近年、学生短歌会の盛況ぶりはよく話題になるところだが、今回新たに「立命短歌」が創刊された。昨年9月に発足したばかりとのことだが、誌面は全162ページ、装丁やデザインも良いし、内容も非常に充実している。
父の手に抱かれて眠るみどりごがどろりととけて零れ落ちゆく
柳文仁 (「柳」は正しくは別字体)
強がらぬ強がりもまたあるだろう素直に肩を借りてくるひと
坂井ユリ
吸うごとに鼻の輪郭際立ちぬ耳抜きをして急ぐ朝路を
村松昌吉
弟の額に三点ほくろあり正しい順に押して確かむ
中山靖子
珈琲の味は変わらず若き日に通った店で時間を潰す
大槻裕子
粉雪が**********(アスタリスクのように)舞う秘密ばかりの**ぼく
たちに 宮崎哲生 (「崎」は正しくは別字体)
引用のやうなる日々にわれは居て西日の内に山茶花を見る
濱松哲朗
立命短歌会と言えば、かつて清原日出夫や坂田博義らを生んだ学生短歌会の名門であるが、近年は活動をしておらず、今回の「立命短歌」が第5次になるそうだ。今号に、宮崎哲生さんが「立命短歌史」という40ページにわたる文章を書いていて、これまでの歴史を的確に、わかりやすくまとめている。これは大変な労作で、資料的価値も高い。
短歌作品だけでなく、こうした文章が載っているところに注目するし、今後のさらなる発展が期待できそうに感じる。