2016年09月07日

「塔」2016年8月号のつづき

どこからを遠いというのか砂しろき丘に駱駝が目を伏せて立つ
                   福西直美

「遠い」は距離の遠さとも読めるし、時間的な遠さや関係の遠さとも読める。「目を伏せて」がいい。

声もたぬひとりとなりて森に入る湿つた落葉のあつき堆積
                   山尾春美

上句がいい。森に立つ木々は声を持たない。その中に人間である作者も入っていく。森の中では言葉はいらないのだ。

ささやかなやくそくひとつ果たすごと木の芽をぱん、と叩きて
祖母は               小田桐夕

香りを出すために木の芽を叩く。小さなことだけれども大事な手順だ。「ぱん」の後の読点がよく効いている。

湖西線新快速で敦賀まで湖(うみ)を右手に本を読み継ぐ
                   児嶋きよみ

湖西線はその名の通り琵琶湖の西岸を走る路線。車窓に広がる湖の明るさを感じつつ、本を読み続けているのだ。

均一にスポットライトを浴びている生えてる時より緑のサラダ
                   黒川しゆう

商品として店に並んだサラダ。畑に生えていた時よりも鮮やかな緑色をしている。きれい過ぎて少し不気味でもある。


posted by 松村正直 at 07:45| Comment(0) | 短歌誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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