2019年08月14日

山階基歌集 『風にあたる』 (その1)

著者 : 山階基
短歌研究社
発売日 : 2019-07-23

2010年から2019年までの346首を収めた第1歌集。
暮らしのディテールや他者との関係性、感情の機微、場の空気感などを描くのが巧みである。

 ヘアムースなんて知らずにいた髪があなたの指で髪型になる
 点々と残ってしまう梨の皮ひとつひとつをあらためて剝く
 さかさまにペダルを漕げばあともどりできる白鳥ボートはすてき
 乗るたびに減る残額のひとときの光の文字を追い越して行く
 小さくて深い湯舟におさまればふたごの島のように浮くひざ
 まっさらな雪をすくった跡のようあなたは炊飯器をまぜない
 バスに乗るために走っているように見えただろうかバス停からは
 アルコール噴霧器を押す病院に生まれたぼくは病院が好き
 すごく言いたかったんだね透明なテープの端を見つけたみたい
 のぎへんのノの字をひだりから書いてそれでも秋のことだとわかる

1首目、相手の手櫛に髪を撫でられている心地よさ。
2首目、誰もがよくやっている動作だが、歌になったのは初めて見た。
3首目、自転車ではそうはならないし、人生もまたそうはならない。
4首目、Suicaなどをかざして自動改札を通り抜けるところ。
5首目、アパートなどの小さなユニットバス。「ふたごの島」がいい。
6首目、一緒に暮らし始めると、お互いの生活習慣の違いに気がつく。
7首目、バスが来るタイミングでたまたまバス停の方に走っていたのだ。
8首目、病院は嫌いな人が多いけれど、確かにみんなそこで生まれた。
9首目、いったん話し始めたら、次々と相手の口から言葉が溢れてくる。
10首目、右から書いても左から書いても同じ秋になる不思議。

2019年7月23日、短歌研究社、1700円。

posted by 松村正直 at 07:43| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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