2017年02月02日

「塔」2017年1月号(その2)

洞(うろ)みせて舟屋ゐならぶ伊根湾に遊覧船はターンをはじむ
                     竹下文子

「舟屋」は一階部分が海に面して船を入れられる造りになっている。その暗がりを「洞」と表現したのがうまい。湾の風景が見えてくる。

客のない料理店(レストラン)の窓はなたれて額縁の中に貴婦人
立てり                 朝日みさ

開店準備をしているところだろうか。壁に飾られた絵の中の貴婦人がまるで生きているかのような存在感を放っている。

片側に止まりて待てばすれ違ふ少女の腰の熊鈴の音
                     穂積みづほ

山道を歩いているところだろう。道幅が狭くて、どちらかが止まらないとすれ違えないのだ。「熊鈴の音」だけがあたりに響いている。

アメンボが一匹二匹三匹とどんどん増えて雨粒となる
                     村ア 京

水面にできた波紋をアメンボに喩えている歌。最初はアメンボが動いているかと思ったら実は雨だったという感じかもしれない。

頼ることの苦手な母より電話ありいつかくる日が今きたと知る
                     八木佐織

もう自分一人ではどうしようもなくなって、母が助けを求めてきたのだ。覚悟していた事態がいよいよ現実になったという緊迫感がよく表れている。

posted by 松村正直 at 08:59| Comment(0) | 短歌誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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