2017年02月26日

「塔」2017年2月号(その1)

どのビルにも屋上があるということを暮れ残りたる屋上に知る
                        白水麻衣

夕暮れの屋上から町を眺めている様子だろう。地上はすっかり暗くなっているのに屋上にはまだうっすらと明るさが残っている。

鎌倉や耳朶に穴ある仏なれば耳朶の向かうに空の見えたり
                        永山凌平

鎌倉の大仏の耳には穴が開いていて、そこから空が覗くのだ。初句、与謝野晶子の「美男におはす」の歌を思い出させる。

ほんのりと擦れば香るとふ栞こすらず送る手紙に添へて
                        越智ひとみ

香りが薄れてしまわないように、慎重な手付きで封筒に入れているところだろう。相手への大事なプレゼントなのだ。

火にかざしジャム瓶の蓋ゆるめつつ少年という瓶をおもえり
                        中田明子

おそらく頑なな態度を見せることのある少年なのだろう。ジャムの瓶と違って、こうすれば簡単に開くというわけにはいかない。

ロキソニン湿布の裏に書かれたる富山の地名もういちど読む
                        松原あけみ

痛み止めとして一般的によく使われているロキソニン。こんなところにも「富山の薬売り」以来の伝統が生きているのか。

「雨る」を「ふる」と読めぬ我なりたそがれの雨は真直ぐにしらじら
と降る                     丸山順司

渡辺松男の歌集名を受けての歌だろう。「雨る」を「ふる」と読むことへの違和感と、そんな自分の生真面目さを少し疎ましく思う気持ちと。


posted by 松村正直 at 18:59| Comment(0) | 短歌誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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