜の水面は曇つてゐてほしい
欠詠の若きらをもはや頼まざり私にはもう時間がない
先の世といふはあらずよ親とより長く暮らしし君が髪刈る

歌集『家』(2000年)は、僕が初めて読んだ河野さんの歌集である。
1995年から1999年までの歌が収められている。

歌集の最初のページにメモが挟まっていて、2000年1月21日に「『家』を読む会」という勉強会をしたことがわかる。参加者は、なみの亜子、川本千栄、深尾和彦、澤村斉美、西之原一貴、松村正直の7名。

「全体の感想」として

・松村・・・意外に上手い
      上手い歌(上手さ)、散文的な歌(思い)
      残り時間、晩年意識
      家 子供が出ていき自分が残る タイトル

と書かれている。自分の先生の歌に対して「意外に上手い」とは、何て失礼なやつだろう。この時はまだ結婚前で、大分に住んでいて、29歳だった。

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2017年08月11日

第六回琅玕忌だより


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「第六回琅玕忌だより」が発行されました。(非売品)

今年2月18日に熊本で行われた琅玕忌(石田比呂志さんを偲ぶ集まり)の内容がまとめられたもので、私の講演「短歌の骨法―石田比呂志の歌の魅力」も載っています。

手元に4部ありますので、欲しい方はメールでご連絡ください。
先着順、無料です。 【残部なくなりました 8月12日】

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2017年08月10日

山梨にて(その2)


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「西湖いやしの里 根場」は、富士五湖の一つ西湖のほとりの根場地区にある観光用の茅葺き屋根の集落。20棟の家が立ち並び、昔ながらの農村風景を再現している。地元の物産の販売や伝統工芸の体験教室なども開かれており、外国人の観光客も多かった。


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へちまの棚。


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地元の農産物。

でも、この場所の一番の見どころは「砂防資料館」だと思う。根場の集落は昭和41年の台風による土石流で壊滅的な被害を受け、多くの死者を出した。その後、高台へ集落ごと移転して、元の場所には何もなかったのだが、そこに2006年に観光用の集落を作ったのである。


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そうした歴史を知ると、のどかな茅葺き屋根の集落が、全く違った印象で見えてくる。

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2017年08月09日

山梨にて(その1)


2泊3日で山梨県身延町に住む母の家に行ってきた。
3年前に連れ合いを亡くしてから一人暮らしなので、何かと心配ではある。


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最寄り駅のJR身延線「下部温泉駅」。
夏休みシーズンということもあって、いつもより駅前も賑わっていた。


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母の家から眺める身延山。
家のすぐ近くには富士川も流れていて、自然の豊かな土地である。

今回は母と兄と3人で、初日は「西湖いやしの里 根場(ねんば)」、2日目は「みはらしの丘 みたまの湯」にも出掛けた。家に籠もりがちな母を外へ連れ出すのも訪問の目的の一つ。本当は泊まりがけで旅行に行きたいのだが、母は年老いた飼い猫が心配で外泊をしようとしない。

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2017年08月06日

山梨へ


2泊3日で山梨の母のところへ行ってきます。
こちらの最寄り駅を朝7:09に出て、向こうの最寄り駅に着くのが11:25。
台風の動向が気がかり。

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文学部とは


昨日、ある大学で、

 文学部 ≠ 「文学」部
 文学部 ≒ 「文」学部

という話を聞いた。
「文」とは「人文学」(humanities)のことなのだと言う。

なるほど、そうだったのか。
確かに言われてみればその通りだ。

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2017年08月05日

三浦しをん著 『あやつられ文楽鑑賞』



2007年にポプラ社より刊行された単行本の文庫化。

文楽にふいに興味が湧いてきて手に取ったのだが、文章がとにかく面白くてすらすら読める。もちろん内容は真面目で、優れた入門書になっている。

文楽の人形は、魂の「入れ物」である。大夫さんの語り、三味線さんの奏でる音楽、そして人形さんが遣うことによって、はじめて魂を吹き込まれる「容器」なのだ。だから場面に応じて、人間以上に「人間」になることも、聞き役に徹する「背景」になることもできる。
近松門左衛門は、きわめて意図的に、与兵衛の心理描写を省略したのだ。『女殺油地獄』は、心理を説明しないことによって、逆に人間心理を限界まで追求しようと試みた、非常にスリリングな作品だ。
咲大夫さんの師匠・豊竹山城少掾はかつて、「ここはこういう解釈ですか」と質問するひとに対して、「そういうふうに聞こえましたか」と答えていたそうだ。これは名回答で、たしかに、義太夫を聞いて、それをどう受け止めようと、お客さんの自由なのである。

表現ということについて、いろいろと考えさせられる一冊である。
とにかく文楽を観に行かないことには始まらないな。

2011年9月18日第1刷、2015年3月10日第11刷、双葉文庫、600円。

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2017年08月04日

平成29年度堺市民芸術祭、堺短歌大会


10月21日(土)に堺で講演「啄木の現代的な魅力」を行います。
現在、短歌大会の作品を募集中です。

日時 平成29年10月21日(土)午後1時〜4時半
場所 堺市東文化会館(フラットホール)
プログラム
   第1部 講演 松村正直「啄木の現代的な魅力」
   第2部 選者による作品選評、表彰式
大会資料代 1000円
作品締切 平成29年8月10日(木)当日消印有効
主催 堺市文化団体連絡協議会・堺歌人クラブ

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2017年08月03日

「かりん」 2017年8月号


池谷しげみさんの「発送作業を終えて」という文章を、しみじとした思いで読んだ。

 「かりん」は創刊以来、手作り感を大切にして、発送作業も手書きをつづけてきました。根本的なこころざしに変わりはありませんが、来年の創刊四十周年を機に、時代に即したやりかたを徐々に採りいれようと、模索をはじめています。
 手始めに、発送作業を外部に委託することとなり、すでに七月号から新システムに移行しています。

つまり、これまで自分たちで行ってきた結社誌の発送作業を、外部の会社に委託することになったというわけだ。それに伴って宛名も手書きではなく、印刷されたラベルになるのである。

これまで四十年近く、毎月一回、発行所(馬場さんのご自宅)に集まって発送作業をされていたのだという。きっと大変なことも多い一方で、楽しい集まりでもあったのだろう。時代の移り変わりとはいえ、ずっと続いてきたことが終わるのは寂しいことである。

「塔」ではもう随分前から発送作業は印刷所に委託している。でも、その前は古賀泰子さんのお宅で発送作業をしていたと聞いたことがある。

合理化できるところは合理化してというのは「塔」でも進めている路線だし、実際にそうしていかないと、この時代に結社を存続させていくことはできない。でも、本当に合理化だけを考えるなら、結社を解散するのが一番ということになってしまう。そのバランスをどのように取っていけば良いのか、結社の今後のかじ取りは非常に難しい。

池谷さんの文章の最後には、宛名書きや会費チェック、袋詰めと荷造りを担当されていた方々のお名前が列記されている。必ずしも歌壇的に有名な方ばかりではない。でも、そうした方々の力があって初めて、結社は成り立っているのである。そのことを常に心に置いておきたいと思う。

長い間、本当にお疲れさまでした。
書いていて、涙が出てきた。

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2017年08月02日

久保田幸枝著 『短歌でたどる樺太回想』



昭和12年に樺太で生まれ、昭和22年に引き揚げるまで樺太に住んだ著者の短歌エッセイ集。文芸誌「ぱにあ」の連載を一冊にまとめたもの。

 樺太留多加郡留多加町大町二十五番地いまは何町
 かばひける覚えあらねばオロツコの少女をあなどりしひとりなりけむ
 ひひならは老いたるまなこを細めゐむサハリンの野に髪凍らせて
 引揚船「宗谷」のデッキにて手を振りき流氷の上のオットセイらに
 映像のユジノサハリンスクの風わたくしの目に埃をとばす

樺太の思い出やソ連占領下での生活、引き揚げと戦後の苦労など、実際に体験した人にしか書けない内容が多く、歴史の貴重な証言となっている。

2016年10月16日、洪水企画、1600円。

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2017年08月01日

鈴木孝夫・平田オリザ著 『下山の時代を生きる』



言語学者の鈴木孝夫と劇作家の平田オリザの対談。

平田の現代口語演劇理論が鈴木の『ことばと文化』などの著作に影響を受けて生まれたという関係があり、今回初めて対談が実現したものである。

90歳という年齢にもかかわらず非常に元気で多少暴走気味な鈴木と、それをうまく受けながら、けれども言うべきことはきちんと言って話を進める平田の間合いが絶妙で、面白いと言うか奇書と言うか、一風変わった本になっている。

鈴木 日本語は結局、話の場に張り付いている場の雰囲気というものが非常に大切なんです。つまりハイコンテクスト(高文脈)のタイプの言語で、同じことを言っても文脈によって意味が全然違ってくることがあります。
鈴木 いま日本の大学で外国語を学ぶのだったら、国家的な必要度から言えば、英語はやむを得ないにしても以前より必要性の少なくなったドイツ語やフランス語よりも、今ほとんど学ばれていないロシア語やペルシャ語、アラビア語をやるべきです。
平田 フランス人の面白いところは、自分にはよくわからないけれど何か価値がありそうなものに対しては、ちょっと尊敬するところですね。(・・・)ところがアメリカ人の多くは、自分がわからないと駄目なんです。
平田 文科省はいま、「問題解決能力のある子」を育てようと言うのですが、ぼくはむしろ大切なのは「問題発見能力」あるいは「問題設定能力」だと思っています。

言葉や日本のあり方をめぐるやり取りには、なるほどと気づかされる点がたくさんある。「登山」ではなく「下山」というのが、これからの時代のキーワードになっていくのだろう。

それにしても、鈴木孝夫、面白すぎる。

2017年4月14日、平凡社新書、740円。

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