2016年09月06日

「塔」2016年8月号

目玉焼きのあかるい丘が運ばれてきたかなしむにはほど遠い朝
                澤村斉美

目玉焼きを「あかるい丘」と捉えたのがいい。黄身の部分のふくらみが希望を感じさせる。

終末の迎へ方をばたれに聞かむあぢさゐの花芽ふくらみて来ぬ
                山下れいこ

「終末の迎へ方」を知っている人は誰もいない。自分一人で向き合わなくてはならないのだ。8月19日に亡くなった作者の歌。

速報を見つつ娘に電話すれば「また揺れてる」と直ぐに切られぬ
                伊東 文

娘の身を案じて電話する作者と、それどころではない娘のぶっきらぼうな対応のずれ。親子の関係がよく見えてくる。

少しだけミルクを足していくように五月の午後のかるいお喋り
                塚本理加

上句の比喩がうまい。コーヒーにミルクを入れるような軽やかさ。下句の韻律も軽快だ。

ほめられることに慣れない ピスタチオつまんだ指に塩きらきらと
                安田 茜

初二句と三句以下の取り合わせが良い。指先に付いた塩の輝きとかすかな違和感と。

posted by 松村正直 at 21:00| Comment(0) | 短歌誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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