2026年01月01日

歌集・歌書一覧

*この記事は常に一番上に表示されます。
 最新の記事は3つ下をご覧ください。

私がこれまでに出した歌集・歌書は以下の11冊です。

【歌集】
・『駅へ』(2001年、ながらみ書房)
・『駅へ』新装版(2021年、野兎舎)*在庫あり
   野兎舎オンラインストア
   アマゾンKindle版
・『やさしい鮫』(2006年、ながらみ書房)
・『午前3時を過ぎて』(2014年、六花書林)
・『風のおとうと』(2017年、六花書林)
・『紫のひと』(2019年、短歌研究社)

【歌書】
・『短歌は記憶する』(2010年、六花書林)*在庫あり
・『高安国世の手紙』(2013年、六花書林)
・『樺太を訪れた歌人たち』(2016年、ながらみ書房)*在庫あり
・『戦争の歌』(2018年、笠間書院)
・『踊り場からの眺め』(2021年、六花書林)*在庫あり

「在庫あり」のものは、送料無料・振込用紙同封でお送りします。
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また、ネットショップのBOOTHでも販売しております。
どうぞお気軽にご利用ください。
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カルチャー講座一覧

大阪、京都、兵庫などでカルチャー講座を担当しています。
短歌に興味のある方は、どうぞご参加下さい。
まったく初めての方も大歓迎です。

◎NHK学園オンライン講座
 「短歌のコツ」 毎月第4木曜日19:30〜20:45

 「現代短歌セミナー 作歌の現場からU」 偶数月第3水曜日
  19:15〜20:45 *永田和宏さん、ゲストの方と3人で

 「N学短歌plus」 *サブスク(定額制)講座

◎住吉カルチャー
 「はじめての短歌」 毎月第1金曜10:30〜12:30

◎毎日文化センター梅田教室 06‐6346‐8700
 「短歌実作」 毎月第2土曜日
   A組 10:30〜12:30
   B組 13:00〜15:00

◎JEUGIAカルチャーセンター京都 de Basic. 075‐254‐2835
 「はじめての短歌」 毎月第3水曜10:00〜12:00

◎JEUGIAカルチャーセンターMOMOテラス 075‐623‐5371
 「はじめての短歌」 毎月第1火曜10:30〜12:30

◎醍醐カルチャーセンター 075‐573‐5911
 「短歌教室」 毎月第2月曜日 13:00〜15:00

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2025年12月31日

2025年の活動記録

作品
 ・「濡れ縁」25首(「現代短歌」1月号)
 ・「岩魚とミズナラ」15首(「パンの耳」第9号)
 ・「ひよどりとスズメ」10首(「角川短歌」2月号)
 ・「169.8キロ」7首(「短歌研究」5・6月号)

連載
 ・啄木ごっこ(第75回)結核と母の死(「角川短歌」1月号)
 ・啄木ごっこ(第76回)啄木死す(「角川短歌」2月号)
 ・啄木ごっこ(第77回)『悲しき玩具』刊行
                   (「角川短歌」3月号)
 ・啄木ごっこ(第78回)次女誕生と節子の死
                   (「角川短歌」4月号)
 ・ことば以上こころ未満(第22回)(「NHK短歌」1月号)
 ・ことば以上こころ未満(第23回)(「NHK短歌」2月号)
 ・ことば以上こころ未満(第24回)(「NHK短歌」3月号)

評論
 ・「ルナパークと啄木、白秋」(「短歌堺」第85号)

書評
 ・江戸雪歌集『カーディガン』評(「短歌往来」2月号)
 ・滝田恵水歌集『長靴を履く』評(「短歌人」2月号)
 ・松本達雄歌集『海彼』評(「八雁」3月号)
 ・赤井千代歌集『海の天女』評(「白珠」4月号)
 ・川野里子対話集『短歌って何?と訊いてみた』
                     (「歌壇」5月号)
その他
 ・貝澤俊一歌集『ダニー・ボーイ』栞文
 ・「抑制と全開」(「歌壇」4月号)
 ・「愛誦するうた」(「短歌往来」4月号)

出演
 ・令和6年度「くにたち短歌大会」選評座談会(1月29日)
 ・講座「短歌を通して考えるガザ、パレスチナ」(3月22日)
 ・NHK学園「春のプレミアム短歌講座」(3月29日)

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2025年04月28日

佐々木朔歌集『往信』

著者 : 佐々木朔
書肆侃侃房
発売日 : 2025-03-05

早稲田短歌会を経て同人誌「羽根と根」に参加する作者の第1歌集。

ホチキスの針をどっちに打つかって話したせっかくの風のなか
花の名を教えるひとと聞くひとのそれぞれにそれぞれの花園
ほんとうに山下町は山の下 ゆっくり過ぎてゆくでかい犬
行きつけのようでそうでもないようなファミレスで夏の雨をみている
行き先は同じだけれど行く道がことなるバスが三台つづく
感情はむしろ孤島に咲いていて、そうだとしても言葉をつなぐ
ずっと一緒にいたいと思う/思わない 商店街のアーチをくぐる
陸橋と思い渡っているうちに眼下に見えてくる細い川
朗読をかさねやがては天国の話し言葉に到るのだろう
目を伏せていたって冥王星でだってあなたがめげていたらわかるよ

1首目、三つの促音と句またがりの生み出すリズム。右上か左上か。
2首目、頭の中の花園が違う。「それぞれの」「花園」が響き合う。
3首目、わが家の近くにある山下町も確かに山の下に位置している。
4首目、「行きつけ」の顔なじみ感には個人の店のイメージが強い。
5首目、終点まで行くならどれも一緒だが、そうでなければ要注意。
6首目、感情を相手と共有するのは難しい。下句に強い思いが滲む。
7首目、「思う」「思わない」が同時に存在することもあるのが心。
8首目、川の出現により「陸橋」だった構造物が「橋」へと変わる。
9首目、朗読に慣れてくると良くも悪くも言葉が透明になっていく。
10首目、冥王星の遠さと暗さ感が初句と重なる。「め」の音の響き。

2025年2月28日、書肆侃侃房、2000円。

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2025年04月27日

住吉カルチャー

毎月第1金曜日の10:30〜12:30、神戸市東灘区文化センター(JR住吉駅すぐ)で自主的なカルチャー講座を開催しています。

前半1時間は近刊の歌集の紹介や秀歌鑑賞、後半1時間は受講生の作品(1首)の相互批評という内容です。

参加費は2000円。現在の参加者は14名です。

興味のある方はお気軽に松村までご連絡ください。初心者からベテランの方まで、どなたでも歓迎します。
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2025年04月26日

小野市短歌フォーラム

兵庫県の小野市うるおい交流館エクラで開催された「小野市短歌フォーラム」へ。


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芝生がきれいな広場を見ながら建物に入ると、ロビーは外光が入って明るい。

第1部は「季語の力」というテーマで高野ムツオさんが講演して、その後、小島ゆかりさんと高野さんと対談が行われた。

小島さんが引いた久保田万太郎の俳句「はんけちのたしなみきよき薄暑かな」について、高野さんは女性を思い浮かべ、小島さんは男性を思い浮かべて読んでいたのが面白かった。

また、「薄暑」という季語について高野さんが、比較的新しい季語で都会的なイメージを含んでいると話したのも印象に残った。農村ではなく都市の風景に合う季語だというのである。

なるほど。単に初夏のうっすら汗ばむ季節を表すにとどまらず、「薄暑」だけで街のイメージを醸し出すのだ。季語、おもしろい。

第2部は第17回小野市詩歌文学賞の授賞式。短歌部門は黒木三千代『草の譜』、俳句部門は中村和弘『荊棘(おどろ)』。

フォーラム終了後の懇親会で、受賞者の黒木さんにお祝いと歌集の感想をお伝えすることができて嬉しかった。

posted by 松村正直 at 22:54| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年04月25日

芦原伸『北海道廃線紀行』


副題は「草原に記憶をたどって」。

北海道大学を卒業して鉄道ジャーナル社「旅と鉄道」の編集などに携わった著者が、北海道各地に残る廃線跡をたどったドキュメンタリー。過去の旅の記憶も描かれ、歳月の経過を強く感じさせる。

登場するのは、天北線、深名線、標津線、広尾線、胆振線、岩内線、湧網線など計21の路線。こんなに多くの路線が廃止になったのかという驚きとともに、こんなに隅々まで鉄路を敷いた明治〜昭和期の人々の情熱が胸にしみる。

北海道というとラーメンを思い浮かべる方が多いだろうが、実は北海道が日本一の生産量を誇るそば王国≠ナあることは意外と知られていない。日本の国産そばの四割を北海道が占めている。
鉄道は単なる交通手段ではない。そこには人々の生活があり、歴史があり、出会いや別れの人生の記憶が凝縮されている。駅はそのシンボルで、情報の集散地、コミュニケーションの場であった。
昭和三〇年代炭鉱の最盛期、夕張市の人口は一一万六〇〇〇を数えた。市内に鉱山は二四ヵ所、鉄道は二二駅あり、高校は七校、映画館は一六館。炭住ではひねもす煙が昇り、繁華街では終夜営業のバーやキャバレーがさんざめいていた。
鉄道王国が築かれた北海道だったが、今や「廃線王国」となってしまった。最盛期の昭和三〇年代に四一〇〇キロあった北海道の路線だが、現在残るのは二四〇〇キロ、ほぼ四割が消滅している。

「北海道鉄道路線図(鉄道発祥から現在まで)」というサイトを見ると、1880年から2025年までの路線の消長をたどることができる。

江差線や留萌本線は北海道に住んでいた頃に乗ったことがある路線なので懐かしい。江差や天売島・焼尻島は今どんなふうになっているのだろう。

2022年5月15日、筑摩選書、1700円。

posted by 松村正直 at 21:18| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年04月24日

「与謝野寛・晶子を偲ぶ会」のご案内

 第19回 与謝野寛・晶子を偲ぶ会 案内チラシ 2025 05 17_QR_地図付き -1.jpg


5月17日(土)に第19回明星研究会「与謝野寛・晶子を偲ぶ会」が開催されます。テーマは「Beyond Meiji ―平出修・山川登美子・石川啄木」。

私も「評論・詩・短歌から読み解く啄木晩年の思想」という題で講演します。啄木の晩年におけるクロポトキンからの影響について主に話す予定です。

参加費は2000円。会場(武蔵野商工会議所「市民会議室」)とZoomの両方あります。ご興味のある方は、ぜひご参加ください!

https://www.myojo-k.net/

posted by 松村正直 at 22:39| Comment(0) | 石川啄木 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年04月23日

中野重治『歌のわかれ・五勺の酒』


詩「歌」、小説8篇、自作に関する随筆4篇を収めた作品集。

金沢の旧制高校時代を描いた自伝的小説「歌のわかれ」は、かつて金沢に住んでいたことがあって印象深かった。歌会の場面も出てくる。

金之助の「暮れよどむ街の細辻に……」が最高点の一つにはいった。彼はそのほかに、「苦しきことをこの上はわれ思はざらむ犀川の水はやけにせせらぐに」というのを出していてやはり問題になったが、「やけに」がどうかという評に対して、「いや、『やけに』なんだ!」と大声を出して一座を笑わせたりした。
安吉たちが今までやってきた歌会では、採点の最高点を得た作品から順に批評をするのが常だった。最高点のものについては、ほめるものも反対するものも総じてムキになった。そうしてそのムキになった批評のレベルが、そのまま点のあまりよくない作品にも及ぼされて行った。

中野の小説は話があちこち飛んだり回想と現在が入り混じったりして、あまり読みやすくない。その点は本人も自覚していたようで、随筆に次のように書いている。

まして私は上手な小説書きではない。批評家もそう言っていて私も認めている。ただ私は、上手下手ということを基本的なことだとは思うものの、上手でも下手でも自分のものを書きたいと思っている。(…)上手ということはこれからも学びたい。しかし下手にしろ自分のものを書きたい。

これは、どんなジャンルにおいても大切な心掛けだろうと思う。

2021年12月25日、中公文庫、1000円。

posted by 松村正直 at 16:35| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年04月22日

神戸短歌祭のご案内

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4月29日(祝・火)に開催される「神戸短歌祭」で講演をします。
題は「見えないものの詠い方」。

参加費は1000円で、事前申込みは不要。どなたでも参加できます。

時間は13:00〜16:30。講演は14:10頃からの予定です。
みなさんのご来場をお待ちしております!

posted by 松村正直 at 09:50| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年04月20日

伏見と仁丹看板

私の住んでいる伏見(京都市伏見区)は、もともと城下町・宿場町・港町として発展した場所で、京都とは別の町であった。

先日読んだ『京都を歩けば「仁丹」にあたる』を手掛かりに、その名残を探して歩く。


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民家の2階に設置された仁丹看板。

よく見ると「伏見区」ではなく「伏見市」新町三丁目と書いてある。


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こちらも同じく「伏見市」京町大黒町。

『京都を歩けば「仁丹」にあたる』では次のように説明されている。

 昭和になって京都市は「大京都市」をうたって周辺町村の編入を進めていく。当然のことながら伏見町も対象になった。しかし、伏見町は吸収合併ではなく、あくまで対等合併にこだわった。伏見市への昇格はそのためで、昇格からわずか700日後の1931(昭和6)年4月に伏見市は周辺の深草町や下鳥羽村などとともに編入され、広大な伏見区が誕生した。

つまり、これらの看板が設置されたのは、1929年5月(伏見市への昇格)から1931年4月(京都市への編入)までの間ということになる。

なんとも貴重な歴史の証人ではないか。

一方で、仁丹看板は年々その数を減らしているらしい。もともと古い家屋に設置されているものが多いので、建物の解体に伴って取り外されたり廃棄されたりしているのだ。

今回も本をもとに探した3枚のうちの1枚は見つからなかった。新しい家が建っていたので、おそらく取り外されてしまったのだろう。


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代わりに(?)見つけたのがこの石柱。

「桝形町」「皇紀二千六百年記念」とある。伏見を歩いていて見つかる記念碑は御大典記念(1928年)と皇紀二千六百年記念(1940年)のものが圧倒的に多い。

駐車場の角に傾いて立っているけれど、いつもまでもお元気で!

posted by 松村正直 at 17:56| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年04月19日

大辻隆弘『短歌の「てにをは」を読む』

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「うた新聞」2020年4月号から2024年5月号まで計50回にわたって連載された文章をまとめた本。短歌の助詞・助動詞を愛する著者が、具体的な例歌を引きながら「てにをは」の精妙な働きについて記している。

高校の国語教師として古文の文法なども教える著者であるが、そうした学校での公式的な説明を超えて、自らの経験をもとにさらに突っ込んだ話を展開している。

柊二にとって「たたかひ」は自分に関わりのない他人事ではない。同時に、その帰趨を主体的に決められる現象でもない。彼の身体は「たたかひの終りたる身」でもなく「たたかひを終へたるわが身」でもない。宙ぶらりんで、置き所のない「たたかひを終りたる身」だったのである。
「信頼」のような、「信じる」(他動詞)と「頼る」(自動詞)が混合した漢語の場合、「信」に重きを置いて助詞「を」を入れるか、「頼」に重きを置いて助詞「に」とするか、悩ましい。
現在、目の前で進行してゆく事態をどう捉えるべきなのか。現在進行形という西欧語伝来の時制表現を、従来の文語体系のなかでどう表現したらいいのか。圧倒的な西欧語の流入に際会して、近代の歌人たちは、そのような悩みのなかにいたのだろう。

50項目それぞれの題もおもしろい。

・やる気のない「て」
・憧れの「らむ」
・いまいましさの「など」
・不安の滲む「む」
・勢いの「も」
・一回性の「と」
・自己志向的な「の」

など、無味乾燥な文法の説明とは違って、実感に即した記述がなされている。長年にわたって短歌を読み、詠み続けてきた著者ならではの一冊と言っていいだろう。おススメです。

2025年3月15日、いりの舎、1800円。

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2025年04月18日

別邸歌会のご案内

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関西各地のレトロな建物をめぐって、2か月に1回どなたでも参加できる歌会をしています。次回、5月31日(土)の会場は神戸市にある「ふたば学舎」。


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昭和29年に建てられた旧二葉小学校の校舎を再利用したコミュニティ施設です。


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廊下や階段など、小学校時代の雰囲気を色濃く残しています。


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歌会を行うのは2階にある「2ー4」の教室。小学校時代のままの机や椅子を使って歌会をします。懐かしい!


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場所はJR・地下鉄「新長田駅」から徒歩約13分。駅の近くには高さ約15メートルの「鉄人28号」が立ち、何ともすごい迫力です。

posted by 松村正直 at 20:56| Comment(0) | 歌会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年04月17日

佐藤春夫『佐藤春夫台湾小説集 女誡扇奇譚』


1920年7月から10月にかけて三か月あまり台湾を旅した作者の書いた8篇の小説を収めた本。タイトルは「じょかいせんきたん」。

大正時代の台湾の町や原住民の姿が描かれているだけでなく、植民地政策に対する懐疑や居心地の悪さなども率直に記されていて興味深い内容となっている。

日月潭は海抜約二千二三百尺だから、一たん日月潭におびきよせた水を、そこから一度に下へきって落す。即ち落差が二千二三百尺。その人工の滝を動力にして電力を起す。世界でも珍しい工事で、たった一つスイスの山中に適例がある。
惜しいことに、晴れの蕃衣の下にメリヤスを――しかも最新の奴を着込んでいる。メリヤスなど着ているのは老区長とこの若者だけだ。ここではメリヤスは宝に違いない。しかし、このメリヤスを着込んでなきゃ、私はこの若者を怖ろしく思ったろう。
胡蘆屯とは言わば瓠(ひさご)が丘とでも訳すべき面白い地名なのだが近く役人共の猿智恵で豊原と改称される筈になっているという。車室に落ちつく間もなくA君はもう議論すきを発揮して駅名改称可否論を論題に持ち出したものである。

新宮出身の佐藤春夫が大逆事件で処刑された大石誠之助を悼んで「愚者の死」という詩を発表したことは有名だが、この本にも大逆事件を思わせる記述がある。

私は或る文明国の政府が、当時の一般国民の常識とややその趣を異にした思想――それによって一般人類がもっと幸福に成り得るという或る思想を抱いていた人々を引捉えて、それを危険なる思想と認めて、屢々その種の思想家を牢屋に入れ、時にはどんどん死刑にしたのを見聞したこともある。

昨年今年と2回新宮へ行ったこともあり、急に佐藤春夫に興味が湧いてきた。現在移転のため休館中の佐藤春夫記念館がリニューアルオープンしたら、また新宮に行ってみよう。

2020年8月25日、中公文庫、1000円。

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2025年04月15日

樺山聡『京都を歩けば「仁丹」にあたる』


副題は「町名看板の迷宮案内」。

2009年に「仁丹のある風景」という評論(『短歌は記憶する』所収)を書いて以来、仁丹の広告が気になっている。

京都の町には仁丹の広告入りの町名看板が今も数多く残っていて、それに関心を持つ人々が「京都仁丹樂會」を結成して調査・研究を続けている。

京都仁丹樂會がこれまでに存在を確認した琺瑯約1550枚のうち、95%以上が「上京區」と「下京區」の表記だった。これは何を物語っているのか。琺瑯「仁丹」のほとんどは京都市が上京区と下京区の2区しかなかった時代に設置された。
現在の地図と昭和4年の地図を見比べるとよく分かる。戦後、堀川通が「建物疎開」の跡地を利用して整備された際、段階的に拡幅する中で、並んで南北に走る醒ヶ井通や西中筋通を、広い歩道として飲み込んでいた。つまり「仁丹」は。大通りに吸収されて、その名が消えてしまった小通りの記憶をしっかりと刻み込んでいるのだった。
現在の町名は「北区紫野十二坊町」だが、かつて「鷹野」と呼ばれていた時期があることも示す。興味深い異色の1枚になっている。消えた地名を今に伝えるのも「仁丹」の魅力の一つと言える。

「仁丹」の町名看板から、明治・大正・昭和の京都の町のさまざまな歴史が見えてくる。区名・町名の変更や道路の拡幅・移動などを伝える証拠にもなっているのだ。

2023年12月1日、青幻舎、1800円。

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2025年04月14日

川野里子対話集『短歌って何?と訊いてみた』


川野里子と15名のゲストとの対話を収めた一冊。

登場するゲストは、納富信留(哲学・西洋古典学者)、サンキュー・タツオ(日本語学者・芸人)、岩川ありさ(現代日本文学研究者)、伊藤比呂美(詩人)、井上弘美(俳人)、堀田季何(歌人・俳人)、村田喜代子(小説家)、三浦しをん(小説家)、宮下規久朗(美術史家)、新見隆(キュレーター)、三浦佑之(日本文学者)、品田悦一(万葉学者)、木村朗子(日本文学研究者)、赤坂憲雄(民俗学者)、高野ムツオ(俳人)。

「歌壇」5月号に書評を書いたので、ここでは印象に残った発言を備忘のために記しておくだけにする。

我々は普通、韻文は人工的で散文が自然だと思ってる。だけど歴史的には逆で、他の文化圏もだいたい同じですが、最初文学が生まれるのは韻文なんですね。(納富信留)
いいネタだけど、この人じゃなくても成り立つと思われたらそれはよくなくて、多少雑でもその人でなきゃいけないもののほうがずっと面白い。(サンキュータツオ)
身体や感情を消すことが戦争への言葉の参加だったんだと思います。だから戦争が終わったときにまず言葉がやったことが身体を取り戻すということ。(川野里子)
伝統派は比喩としては使わないんですよ。比喩的に用いた時には季語として働かないからです。(井上弘美)
私は、近代以降の俳句も短歌も純粋な伝統詩だとは考えていないのです。欧米の詩と融合したと思っています。(堀田季何)
西洋ではヌード彫刻は外にはない。あれは日本特有の現象で、駅前に裸像があるのを見て西洋人はびっくりするんです。ヌードを西洋文化そのものだと思って愚直に増殖させてしまったのが日本の近代で、これは大きな誤解です。(宮下規久朗)
山陰道は京都山城から丹後を通って西へ行く。山陰と北陸は直接はつながっていないんです。近代の鉄道ができても北陸本線と山陰本線を乗り換えようとしたら一旦、京都に出ないといけない。(三浦佑之)
言葉は人間が生んだものだけれども、その人間をも全て制してしまう力がある。特に文字に書かれた言葉の力ですね。スペインがかつての大帝国時代を築き上げることができたのもスペイン語という言葉の力です。(高野ムツオ)

どの対話も刺激的で面白い。おススメです。

2025年1月23日、本阿弥書店、2500円。

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2025年04月13日

旧前田家本邸

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旧前田家本邸の洋館。

旧加賀藩主前田家の居宅として1929年に建てられたもの。重要文化財。玄関前には車寄せがある。現在の駒場公園は戦前はすべて前田家の敷地であった。


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1階の「第一応接室」。


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階段下にある「イングルヌック」(炉隅の小スペース)。


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2階へのぼる「大階段」。


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2階の「寝室」。


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2階の「書斎」。


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南側の芝庭から見るとこんな感じ。
桜がまだ咲いていた。

この洋館と渡り廊下でつながって和館もある。どちらも見学は無料なのでおススメです。

posted by 松村正直 at 18:32| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年04月12日

駒場

東京の「駒場」周辺は10代から20代にかけて約10年間、通ったり住んだりしたことがあるので懐かしい場所である。


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岡本太郎の壁画「明日の神話」。
渋谷駅の連絡通路にある。

渋谷から駒場へは井の頭線に乗ってもいいのだけれど、せっかくなので歩くことにする。距離にして2キロくらいか。


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駒場池(通称、一二郎池)。

大学のキャンパスの外れにひっそりとたたずむ池。有名な本郷の「三四郎池」をもじって「一二郎池」と呼ばれている。1・2年生は駒場、3・4年生は本郷に通うので、ぴったりのネーミングだ。

昔はもっと鬱蒼とした感じで人の寄りつかない場所だったけれど、今は遊歩道も整備されて少しきれいになっている。でも、人通りはほとんどない。


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日本近代文学館。

ここが今回の目的地。近代文学関係の資料を収集・保存するため1967年に開館した施設で、駒場公園の中にある。


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2階の展示室では「北原白秋生誕140年 白秋万華鏡」展が開催されていた。

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2025年04月11日

東京から

東京から帰ってきました。

行きは夜行バスで帰りは新幹線。
夜行バスは新幹線の3分の1の値段だ。

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2025年04月10日

東京へ

東京と神奈川に行ってきます。

posted by 松村正直 at 06:00| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする