2018年01月08日

鈴木貞美著 『日本の文化ナショナリズム』



「民族主義」「国民主義」「国家主義」など、文脈によって様々に使い分けられているナショナリズム。明治以降の日本のナショナリズムの歴史を振り返りつつ、今後の進むべき道を考察する内容となっている。

一般に明治以降の日本の「近代化」=「西洋化」と考えられているが、著者はそれに異議を唱える。決して「西洋化」一辺倒だったわけではなく、それと反対に新たな「伝統」が生み出されたり、「アジア主義」への傾斜が起きたりしたと言うのである。

例えば、漢文が古文と並んで現在も「国語」の中に位置付けられている理由もそこにある。

幕末から明治初期にかけて、英学の隆盛にともない、一時期、漢学者が嘆くほど、「漢文」学習は廃れた。しかし、一八八〇年代には「漢文」学習が、日本古典の学習とともに、エリート層に復活する。(・・・)日本「漢詩」の専門家たちは、歴史上、明治期が質量ともに、その最高の時期だったといっている。

明治期に漢文学習が盛んであったという(意外な)事実は、はたして何を意味しているのか。

「西洋化」と「伝統」「アジア主義」の二つの方向に引き裂かれた日本のナショナリズムは、その後、アジア・太平洋戦争における敗戦という形でその矛盾を露呈することになる。けれども、そこで話は終ったわけではなく、現在もそうした状況は続いていると言って良いのだろう。

2005年12月9日、平凡社新書、860円。

posted by 松村正直 at 22:06| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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