2016年09月22日

「塔」2016年9月号

勉強会、はた宴会と騒ぎいしかの日のボンジョルノ難波はいずこ
                   小川和恵

イタリアンレストランだろうか。若かった頃によく仲間たちと利用していた店が、今では姿を消している。残っているのは思い出だけ。

やわらかきところを鍬の刃にさぐりひとふりふたふり竹を倒しぬ
                   吉川敬子

「さぐり」がいい。鍬を持つ手に伝わってくる感覚がよく表れている。竹を倒すにも力任せではだめで、コツのようなものがあるのだろう。

かあさんはやさしいねえと育親書でも読んだみたいに眠る間
際を                 宇梶晶子

褒めて育てる方法が書いてある育児書のように、親にいたわりの言葉を掛けてくれる子ども。やさしくない自分に気付いているだけに胸が痛むのだ。

通勤の橋わたるとき海へ吹く風はパルプの匂いをはこぶ
                   小林貴文

橋の上はよく風が通る。上流の方から匂いが流れてくるのだろう。朝の通勤で仕事へと向いていた意識が、その瞬間だけ少し緩むのだ。

ちょる、ちょると耳をくすぐる方言が飛びかうテーブル揺りかご
のよう                大森千里

故郷に帰った場面だろう。「ちょる、ちょると」がおもしろい。「〜しちょる」という語尾が心地よく響いて、懐かしさと安心感に包まれている。

posted by 松村正直 at 21:33| Comment(0) | 短歌誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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