欠詠の若きらをもはや頼まざり私にはもう時間がない
河野裕子『家』
1996年の歌なので、当時河野さんは50歳。
欠詠する若者たちを、一体どんな思いで見ていたのだろう。
欠詠してはいけません。一回欠詠するとズルズルと休み癖がついてしまい、短歌引きこもりになるから御用心。一首でもいい。日本語が並んでさえいればいいと思って出詠してください。ええカッコして、褒めてもらおうと思うから歌ができなくなるのですよ。駄作、凡作がいつのまにか作歌の元肥やしになってくれます。諦めてはあきません。
『河野裕子読本』に収められた「河野裕子語録」より。
「塔」に入って20年になるけれど、一度も欠詠したことはない。
河野さんにこういう話を何度も聞かされていたからである。
「諦めてはあきません」、そう、大事なのは諦めないことだ。