2013年12月01日

富山和子著 『日本の米』


副題は「環境と文化はかく作られた」。

日本の国土や文化、歴史、環境などは、すべて米作りが基盤になっていることを、様々な角度から繰り返し述べた本。吉野ヶ里遺跡、条里制、新田開発、安積疏水、式年遷宮などを例に挙げて、米を通じて歴史や風景を見ることや、水と緑と土の関わりを考えることの大切さを説いている。
ライン川流域の葡萄畑や、地中海沿岸の丘陵地帯などを歩きながら、彼我の風景の違いに、はたと気づいたものであった。そうだ、水田は水を張る。だから水平でなければならないのだ、と。
日本の歴史とは治水、つまりは水抜きの歴史であり、同時に、溜池の歴史、つまりは水を作ってきた歴史であった。
私たちは川の水も地下水も、自然物と思いがちである。そして事実、水の値段には、水を作ってきた農民の労働の費用など含まれてはいない。

読んでいて、「なるほど」と思ったことがいくつもある。その一つは江戸時代の和算の流行のこと。これまで和算に対しては文化的な趣味といったイメージしか持っていなかったのだが、実際は検地や新田開発、さらに疏水を引くための測量や土木工事と深く関係していたのであった。なるほど、なるほど。

1993年10月25日、中公新書、760円。

posted by 松村正直 at 23:19| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする