2017年02月01日

「塔」2017年1月号(その1)

兄姉を持たざるわれが妹にその味をきく法事の席に
                 大橋智恵子

作者は長女なのだろう。年上のきょうだいがいるというのはどんな気分なのか、妹に聞いてみたのである。「味」という言葉の選びがいい。

シャッターを上げた幅だけ陽のさして一生(ひとよ)をおえし
金魚を映す           中村佳世

陽の光が死んだ金魚の姿を浮かび上がらせている。「シャッターを上げた幅だけ」という描写が巧みで、場面が見えてくる。

おとろえる猫に添いつつ短篇をいくつも読んで夏が過ぎゆく
                 桶田夕美

年老いた猫がいるので、なかなか外出もできないのだ。長篇に没頭する気分にもなれず「短篇」を読んでいるところに実感がある。

春光は明朝体と思うとき文字で溢れる僕たちの庭
                 千種創一

春の明るく鮮やかな光を「明朝体」のようだと感じたのだろう。二人の庭に無数の明朝体の文字が躍っている。

優秀なデジタルカメラは外壁に描かれし啄木のかほ認識す
                 逢坂みずき

文学館などを訪れた場面だろう。カメラの顔認識機能が、壁に描かれた顔にピントを合わせたのだ。「優秀な」にユーモアが感じられる。

posted by 松村正直 at 18:12| Comment(0) | 短歌誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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