2015年11月01日

野一色容子著 『ナンジャモンジャの木』


副題は「歌人清原日出夫の高校時代 in Hokkaido」。
『ナンジャモンジャの白い花』(2011年)に続く清原日出夫の評伝第2弾。
この2冊は、現時点で清原に関する最も詳しい評伝と言っていいだろう。

今回はこれまで知られていなかった数多くの資料をもとに、清原の中学・高校時代を描いている。大きな成果としては、清原の歌にも詠まれている「武佐中学校事件」の詳細が記されていることと、北海道新聞根室版の「根室歌壇」への投稿歌を中心に高校時代の70首ほどの歌を見つけたことが挙げられる。

武佐中学校事件は、1952年に清原が通っていた標津村武佐中学校で、共産主義的な偏向教育を理由に教員が処分された事件である。この事件に関して清原の父が国会に証人として呼ばれた事実や、当時中学3年生だった清原が事件後に別の学校へ転校した事実などが、本書で明らかにされている。

根室歌壇への投稿歌は、例えば次のようなもの。

物の理に従ひ流るる川水に抗がふ流木に親しさ覚ゆ
サロンパスの香りは部屋に満ちてをり農事に疲れ母臥したまふ
馬がひく幌あるトロに開拓の意気に燃え立つ君乗り行きぬ

いずれも、高校3年生、18歳の時の作品である。素朴な歌であるが、後の大学時代以降の清原作品につながる雰囲気が既に感じられる。

このような地道な調査・研究が果たす役割は非常に大きいということを、あらためて感じさせる一冊であった。

2015年5月15日、文芸社、1400円。

posted by 松村正直 at 20:44| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする