日本語関連本。
副題は「帝国日本と国語学者たち」。
明治から戦後にかけての「国語」の移り変わりや国家の言語政策に、国語学者たちがどのように関わってきたのかを描いた本。登場するのは上田万年・保科孝一・金田一京助・新村出・山田孝雄・時枝誠記など。
明治の近代国家樹立期に地域差や階層差をなくすために生み出された「国語」が、やがて植民地を含めた大東亜共栄圏の共通語という役割を担うようになっていく様子が明らかにされている。
また、表音仮名遣や漢字制限といった国語改革についても、敗戦後に急に巻き起った議論ではなく、明治以来の長い試行錯誤の繰り返しの末に行われたものであることが述べられている。
日本の近代の流れがコンパクトにまとめられており、「国語」の変遷が非常によくわかる。引用文献に関する目配りもいい。ただ、全体としてやや引用に頼る部分が多く、著者自身の言葉で語る部分が弱い印象も受けた。
2006年12月20日、中公新書、880円。